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目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。  作者: 桐山じゃろ
第三章

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16 仇討ちの先に

 レッドキャップは冒険者カードの情報によると、


「危険度S。人型の魔物。単体で現れることは稀で、常に群れを形成している。残忍な性質をしており、他者の血で染まった衣服(帽子、ローブ)を身に着けている。霊体であるため、光魔法が有効」


 とある。


「光魔法効くって書いてあるよ?」

「ほかの属性よりマシってだけで、効きが悪かった」

 ファウラと森を進みながら、僕はレッドキャップについて話を聞いた。

 ファウラは以前このクエストを請けた時、仲間を喪ったのだ。

 敵討ちしたいがランクA+の自分(ファウラ)でも敵わぬ相手だ。

 せめて他の犠牲者を出さぬよう、冒険者ギルドで僕にやったように、このクエストを請けようとする人がいたら、一部嘘をついてまで止めていた。

 アンドリューが諦めたというのは嘘だ。彼はそもそもこのクエストを請けようとしていない。

 命じられれば仕事をするアンドリューだけど、自分から高危険度のクエストを請けることは滅多になかったりする。アンドリューなりのポリシーがあるらしい。

 誰にも達成できないようになっている、というのも半分嘘で、これに関しては過去に達成した人がいないから嘘と断言できない。


 森に入り、徒歩で三十分ほど進んだ。

 人間の悪意や嘘を見抜くことのできるヒイロが「この人は信用できる」と断言したので、ファウラの前で力を隠さないことにした。

「この森は何度も来てるから、大体は頭に入ってるんだ」

 立ち止まって、ファウラも止める。

「は? ああ、私もだが」

「あと僕は剣より弓のほうが得意。このことは他の人には黙っておいてほしい」

「承知した」

 歩みを止められたときは訝しげにしていたファウラは、瞬時に真面目な顔つきなり、僕と約束してくれた。

「じゃあレッドキャップの近くまで転移魔法使う。準備はいい?」

「転移魔法? 一人で行くつもりか!?」

「パーティ組んだじゃない。ファウラも一緒だよ」

「しかし複数人を……」

「行くよー」

「っ!?」


 事前に魔物の気配を探り、群れから五十メートルほど離れた場所に転移成功した。


「こんな、あっさりと……」

「ファウラ、静かに」

 驚きで普通の音量で話そうとするファウラを制し、魔物の群れを注視する。

「……すまん。聞きたいことは後で聞く。それで、どうするつもりだ?」

「倒すよ。全滅させる」

「実際の光景を見ても、まだそう言えるのか」


 レッドキャップは冒険者カードで読んだとおりの風貌をしていた。それが、数百体。

 森のこのあたりはスタグハッシュの管轄だからとあまり通ったことはないが、ここまで大きな群れを見逃していたとは。


「ファウラはどうする? 仇討ち」

「……」

 ファウラはしばし目を閉じて考えた後、決意に満ちた表情になった。

「私がこの手で倒したい、といいたいところだが……ヨイチの邪魔になる」

 足手まといならはっきり言ってほしい、と伝えたいようだ。

 ランクA+のファウラは、レッドキャップが数体なら一人で勝てる。

 しかし数が多すぎる。ファウラは百だと言っていたのに、その数倍はいる。


 だけど、僕のことも舐めないで欲しい。いや舐めるも何も、戦闘の実力は見せていないのだから、仕方ないか。


「僕がフォローするから好きに暴れてもいいよ」

「どうしてそこまで自信満々なのだ……」

 ファウラに強化魔法、防御魔法、反射魔法等々、思いつく限りの補助魔法をかけた。

「おおお!?」

 ファウラ自身が光り輝くのを見て、ファウラが思わず声を上げた。

 レッドキャップ数体がこちらに気づいてしまった。

「はっ、す、すまん!」

「大丈夫。剣を」

 ファウラが抜いた剣にも、聖属性を付与した。

「聖属性。これも内緒でよろしく」

「……恩に着る、ヨイチ!」

 ファウラは剣を構えて、レッドキャップの群れに突進していった。


「おおおおおおお!!」

「ギャィイイイイィイイ!」


 暫くの間、ファウラの雄叫びとレッドキャップの金切り声が森を支配した。

 僕はというと、ファウラのフォローに徹した。

 死角になる位置から武器を振りかざすレッドキャップは蔦で足止めし、魔法は詠唱前に口に土を詰めたり、魔力の流れそのものを断ち切った。ファウラの傷は逐一回復する。

 ファウラもアドレナリンが駄々洩れ状態になったのか、狂気じみた笑顔を浮かべてレッドキャップを屠るようになっていた。


 小一時間後、レッドキャップの数は残り数十体となった。

 僕はあえてファウラの体力は回復しなかった。

 ファウラは流石に肩で息をし始めた。補助魔法つきとはいえ、二百数十体を倒しきるとは、想像以上だ。

「ファウラ、気は済んだ?」

 背中を庇うように近づくと、ファウラは頷いた。

「ああ、十分だ。残りを任せてもいいか」

「うん」

 言われる前から、周囲には不可視の矢を展開していた。

