除夜の鐘
「除夜の鐘」
百八つ
煩悩が消されていく
紅白歌合戦も終わり
神社に参る集団を
温かい部屋の中から眺めている
アナウンサーが
今年も終わりますと
粛々と1年を振り返る
そんな時だった
百八つの鐘が鳴り終わる頃
混み合う参拝者の中の人影がひとつ
消えた気がした
画面に顔を近づける
確かに空いた隙間はすぐに
後ろからの人々に埋められてしまう
気のせいか
気を取り直して
「もう寝ようか」とお父さんを
振り返る
するとそこに
うたた寝していたはずの
お父さんは
いなくなっていた
*フィクションです。