03 引きこもりは徹夜がしたい
朝9時、俺はいつも通りに幼馴染の部屋へ向かう。
コンコン...ガラガラ
「よっ、おはよう。」
「あ...良太...おはよう~」
そこには、なんだかけだるそうにしている幼馴染の姿があった。
いつもは自分の机の方にいるはずが、今日は俺がいつも使っている中央の小さなテーブルの隣に座っている。
「どうした?風邪か?」
「あ~ちょっと...イベント周回してたら~、いつのまにか徹夜してたからじゃな~い。」
と、うとうとした様子で香織が言ってきた。
また徹夜したのか...
「ほら、そんなに眠いなら、さっさと寝たらどうだ?」
「え~...でも...お腹すいてるし~」
朝ごはんをまだ食ってなかったのか...
だが、言葉がたどたどしくなっている。
もうすぐ寝落ちしそうだな。
「ご飯...食べたい...」
はぁ~
「分かった、ちょっと待ってろ。」
そういって、俺は香織の部屋の扉を開ける。
すると、そこには香織のものと思われる朝ごはんが置いてあった。
香織が引きこもりになってから、香織は家族の誰とも会おうとはしなかった。
毎食、香織のお母さんが部屋の前まで持ってきて、置いていってくれる。
その朝ごはんを、俺は香織がいる部屋の中央にあるテーブルへもっていく。
「ほら、持ってきてやったぞ~」
「あり...がとう...」
そんなに眠たいなら、寝ればいいのに...
香織が朝ごはんを食べようとするが、目が9割ほど閉じているので、全然食べられていない。
しょうがねぇな~
「ほら、口を開けろよ~」
俺は幼馴染にあーんをする。
とはいっても、全然ドキドキしないな。
あーんシチュは、もっと両方がドキドキするもんだと思ってたんだが...
なんていうか、介護をしている気分だ...
ー15分後ー
ふぅ、何とか食べさせ終わった。
後半はほとんど無理やり口に突っ込む感じだったが、何とかなった。
「ほら、食べ終わったから、さっさとベッドへ行けー」
「...うん...」
そういって、香織はゆっくりとした動作でベッドへ入っていった。
「...良太。」
「ん?」
「ありがと...おやす...」
「ああ、お休み。」
ベッドに入った瞬間にすぐ寝てしまった。
なんでそんな無理やりにでも起きようとしていたのやら。
とりあえず、香織が食べ終わった朝ごはんを台所にでも持っていくか。
俺は香織の部屋をでて、一階へと降りて行った。
「...あら、良太君。」
一階には香織のお母さん、春香さんが掃除をしていた。
「おはようございます。」
「良太君が降りてくるのも珍しいわね?」
「香織の奴が徹夜したから、無理やり朝ごはんを食わせて寝させたんですよ。」
「いつも、ありがとうね~」
「いえ、このくらい、どうってことないですよ。」
「それでも、香織のそばにいてくれて本当にありがとう。私には、どうすることもできなかったから...」
「そんなことは...」
「良太君がいてくれて、本当によかったわ。これからも、あの子のことを頼んでもいいかしら?」
「ええ、どんなことがあっても、絶対に離れたりはしませんよ。」
「それならよかったわ。」
そんな会話をしながら、俺は台所に食器類を置き、香織の部屋へ戻る。
何で戻るかって?そりゃ、俺の家は両親が働きに行ってるから、玄関が開いてないんだよ。
俺は香織を起こさないように、静かに窓から自分の部屋へ戻っていくのだった。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。