表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。  作者: 桐山じゃろ
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/103

6 稀代の虚言者

「俺の名はディヘイエルド。長いからエルドとでも呼んでくれ。この空間は時空の流れを絶ってあるから、ここにどれだけいようとも元の世界の時間は動いておらぬし、お主らが年単位でここにいようとも年は取らぬ。あと何か聞きたいことはあるか? 安心できるまでいくらでも答えよう」

 エルドというやつは僕たちと同じ位置に降りてきて、ぺらぺら喋りだした。

 とりあえず今の説明で、この世界にいることで何かに影響はしない判断できた。

「どうやったらここを出られる?」

「話が終わったら速やかに解放しよう。まあ、上位魔人のお主なれば、自力で出られるだろうがな」

「魔力が全く使えないけど?」

「それでも、だ。魔眼とは魔力を視て操るだけの力ではないよ」

 言われて、少し集中してみると魔眼が発動した。魔力は動かせないし視えないのに、自分で自分の瞳の色が理解できた。

「本当だ……。どうして?」

「その話も必要なので、これからする」

「僕がこの世界から無理矢理脱出したら?」

「話を聞いてくれるまで呼び戻す。どうしても嫌だというなら、諦める。だが、聞いておいたほうが良いぞ」

 僕は腕を組んで考えた。

 何の話をするのか見当もつかないし、一旦無理やりここへ連れてきた癖に、こちらの意思を汲む姿勢を見せている。

 なんとなく、嘘をついているようには思えなかった。

「ヒスイは今のうちに聞きたいことは?」

 背後のヒスイに水を向けてみた。

「どんな話で、どうして私達なのか、先に触りを教えてもらえないかしら」

 僕に聞かれる前から答えを用意していた。

 向き直って、エルドに告げる。

「それもそうだな。こういうことだ」


 エルドは一泊置いて、一息に話した。


「預言者は嘘をついた。知っているのは、最初に異世界から召喚させられた我々のみだ。魔王はこの世界の瘴気から生まれたのではない。異世界から来た人間が、多くの魔物をその身に取り込んだ存在だ」


 言われた言葉の意味を考えている間に、ヒスイが質問を返した。

「それなら、魔王が再臨するのも嘘よね? 何のために勇者や聖女を喚ばせているの?」

「己が撒いた種を、再び余所者に押し付けるためだ」

「つまり、自分で一度喚んでおいて、そいつが魔王になったから、尻拭いのために別の人に喚ばせて……歯止めが効かなくなったのが今の状況ってことか?」

「大体そうだ。飲み込みが早いな」

 エルドは一瞬、にやりと口元を歪ませたが、すぐに真面目な顔に戻った。

「詳しい話を聞く準備はもういいか? まあ、今語ったことがほぼ全てだがな」

 僕はヒスイと顔を見合わせてからエルドに向き直り、同時に頷いた。



***



 預言者は予知能力者などではなく、マッドサイエンティストならぬ狂魔道士だった。

 自身の才能と貴族の出自を利用し、好きな研究に好きなだけ没頭した結果、異世界から人間を召喚する術を編み出した。

 その頃には、彼女の研究のお陰で世界の文明は進み、貴族は元より平民までも生活は楽になった。

 周囲は「召喚」を「誘拐行為」と認識できても、止められるものは誰もいなかった。


 世界を跨いだ人間は、元の世界と今の世界の差を埋めるために、自身の防衛本能から強大な力を発現させる。

 預言者はこのことに気がつくと、狂喜乱舞した。


 最初に喚んだ一人目を実験動物のように扱い、悪逆非道な人体実験を繰り返した結果、廃人にした。

 使えなくなったと見るや、すぐさま二度目の召喚を行った。

 召喚陣は改良が加えられた結果、次は七人も喚び出すことに成功した。

 彼らも、最初の一人と似たような目に遭った。



「ヨイチよ。怒りは分かるが、今は話に集中してくれ」

「……ああ、すまん」

 預言者のあまりの行動に、思わず力が入っていた。

 空間に罅が入っている。

 魔眼でそこを撫でるように見ることで、罅を修復することができた。

 エルドが表情を動かした。驚いているようだ。

「これは、想像以上だな。やはり、お主らにしか出来ぬことがある」

「何だ?」

「とりあえず、話が済んでからだ」

「わかった」


「七人のうち一人が魔物との相性を調べるとかいう実験で、魔物に近づけた。預言者が何をしたかったのかは、俺には未だに理解できん。そいつは近づいた魔物を……食ったんだ」

「生で?」

 ヒスイのツッコミに、その場が和む。

「問題はそこじゃなくない?」

「大事よ。生の魔物肉って豚肉なんか目じゃないほど危ないのに」

「俺の言い方が拙かったな。食欲を満たすという意味で食べたわけじゃない。魔物の力を取り込んだのだ」

「はあ……」

 ヒスイは腑に落ちないといった風だが、今はこのまま続きを聞くことにしてくれたようだ。

「で、預言者はそいつに次々と魔物を食わせ……取り込ませた。そいつは魔物の力の分よりも、どんどん強くなった」




 そして強くなりすぎた結果、ある日突然人としての自我を失い、暴走した。

 研究施設はおろか、辺り一帯が地平線まで更地になるほどの破壊をしたが、預言者は自分だけ生き延びた。


 他国に逃げ、顔を変えて『預言者』を名乗り、魔王討伐には異世界から召喚した人間が必要だと説いて回った。




「あとは今伝わっている話のとおりだ。スタグハッシュとアマダンが当たりを引いた。魔王は勇者と聖女の手によって倒された。しかし、魔王誕生時の破壊で生き延びたのは、預言者だけではなかった」


