異世界サバイブ!
手ごろなサイズの枝を拾って石で先を研ぐ、簡易的な武器の出来上がりだ。俺は至って大真面目である。
森の中は緑豊かでちょっと見渡しただけでも食べれそうな実は見つかった。だが何が起きてもおかしくない。用心に越したことはない。棒切れでもあった方がマシだろう。
「なぁに?それ?」
詩織が不思議そうに私の武器を見て言った。
これを見て分からないのか…。説明するのも面倒なので詩織をくすぐってはぐらかした。
まずは水を探す。
小川があった。この場合もっと上流を目指すべきだろうか?
「…ぱはぁっ!…ごきゅごきゅ」
詩織は小川に駆け寄って水を飲んだ。喉が乾いていたのか、しばらく蔓に捕まっていたようだし、お腹も空いているだろうか。
寝る場所は洞窟の出口あたりでいいだろう。小川も見つけたし、水は確保できた。
食料は木々の実りだけで大丈夫だろうか?タンパク源は必須か。
だとすると肉をどうするか…
「葵は、上の名前はなんていうの?」
考え事をしていると詩織が話しかけてきた。
やはり、名前だけ教えたのは不自然だったか
「葵…だよ」
「それはさっき聞いた!苗字は?」
「あおい…」
「だから苗字!」
「蒼井 葵」
「あ苗字だったの!?」
「そうだよ(便乗」
「適当に作ったでしょ!」
だめだ。
俺は素直に自分の事を話す事にした。隠し事は前世でも苦手だったのだ。
「ぜんせ…て信じられないけど、葵は私より子供なのにしっかりしてるもんね。ほんとっぽい」
「ほんとだよ、ここに来る前は20才の男だった」
「え!?男の人だったの!?女の子にしか見えない…」
「今は女の子だよ」
詩織は困惑しながらも俺の体をぺたぺたと触ってきた。お返しに、バッとお腹を掴んでやると、先ほどくすぐっていた時と違い、どうして良いか戸惑っているようだ。
この表情はたまらん。俺の心のオスがそう言う。
というか、この状況。多少手荒いやり方でも詩織にエッチな事出来るのでは?そう思うと堪えられない。
こ、興奮する。前世じゃご縁がなかったからな。ねっとりと手を上に這わせていく…。
ふと顔を見ると、詩織はすでに泣き出しそうだった。その顔を見るとわたしの邪心は消えた。泣かせる気はないんだ。ごめんよ。
頭を撫でてやると表情が和らいだ。
エッチなことなんてする年じゃないもんな。なにやってんだか俺は…。
ただ、現状なにもできていない。
どうやって生き抜けばいいんだ…?
———ギルド冒険者視点———
イニシエの森で採集の依頼を受けた。
マニモニ草を1袋程だ。この時期はよく受ける。
この森は魔物が凶暴で危険なんだが、俺の得意スキル「消音」なら簡単ってわけだ。
しばらく散策して気がついた。魔物と出くわさない。というか、気配が全くない。
不気味だ。早く済ませて帰ろう。
マニモニ草を出来るだけ集め終わり、帰ろうとすると、聞いたことのない歌が聞こえてきた。女の子の声が聞こえる…。この森で?
恐る恐る近づいた。「消音」に集中を切らさず、ゆっくりと。
俺の目に映ったのは、木漏れ日にあてられて、艶めく美しい銀髪と、俺をしっかりと捉えた、透き通った緑眼だった。