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ひきこもりお坊っちゃま



 随分な豪邸だと思った。


 そりゃそうだ。わたしを2000Gで即決するような富豪だもんな。詩織のとこは領主の館だけあって豪華だったが、ここはまた別の華やかさがあった。

 とても広い屋敷で、とても静かだった。


 わたしを買ったおじさんは、屋敷につくなり、メイドらしき人に何かを話していなくなった。

 落札しておいてこのメイドに私を押し付けたわけだ。


 鎖は無くなったが、首につけられたチョーカーのせいで魔術が使えない。今のわたしはただのか弱い美少女。

 とりあえずエロイベントは起こりそうになくて安心した。

 

 童貞卒業より処女卒業が先なんていやだろ?


 

 メイドさんに連れられて私はメイド服に着替えさせられた。


 「私はここの屋敷のメイド長、レッケンです。

 今後、貴方が旦那様の御子息に相応しいメイドとなる様に教育させて頂きます」


 見かけは、ザ・ヒステリック!な感じ。ヒステリック起こすかは知らないが、神経質そうなおばさんだ。

 というか、私はメイドとして買われたのか?大金を叩いてまでやる事だろうか。


 「あおいと申します。よろしくお願いします」

 「あら、子供で、しかも奴隷市場から買われてきたと聞いていましたが…随分としっかりしていますね。よろしい。

 ですが、まだ振る舞い方がなっていませんね。

 手はこう、足は右を一歩引いて…」



 その日から一週間、見かけ通りの神経質な指導をもらった。





 「さあ、このくらいでいいでしょう。細かなところはまだ気になりますが、やはり元々気品をお持ちですね葵さん。その年にしては不思議な程に」

 「ありがどうございますメイド長」

 「さて、明日からは他のメイドがやっていた「ご子息のお付き」を引き継いで貰う訳ですが…」


 メイド長はすこし、間を置いて訪ねた。


 「聞かないのですね。ここは何処だの、家に帰せだのと…」

 「言えば解放してもらえるのですか?」

 「ふふ、いいえ。解放されませんとも。本当にあっさりとしていてよろしい。でも…」


 メイド長はぴんと、私のおでこをはじいた。


 「少々お口が生意気ですよ?」



 この一週間、メイド長の指導を受けていたが、教えるのは上手い。

 相手が何処を理解していないのかを理解し、何をどう伝えればいいかを知っている。

 

 是非、アイシアのメイド達にもご教授願いたいものだが、そもそもこのチョーカー付きでいつ帰れるというのか…。





 そして、私は御子息のお付きメイドとなった訳だが。


 御子息はいわゆる引篭だ。

 名はギルス・カーウィ。

 

 おつきメイドになったが、基本、御子息の部屋は入る事はできない。引きこもっているから。

 朝食、昼食、夜食を部屋前のテーブルに用事し、部屋前に出された衣類を洗濯し、洗った衣類を部屋前に用意する。

 お付きのメイド、とは名前だけで、食事も洗濯も普通のメイドと同じ内容だし、特別な事はない。まあめんどくさいが。


 なんて羨ましい生活してんだ。

 いや、ネット環境がないのによく引きこもってるな。部屋で何してるんだ?


 しばらくそうして働いていると、もちろん顔を合わせることもある。

 だが、私はそこで安易に声をかけたりしない。

 前世ニートの私にはそういうデリケートなところが理解できるのだ。



 …。


 そうして何もないまま一ヶ月が過ぎた。

 まじで何も起きなかった。


 そして、私自身退屈になってきた。

 

 そんな時に、丁度御子息がドアを開けて夕食をとっていた。



 私は突発的に、御子息の部屋に入り込んだ!

 ガシャン!!

 ぶつかる形になってしまった。


 「な…!ふ…ふ…!!!」


 御子息は顔を真っ赤にしておこっている。

 私も食事まで台無しにするつもりはなかった。

 だが、いい具合に御子息を床ドンする形となった。

 そして、私はこの世界での自分の顔面偏差値を知っている。


 「ご、ごめんなさいご主人様っ。どうしてもご主人様の部屋に入ってみたくてつい…」


 どうだ?あざといだろ?

 前世の「俺」なら許しちゃうね。


 そして、初めて入る御子息の部屋。

 私は唖然とした。


 ネットもないのに何してんだと思ってたが…。

 散らかった部屋の中に女性モノの下着がいくつか転がっていた。メイドのだろう。


 …ん?あれ私が履いてたやつじゃね?


 

 御子息は私の視線の先に気付き、顔を真っ青にした後、真っ赤にした。

 そして、強引に私を引き剥がした。

 まずい、このままでは部屋の外に出されてしまう!今出されたら一生部屋に入る機会を失う!


