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目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。  作者: 桐山じゃろ
第四章

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21 ヨイチの進撃

***




 魔力が無限にあっても、体力がなければちゃんと運用できない。

 ところが体力の方も、ほぼ無限にありそうだった。


 というか、これまでの常識を覆して、いくら魔力を使っても全く疲れないのだ。


 早速、竜属性を使って異空間を探る。

 闇と邪属性は練習したけれど、竜属性は普通に使おうとしても威力が大きすぎて、使い所に困っていたのだ。


 今回は無限の魔力を気配察知魔法に変換することで、存分に活用できた。


 マグの異空間はなかなか見つからない。

 焦りが生まれはじめた時、ジスト達が転移魔法で目の前に現れた。


「よしっ、成功!」

 ジストがガッツポーズをし、アオミは心底ほっとしたように胸をなでおろし、ザクロは辺りを警戒するように見回している。

「成功って……ここへ直接転移魔法を?」

 僕が今いる影の世界は、この世界の裏側とも言うべき場所だ。

 入り口は「影」、つまり不安定なもので、内部空間も時空の流れが安定しない。

 エルドやマグが創り出している異空間が個室なら、影の世界は共通ロビーと言える。

 影の世界に入ってしまえば、僕を見つけるのは割りと簡単なことだが、外から僕の位置を特定するのは至難の業のはずだ。

 それなのに、外から直に転移魔法で飛んでくるとは。


「不安はあったが、急ぐのだろう? 手伝いにきた」

 そう言ってアオミが、僕が展開している気配察知魔法に魔法を重ねてきた。

 暗黒属性だ。


「あいつはこの属性への耐性が全く無いからな。やりやすいだろう」

「助かる」


 アオミの力を借りると、マグの異空間はあっさり見つかった。


 一足遅かった。

 ヒスイが背中から叩きつけられ、怪我をしたところを、ばっちり感知した。

 あいつはもう絶対許さないと決めた。


「ありがとう。あとは僕がやる。アオミは魔力を温存して結界の維持を頼む」

 怒りが押さえきれなくて、魔力が青い燐光となって溢れ出る。

「わ、わかった。無理するなよ」

「ヨイチ」

 ザクロに声をかけられて振り向くと、拳を僕に向けていた。グータッチするやつだ。

 応じると、ザクロは驚くべきことを語った。


(まぐろ)に似た生食できる魚を見つけた。屋敷に差し入れておく」

「マジで!? ありがとう!」

 ありがたいことに、この世界にも港町限定で魚の生食文化があった。

 前にヒスイ達が「お寿司が恋しい」って言ってたんだよね。

 実は鮪に似た魚は食べたことがある。但しツナマヨ状態だった。

 刺身で食べられるほどの鮮度は、港町ならではだ。

 鮪ならド定番だし、皆喜ぶだろうな。


「じゃあ、行ってくる」

「気をつけてな」

 皆に見送られて、マグの異空間の近くへ急いだ。




***




「前にアオミが言ってたこと、よぉーくわかったよ」

「だろう?」

「何あの魔力。個人で持っていい量じゃないだろ」

「全くだ」


 ヨイチが去った後、アオミとジストがぼそぼそと話し込んでいる。


「本当に、怒らせたら物理的にヤバいね。ってかザクロはよくあの状態のヨイチとグータッチなんて出来たよな」

 ヨイチから感じた圧力は、おれがジストの家に一人でいる時に感じたあいつ(・・・)とは比べ物にならないほど、強烈だった。

 だがそれだけだ。ヨイチはヨイチだ。

 決戦に赴こうとする者への鼓舞は当然だ。


「怖くなかった?」

「いいや全く。……とは言えないな。以前は恐ろしかった」

「以前って、スタグハッシュにいた時でしょ?」

「ああ」

「そういう意味ならボクだって今はもう怖くはないけどさ」

 ジストが口を尖らせる。

 言葉が足りなかったか。

「ヨイチは怒りを向ける方向を間違えない。それを知っているから、もう怖いことなどない」

「なるほど、的確な表現だな」

「……そっか、そうだね」

 アオミが頷き、ジストも納得したようだ。



 影の世界を脱出し、ジストの家へ帰った。

 ヨイチは一人で十分であろうし、何ならおれたちは邪魔になる。

 他にするべきことも見当たらないので、一旦休もうということになった。


「いやいや、やっぱりあの魔力量おかしいよ。アオミ、[鑑定]しなかった?」

「一応やってはみたが、弾かれた。レベル差がありすぎると見えないらしい」

「レベル差どんだけ開いたんだよ……」

 納得したと見せかけたジストが、もう一度騒ぐ。

 しかし今度はヨイチが恐ろしいという話ではなく、魔力量について「おかしい」と言っている。


 おれも多少は魔力を操るようになったが、属性は得ていない。魔法が使えない分、相手の魔力量を感じ取る能力は二人に劣る。


「そんなに凄いのか、ヨイチは」

「凄いなんてもんじゃないんだよ。僕とアオミを足して百倍とか、単純な計算ができないくらい」

 ジストは両手を広げて、その巨大さを表現した。

「わかったから、一先ず休まないか。流石に限界だ」

 アオミは言い終わった後、大きな欠伸をした。徹夜の後、仮眠はとったが、足りていない。アオミは特に、結界を維持しているから疲れもたまるだろう。

「今度はボクが起きてるよ。魔力全然使ってないんだ。ザクロも寝て」

「飯の支度はどうする」

