08 引きこもり達は宅配を受け取りたい
いつも通り、俺が香織の部屋で一緒にゲームをしていると...
ピーンポーン
急にインターフォンが鳴った。
窓から外をのぞき込んでみると、宅配のトラックが止まっている。
「誰が来たか分かる?」
「ああ、ただの宅配みたいだぞ。」
「へぇ~...あ!それ私のかも!」
「何か頼んでたのか?」
「うん!ゲームのソフト!通販で安くなってたから買ったんだ~」
「ま~た、何かマニアックなのかったのか?」
前回のは"明智光秀の野望"だったっけか?
期限三日で全国制覇しろっていう無理ゲーだった...
「前回のは失敗だったけど、今度のは絶対大丈夫だもん!」
「ほんとかよ~」
ピーンポーン
「また鳴ったぞ?」
「あれ?おかしいな。いつもならお母さんが出てくれるのに。」
「そういえば、さっき買い物に行ってたな。夕食の食材でも買いに行ってるんだろ?」
「妹も学校でいないし、それじゃあ誰が私の荷物を取ってくれるのよ!」
「そのくらい、自分で行ったらどうだ?」
「無理!」
だろうな、香織は極度の人見知りだ。
知らない人の前に立つと、委縮してしまう。
となると、俺が取りに行かなきゃ行けないのか。
「りょうた~、お願い~!」
おいおい、こんなことで涙目になるなよ。
「しょうがねぇな~」
と、言いつつも、俺は妙にやる気を出していた。
だって!香織の涙目で上目遣いだぞ!めっちゃ可愛いじゃねぇか!
こんなもんされたら、なんだってできる気がする!
興奮気味の心を落ち着かせつつ、俺は玄関へ向かう。
「は~い」
「こんにちは。お荷物をお持ちいたしました。」
そこには、宅配の箱を持った男性が立っていた。
「ありがとうございます。」
「すみません、ここに受領のハンコをもらってもいいでしょうか。」
「あ、はい。」
ハンコか...
流石に香織ん家のハンコの場所なんて俺にはわからないから、香織に聞くしかないかな?
「お~い、香織!ハンコってどこだ?」
少しすると、ピコッと俺のスマホが鳴った。
どうやら、香織が俺に向けてメッセージを送ったらしい。
[靴箱の隣にある棚の一番上にあるよ~!]
棚の一番上か...お?あった、あった。
「はい、これでいいですでか?」
「どうもありがとうございます。こちら、荷物となりますね。」
「あぁ、ありがとうございます。」
そういって、男性は荷物を俺に渡すと、次の家へと向かった。
それにしても、ゲームを買ったにしては大きな箱だな~
重さ的には一本くらいしか入ってないはずなのに...
そんなことを考えつつも、俺は香織のもとへ荷物を持っていった。
「あ!良太、ありがとう!」
「お、おう。」
いい笑顔だな~
おっふと言わなかった俺をほめてほしい!
...そういえば、なんであの漫画ではおっふっていうんだろうな~
「あ~!良太!何、家のハンコ持ってきてるの!」
あ!ハンコをもとの場所において来るの忘れてた...
「いや、これは忘れてただけだぞ。」
「ほんとに~?」
「当たり前だろ。」
「そんなこと言って、勝手に書類にサインなんてしようと思ってたんじゃないの~?」
「そんなことするわけないだろ!」
何の書類にサインするんだよ!婚姻届けか?
書けっていう振りか?
「さっさと返してくる!」
そういって、俺は少々もんもんとした気持ちで、部屋を飛び出していったのだった...
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。