 「あー!これ私の下着ー!」


 わざと大声で言った。硬直する御子息。

 

 「もうっ!ご主人様がもってたんですかぁ?」

 「ちが!お前のもってくる服に紛れてたんだ!」


 私がそんなことする訳ないだろ。と、言ったらこいつは泣くと思う。


 「そうだったんですか?なくしちゃって探してたんですよ〜」


 そう言って、さも、気にしていません感を出しながら、わざとその場で履いてやった。


 そしてさらに「硬直」する「御子息」

 

 どんな心情で引きこもっているかは知らないが、どんな心情でもエッチには反応するのが男というモノだ。私は知っている。


 そして、さらに追い討ちをかける。


 「ご主人様、ご夕食がかかってしまいましたね?お風呂に入らないと…」

 「…別にいい。早く出て行け」

 「だめですっ!ご主人様がお風呂に入るまで出ていきませんよ?さあ、「一緒に」お風呂に入りましょう?」

 「!!!」


 そして、反射的にでてしまう様な否定もさせないように、背中に手を回して誘導する。


 「でも、部屋の外は…」

 「大丈夫ですよ?誰にも会わない様に誘導できますから」

 

 正直、夕食がかかったからとかじゃなくて臭い。風呂入ってない多分。

 正直まじで臭い。

 油とイカ臭い。

 部屋から風呂へ強制連行だ。


 

 一緒に入ると言った手前、入らないわけにもいかない。

 というか、一人にするとちゃんと入るか分からん。 


 脱衣室で一緒に脱ぐ、もちろんタオルを巻く。

 

 「ご主人様?こっち見ちゃ駄目ですからね?」

 「わ、分かってるよ…」


 よいではないか〜タイプではないな。

 こいつは典型的なムッツリスケベだ。しかもわかりやすい。

 前屈みになってる。


 「さあ、ご主人様。お背中流しますよ」

 「あ、ああ…」


 言われるがままに座る御子息。

 座っても内股で前屈み。もう無理だって。


 ここからエロゲーみたいな事をしてやってもいいが…まあ普通に洗おう。

 ただ念入りに洗う。

 油臭い頭。垢まみれの体。そしてイカ臭いちん…。

 ここどうやって洗えばいい?

 まあいいか。


 「おおぉおぉい!!そこは触るな!!」

 「ご主人様、こういう所ほど臭うんですよ?」

 「しらん!やめ…ひゃう!」


 触るとすぐに充血していく「御子息」

 手早く洗っていく。


 そして最後に全て洗い流した。


 よし、臭くなくなったな!


 「くう…」

 

 何か言いたげだな。因みに私はもう入った。というかこの屋敷のメンツはみんな入ってるのだ。御子息の夕飯は遅すぎる。


 綺麗になった御子息を部屋まで送り届けた。これ以上長居するのは良くないだろう。


 「ご主人様、これからは毎日お風呂に入りましょうね?」

 「入らん」


 ばたん、と締め出された。







 だが私は諦めない。退屈だから。


 次に会ったのは2日後の昼食を運んできた時だった。


 レッツゴージャスティス。

 今度は素早く昼食をおき、部屋にダイブ…


 だが駄目だった!ワンテンポ置いたことにより御子息とドアで鬩ぎ合う形となる!


 「ぐっ…!ご、ご主人様ぁ?お風呂のお時間です…よぉ??」

 「今は…昼時だ…風呂の…時間…ではないっ!」

 「いいじゃ…ないですか…!昨日は…入られてないんですから!」


 くそ…魔術が使えれば、力負けなんてしないんだが…。男と女じゃ…いや!


 ばーかーぢーかーらーーーッッ!!!


 少しの緩みも逃さない。

 開いた隙間に体を滑り込ませた。


 「ふふ、私の勝ちですねご主人様♪」

 「はぁ…はぁ…お前、なんていう馬鹿力だ…」

 「でも、確かにいう通り、今風呂場に行くとばったり屋敷の人に会いそうですね」

 「そうだな、風呂は今度な。帰れ」

 「ではお食事としましょう」

 「…はぁ?」


 私は手早く昼食をとった。


 「はい。あーん」

 「な!自分で食えるわ!」

 「あら、お気に召されませんでしたか?じゃあ…」

 

 デザートを口に乗せてみる。


 「あーうー」

 「何故そうなる!!食べる!自分で食べる!」


 結局自分で食べ始めた。

 時折、私が噛み解したものを差し上げましょうか?とか茶化したりしたが。2人、ベットに腰掛けて、御子息は黙々と食べている。


 部屋を見渡すと、結構散らかっている。

 前見た私の下着は回収したからないが、いや、見つけれない場所に隠したからかもしれないが。

 本や紙やらが乱雑に置いてある。

 タイミングを見計らって掃除しないとな。


  