「……スミマセン、ソレダケ、オネガイシマス」


 台所で、食べる前に温めるだけで済むものを用意してから、久しぶりに床についた。




***




「意外と脆いな」


 マグの異空間は家の目の前にあった。

 ここだろうなとは思っていたけど、実際に察知しないと存在を確認できない。


 外の世界を傷つけたくないから、できれば異空間内で事をすべて収めたい。

 僕が空間を作ってもいいけど、やったことがないから加減がわからない。

 異空間といえど、現実世界に影響を及ぼさないとは限らないのだ。


「良いのではないですか? 主様は大事なものを大事にする方です。そんな御方の創るものが、余計な干渉をするとは考えられません」

 モモはいつも僕を持ち上げ過ぎでは? と思うほど僕を信頼してくれる。

 それを差し引いても、僕は僕が傷つけたくないと願う場所を傷つけるとは、思えなかった。

「ヒキュン」

 ヒイロも同意のようだ。

 聖獣たちからお墨付きが出たから、最終手段にしても大丈夫かな。


「でもまあ、あいつの空間内で済んだらそれが一番だからね。まずは二人を送るよ。準備はいい?」

「ヒキュン!」

「いつでも」



 異空間を壊さないよう細心の注意を払い、ようやく聖獣たちを送り込めた。

 ローズが地面に叩きつけられる直前、本当にギリギリだった。

 既に、それぞれツキコとローズを防護結界で守ってくれている。

 僕は先にヒスイの元へ結界魔法だけを送った。誰も気づかないほど弱いものしか送れない。もどかしい。


 先に入った聖獣達は、いい具合にマグを煽ってくれている。ていうか、僕もそれに混ざりたい。


 結局、どう頑張っても僕自身が入ったらマグの異空間はぶっ壊れる、と結論した。


 聖獣達に退避を命じて、異空間を軽く小突く。

 異空間を覆った膜は砂のように崩れ去った。

 後に残ったのは、聖獣達と、結界内に保護されたツキコとローズ。

 僕の結界に守られているヒスイは、僕自身が抱きかかえた。



「遅くなってごめん」

 腕の中のヒスイに治癒魔法をかける。怪我は治っていたけど、体力を消耗していた。


「貴様、それ(・・)は、一体……」

 マグの声が聞こえる。多分、僕のステータスを覗き見したのだろう。今は無視だ。

「ヒイロ、モモ。ヒスイを頼む」

 ヒイロがスッとやってくる。ツキコの隣にヒスイを乗せた。


 皆に背を向けて、魔力を込めた言葉を発する。


「出てこい」


 未だに姿を見せないマグを、無理やり引きずり出した。

 みっともなく地面にぐしゃっと落ちたところを、ヒスイ達に曝してやる。


「糞、人間の分際でがっ!?」

 まだ口の減らないマグに苛立って、全力で魔力の圧を押し付けてやった。



「糞はどっちだよ」


 少し感情的になっただけで、周囲に影響が出てしまった。

 辺りの地面が抉れて石や草が弾け飛ぶ。木も何本か折れそうだ。

 聖獣ふたりがヒスイ達を守ってくれているが、僕としては周囲の環境も保全したい。


 仕方がない。

 結界魔法を張る要領で、影の世界に自分だけの空間を創り上げる。

「これでいいかな」

「はい、主様の異空間が完成しております」

 意思疎通でモモに確認をとった。

「じゃあ、ヒスイ達を頼む」


 異空間へは転移魔法で、マグだけを連れて行った。

 聖獣達にも来て欲しかったけど、ヒスイ達を優先するように頼んである。


「!?」

 どこまでも白い異空間へ到着し、ワンテンポ遅れてマグが反応した。

「な、この私が」

 地面と仲良くしてたマグは勢いよく立ち上がり、背中の羽根でもって宙に舞おうとした。

「飛ぶなよ。面倒くさい」

 感情のままに言葉を吐くだけで魔力が乗ってしまうらしい。マグは再び地面と抱き合った。


「貴様、何故人の身で、魔神に成れたっ!?」

 やはりマグは僕のステータスを覗き見していた。



 種族が[魔人]になってすぐ、人じゃなくなったと思い込んだ僕にイネアルさんが言ってくれたことを思い出す。


――種族なんてステータスの神が区分けするためにつけた記号のようなものだ。


 あれからこれまでの間、或いは知り合いに了承を得てから、或いはこっそりと他人に[鑑定]を何度か使った。

 イネアルさんと同じ[器人]は何人か見かけ、他にも種族を持っている人は割りといた。

 アルマーシュさんとディオンさんは、武器や防具の作成に長けた[具人(ぐじん)]だったし、プラム食堂のおかみさんは人に安心感を与えられる[清人(せいじん)]という種族だった。


 しかし、種族名に「神」の字が付いた人は、まだ見たことがない。


 イネアルさんの言っていたことは、的を射ていた気がする。


 それなのに、人間にレベルアップを告げていたマグが種族に関して物申すということは……。

 マグより上に、何かが存在しているのか。


 まあ、今考えることじゃないな。


 地面でモゴモゴしているマグのすぐ横に立つ。

 僕の足に伸ばそうとしてきた手を、蹴りつけた。


「ぐっ! 貴様ぁ……!」

「黙れ」


 魔神になる前は手も足も出なかったマグが、今度は僕にいいようにされている。


「僕の大切な人たちと……恋人にやったことを、何万倍にもして返してやるからな」


 こいつには魔力の流れが存在しない。というか、存在そのものが魔力とは違った力の塊だ。

 魔力の流れを壊せなくとも、こいつを再起不能にできる方法はあるはずだ。


 きっちりやりかえそう。

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