 察しの悪い僕にも、それが誰か見当がついた。

「エルド達、魔王にならなかった六人?」

「そうだ。俺たちも人体実験の果てに不老長寿と魔王には劣るが力を得た。中には身体を失っても活動できるやつもいた」

「召喚された人間達を操ったり、城で人間に影響を与えていた連中か」

「ああ」

「エルドも、僕を操るつもりで?」

 僕がただ、疑問に思っただけだから口に乗せた言葉に、ヒスイが反応し、僕の前に出た。

「ヨイチくんに何するつもり?」

「ヒスイ、大丈夫だよ。エルドは僕に何も出来ない」

「その通りだ。操るつもりは毛頭ない。そもそも手出しできぬ。あの預言者に何もされずに、ここまで強くなれた人間はいない」

「ほらね。ありがとう、ヒスイ」

 庇おうとしてくれたことにお礼を言うと、ヒスイは「それなら、いいのだけど……」と小声で言いながら、僕の後ろに戻った。


「フフ、聖女殿も素晴らしいな」

「あの、それなんですけど……」

「アマダンで聖女ではないと判定されたことだな? あの石は間違っていないが、石の使い方を間違えたのだ」

「使い方? 手を置くだけじゃ駄目なの?」

「いいや、手を置くことは合っている。間違っていたのは……聖女を一人と決めつけたことだ」

 頭の上に疑問符を浮かべる僕達に、エルドが続けた。


「まず聖女の定義から説明しようか。勇者の助けとなる存在とは聞いているな? 具体的には、魔王討伐に必要な道具や装備を整え、献身で勇者の力を高める存在だ。献身とはつまり、食事だ。最初の聖女は一人で全てをこなしたが」

「ああ、そういう」

「納得したわ」

 だからローズのポーションが僕だけにものすごい効き目を叩き出したり、ツキコの作った武器がおかしくなったりしたのか。

 そして、食事はヒスイが作ってくれたものを、一日一食以上は必ず食べている。いつも美味しいとは思っていだけど、それ以上の意味があったのだ。

「今代の聖女は三人。つまり、三人一緒に石に手を置けば光ったはずだ」

 アマダン城の石はリートグルクが保管している。

 三人が「自分の目で確認したい」とか言ったら、王様に頼んでみようかな。


 いや、待てよ。


「聖女はわかったけど、勇者が僕っていうのは合ってるの?」

 エルドは自信たっぷりに首を縦に振った。


「勇者とは、聖女に愛される存在のことだ」



 数秒置いて、僕とヒスイが同時に顔を耳まで赤くする。そっとヒスイを伺うと、ヒスイも僕を見ようとしていた。視線が合って、同時に目をそらした。

「なんだ、初々しいな。少し外そうか」

「いや、話を!」

「話を続けてください!」


「俗な言い方をすれば、ヒスイが筆頭聖女だな。お互いに想い合っている」

 話を続けてとお願いしたのはこちらだ。自業自得なのだけど、追い打ちをかけられている。

「他の二人もヨイチに好意を抱いている。今は別の者を愛し始めたようだが、ヨイチへの好意は変わっていない。聖女としての資格は十分にある」

 ヒスイは完全に顔を覆ってしまった。

「初代勇者と聖女が一人ずつなのは、その二人の間にしか恋慕が発生しなかったせいであろうな。ヨイチは三人から同時に好意を持たれ、筆頭聖女からは更に愛されている。なかなかできることじゃないぞ。二人を同時にここへ呼べたのも、その愛ゆえだ」

「ごめんなさいわかりましたからそのくらいで勘弁してください」

 先に音を上げたのは僕だった。

「そうか、理解したか。では、俺の頼みを一つ聞いてくれないか」


 突然の羞恥タイムから一転して、真面目な話に戻った。

 まだ顔は熱いが、仕方ない。



「その力で、アジャイルを滅してくれ」




***




 見つかった。

 影の中にいる間に誰かに見つかることなんて初めてだ。

 とんでもない光量でカーテンの影に追い込まれた時は、流石に駄目かと思った。

 助けてくれたのは、ババアだ。

「手強い男よのう。女はもう護りに守られておる」

「他に何か手はないのか?」

「お主がもうすこし上手くやれば済んだのじゃ」

「八つ当たりか、ババア」

「うるさい!」

 キイキイわめくババアよりも、オレは横伏が気に食わない。


 女の影にいた三日間、ずっとあいつを観察していた。

 他にも女を侍らせてやがった。

 ハーレムじゃんか。そういうポジションって、勇者のオレがやるやつじゃねぇの?

「あいつは絶対許さん。どんな手でも使う。何か考えろ」

 ババアに命令すると、ババアは喚くのをやめて押し黙った。

「ふん、多少はマシなことを言うようになったの。では……」


 ババアの提案を聞くために、オレは何人かを殺し、建物を手に入れ、金を盗んだ。

 たったこれだけの準備で、横伏を捻じ伏せられるなら楽なもんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