 「お前、最近ここに来たばかりか?」

 「はい。数ヶ月前ここに来ました」

 「そうか。俺の部屋に無理やり入ってきたりめちゃくちゃだな」

 「毎日同じ事の繰り返しで退屈でしたので」

 「退屈…か。考えたこともなかった」


 嘘つけオ○ニーしてたくせに。


 「ご主人様もお暇でしょ?」

 「…」

 「私と遊びましょうよ」

 「お前はメイドの仕事をしろ」

 「私はご主人様のお付きですから?」

 「なるほど、都合よくサボりたいわけだな」


 そういう事だ。

 手が空いてると何かと仕事を押し付けられるからな。


 「いいだろう。だが、何をするつもりだ?言っておくが、俺はこの部屋から出ないぞ」

 「そうですね〜」


 部屋でできる事か。


 前世ならネトゲでも携帯でもゲーム機でも触りたい放題なんだが…。

 ねぇよなぁ。


 「じゃあ指を出してください。人差し指!」

 「ゆび?」

 「それで、一回ずつ交代で相手の手に触れます。触れられた方は触れてきた相手の手の指の本数分、出す指を増やしていきます」

 「じゃあ、こっちの手はもう一つ指を出すぞ」

 「はい、これを交互に繰り返して、手が5本全部出すとリタイア。両方落とされたら負けです」

 「なるほど、指の本数は力であり命という訳か。分かったぞ、やってみよう」


 小学の頃流行った遊びだが、名前はなんというのか…。


 「おい!何だそれは!ずるいぞ!」

 「相手に攻撃する代わりに両手の指の本数を好きな様に割り振る事も出来るわけです」

 「む、まだ説明の続きがあったのか…これで終わりか?まだ言ってないことはないだろうな」

 「ないです」


 そうしてその日はずっと指で遊んだのであった…。





——-御子息「ギルス・カーウィ」視点—-



 

 俺の部屋に物を運んでくるメイドが代わった。

 美しかった。銀髪の髪色に透き通る様な緑眼。年は俺と近そう。


 前のメイドは見つかると声を掛けてきたり、度々ドア越しに話しかけてきたりした。

 だが、こいつは何もしてこなかった。ただ淡々と仕事をこなすのだ。

 鬱陶しく話しかけてくるのも煩わしいが、全く関わってこないのだとそれも腹が立つ。

 

 部屋では寝るか食事か、考えることしか出来ない。俺は一日中新しいメイドのことを考えてはイライラしていた。

 ああいう容姿をしたやつは苦労を知らないのだ。俺の世話も最低限して、給与の事しか考えてないに違いない。


 そんな時、届けられた替えの服の中にメイドのものらしき下着(パンツ)が入っていた。

 このサイズ、この屋敷に子供のメイドはあいつしかいない。絶対にあいつの下着だ。

 

 くそ、俺をおちょくってるのか?何だこれは?くそ、くそ!

 

 もし間違って混ざっていたのなら、返す時に変態扱いされるに違いない。

 俺にこれを返す手段は無いのだ。

 

 あのメイドへの苛立ちが、これのせいで性的興奮に変わるのが分かった。

 それから俺は猿の様にモノをさすった。


 

 毎回、何も言わず淡々と物を届けては帰るメイドの後ろ姿をこっそり覗いたりした。

 歩きながら靡く銀髪は、廊下の窓から差し込む光に照らされて美しい。くそ、くそ!


 もはや、この下着だけでは足らない。

 後ろではなく前も見たい。

 あいつの胸はどれくらい生意気な大きさをしているのか。

 

 タイミングを見計らって夕食を取るフリをする。来た。

 このメイドはいつも、夕食と衣類を2度に分けて運んでくるのだ。


 く、見えん。衣類を前に抱えていて少し隠れている。

 だめだ、これ以上見たら怪しまれる。ここは一時離脱…。



 急に起こったことに理解ができなかった。

 飛び込んできたのだ。俺の元にあのメイドが。


 急な事で、とにかく追い出そうとしたが、部屋を見回したメイドに見つかってしまった。パンツが…。

 終わりだ。とにかくこの場は追い出さねば…。


 しかし、そのメイドは意にも介さずそのパンツを履いた。

 どういうことだ?

 パンツの上からパンツを履いたのか?

 今までずっとパンツを履いていなかったのか?

 いつも触っていた場所が間接的にあいつの秘部に…。


 そう思うといつの間にか自分のものが大きく主張し始めた。まずい。


 そんなところに更に、メイドは一緒に風呂に入れとまで言う。

 もう俺は正常な判断もできなかった。意味が分からなくなっていた。


 風呂場では体の隅々まで洗われてしまった。

 生意気だといつも思っていたものの手は、暖かい風呂場の中で心地よい冷たさだった。

最早とんでしまいそうだった。

 


 何を考えているか分からない。

 こんな俺にこんな事をして何がしたいんだ?分からない。怖い。


 だが、気持ちいい。また来てくれないだろうか。そう思ってしまう。


 そしてまた来た。

 申し訳程度に嫌がるフリをした。

 懸命にドアを開けたがるそれは、ひたすらに可愛いかった。何だこの生き物は。いつもはすました顔をしているのに、こんな事でこんな可愛い顔をするのだ。


 結局部屋に入れた。


 そして分かった。

 こいつはサボりたいだけなのだ。やっと合点がいった。

 それならばしょうがない。相手をしてやろうじゃないか。

 そうしてこのメイドが部屋に入る事を許す事にした。


 これからは好きなタイミングでサボらせてやろう。

 自分にそう言い聞かせて。

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