 僕が弓で矢を射る動作をすると、矢は可視状態になり、残りのレッドキャップ全ての急所を射貫いた。


「……一人で全滅させられるというのは、本気だったのだな」

 ファウラが構えていた剣を下げて脱力した。



 夕暮れ近くになっても、僕たちはまだその場にいた。

 レッドキャップの死骸の回収に加え、ファウラが仲間を弔うためにと、レッドキャップの住処を漁りだしたのだ。

「スレッグの遺体はレッドキャップに奪われてしまったからな。武具の破片でも残っていればいいのだが」

 仲間の死に様について、ファウラは多くを語らなかった。僕も突っ込んで聞くことはしなかった。

「むぅ、こいつら一体、どれだけの人間を……おや、これは」

 ファウラが何かを手にして、レッドキャップの死骸をマジックボックスに詰めていた僕を手招きした。


 薄く叩き延ばされた金の板に、親指大の翠色の宝石が嵌っている。

 ファウラはさらに同じ場所を漁り、似たような破片をいくつも取り出した。

「同じものかな。あ、ここつながる」

「まだある。これは……ここか」


 突然始まったパズルゲームは、この場にそぐわないものを完成させた。


「見たことがある」

「どこで?」

「スタグハッシュの、王の頭上だ」

 ライオンに似た四つ足の動物の紋章が刻まれた王冠が、悪臭漂うレッドキャップの巣の中で、不完全な姿を取り戻した。



「え……っと、どういうこと? こいつらが王冠だけ盗んだ?」

「そうではないだろう。あの噂は本当だったのか」

「噂って?」

 スタグハッシュとは積極的に関わりたくない。無理やり呼び出した僕が消えてもスルーするような人たちだ。どうなったって、知ったこっちゃない。

 僕が召喚されたとき、王様らしき人はいた。一言も口をきいていないし、謁見もしたことがない。

 あの王様の身に何かあったのだろうか。


「スタグハッシュの城は既に無人で、今いるのは城に王がいると見せかけるための偽物たちだと」

「偽物?」

「人間ではあるが、城に仕えていたやつらではない。どこからともなくやってきたのだそうだ。全て噂で、私もこれ以上詳しくは……すまん」

「謝ることないよ」

 申し訳なさそうに頭を下げるファウラに慌てて頭をあげてもらうよう頼んだ。


 そのあとファウラは無事に仲間の形見を拾うことができたので、転移魔法で城下町へ戻った。

「急ぐのならば仕方ない。だが必ず、改めて礼をしたい」

 冒険者ギルドのセルフ受付でクエスト終了の手続きを済ませると、ファウラから冒険者カードでの連絡先交換を求めらた。

「気にしなくてもいいのに。でも、またよろしく」

 ランクが近いから、パーティを組むこともあるだろう。連絡先の交換に応じた。




 急いでスタグハッシュの家に戻り、モモの家事を労ってからモルイの家へ飛んだ。

 さらに冒険者ギルドへと足を運ぶ。普通の家や商店は夕食の時間を過ぎているが、冒険者ギルドは二十四時間営業だ。統括に緊急の用件を伝えると、すぐに来てくれた。


「ヨイチがこのように呼び出すとは珍しい。何があった?」

 顔に焦りが滲んでいたらしい。統括は前置きもほどほどに、話を聞く体勢になってくれた。

「スタグハッシュに王がいないという噂は、聞いていますか」

「……どこでそれを?」

「城下町で臨時パーティを組んだ冒険者から。それと、その人とレッドキャップの討伐クエストを請けたのですが、巣にこれが」

 継ぎ接ぎの王冠は、僕が持ち帰ることをファウラが認めてくれた。

「! スタグハッシュの王冠に相違ない。すまん、ヨイチ。噂は知っていたが、飽くまで噂だったのでな。これが、レッドキャップの巣にあったのだな?」

「はい」

「人をやって詳細に調べさせよう。それが済み次第、リートグルクと共にスタグハッシュへ乗り込む」

 統括は今までで一番真剣な表情になった。


「かの城の真実を白日の下に晒す時が来たのだ」




***




 俺こと土之井青海と不東は、揃ってレベル50を超えた。

 俺が50、不東は55だ。

 不東は二日ほど前、椿木に喧嘩を売って返り討ちに遭い、再び部屋に引きこもっている。

 椿木は亜院と二人で魔物を倒し、それぞれレベルを上げていた。

 似たような努力を似たような歩みで続ける以上、不東が椿木に敵う日は来ない。


 こんな単純なこともわからないような馬鹿にはこれ以上付き合いきれない。


 城の警備は以前通りガバガバだ。今ならその理由がわかる。命令系統が死んでいるから、警備に手間や人員を割く余裕が無いのだ。

 笊警備を搔い潜るまでもなく、俺は玉座の間に忍び込んだ。

 不東は時折ここへ呼ばれていたが、いつも王ではなく神官から魔物討伐の命を下されていた。


 窓には重たそうなカーテンがかかって薄暗く、高価そうな絨毯や調度品、大事な玉座までもが埃まみれだ。


 王が常に玉座に座っているとは思わないが、この埃はおかしい。

 埃を浄化魔法でざっと消し去り、なんとなく腰を下ろしてみる。

 玉座は扉より上段に設えてあり、俺は上から部屋を見下ろす形になる。


 悪くない光景。少しだけ、そう思ってしまった。


「ならば、やろう」


 どこからともなく聞こえた声に、俺は頷いた。

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