表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/37

神獣ゼオヒム



 その時、何かが私に向けて飛ばされた。


 そしてはじき返された。

 リアだ。リアが来てくれた。



 「葵ちゃん!しっかりしな!」


 「リア! あの人は一体…」


 「分かんないわよ!ヤバイ気配感じて来たらコレ…ちょっとアンタ誰よ!」



 「…ここに、魔界の者が来てるはずだ」



 「はぁ?急に襲って来て質問ガン無視とかマジっすか?」


 

 男は返答の代わりにまた何かを飛ばして来た。

 斬撃のようなものを、だが男の身体は一切動いていない。



 「うっぐ! こいつ…頭のネジ外れてるわ!」



 リアが男の攻撃を防いでいる。


 リアつええ。


 私は、その男を前に動けずにいた。萎縮してしまっていた。




 「葵様!!」



 聞き慣れたアイネスの声が後ろから聞こえた。


 そうだ!アイネス!助けて!!


 いや違う。アイネスが敵う相手じゃない…。私が守らないと…!


 だめだ、思考が錯乱してる。



 「あ…あぁ…ああああ!!」


 

 アイネスの後について来ていたのか、シエラが急に声を上げた。


 声を上げ、痙攣し、失禁しながらその場にへたり込んだ。


 涙を流し、声ならぬ声を上げ続ける。

 


 「ゼ…ゼェ… ゼオヒム…」


 「ゼオヒム!」


 こいつが…ゼオヒム…!



 その男からまた何かが飛んできた。


 標的は私…の後ろ。


 咄嗟に滅茶苦茶な風魔術を上へ解き放った。


 会話する気がないのか!?



 「お前達は面倒だな、これだと効率が悪い」



 たまに発する男の言葉は、まるで私達の話と噛み合っていない。

 というかなんだ?効率?



 「お前の家族は既に殺した。魔界に戻ってくればお前の命もないと思え」



 そう言い残すと、その男は後ろに向き返り、ゆっくりと歩いて行って、急に音もなく消えた。


 どういう事だ?奴がゼオヒム?



 「とりあえず助かったわ。今やりあっても勝ち目なかったかんね…」


 「ごめんなさいリア、あなたが居なかったら今頃みんな殺されてたわ。同盟とか言って、私役に立てなかった。ごめん」


 「いいのよ、とは言えないわね。まぁ今度特訓でもすればいいとして、今はシエラの面倒を見てあげて」



 リアの視線の先には、自我をなくした様に痙攣し続けるシエラの姿があった。


 私がしっかりしなくては…。



 アイネスに手伝ってもらって、シエラを露天風呂まで運んだ。

 失禁しているので体を流してあげなければいけない。


 ゼオヒムを見た時のシエラの動揺ぶりは尋常ではなかった。どれ程の事をされればああなるのだろうか?


 暫くシエラの体をお湯で流していると落ち着き始めた…と思ったら今度は泣きながら私に抱きついて来た。



 「パパ…ママ…ごめんなさい。ごめんなさい。葵様…葵様ぁ…!」



 いたたまれない気持ちになった。

 どうしてあげることもできない。

 

 仇を取ることも、死んだ人を生き返らせることも。

 

 あんな短時間で強烈な動揺を与えられた。


 ゼオヒム…。

 一体何がしたかったのか。



 

 ———-



 その日以降、私はリアから魔術の特訓を受ける様になった。


 ここにきてやっと、魔術の基礎的な知識を手に入れることができた。


 

 そうして学んでいくうちに、私はある応用を思いついた。


 

 それは、『召喚術と付与術』の応用。


 

 ま、つまりどうなるかというと、こういう事だ。



 「魔法カード発動!!!サイク○ン!」



 ブワァァァ!




 カードに召喚術の魔力を付与する事によって、魔術を再現できるのだ。


 込めてあるのは私の魔術なので、私はわざわざこんな手間せずとも唱えれるのだが。

 魔力の温存になる。

 そして、アイテムとして仲間に託すことも出来るわけだ。

 


 「葵様。こんなに一杯のお札、有難うございます!」


 「札というかカードね。実用的な御守りと思ってくれたらいいわ。」



 という訳で、シエラに持たせてあげた。仲間のなかでは彼女が一番戦闘の術がないのだ。



 「シエラ…ごめんね。私、これくらいしかあなたにしてあげられない」


 「そんなこと…。このお札、大切に使います!」


 「お札っていうかカードね」




 カードの材質によって込めれる魔力も変わってくる。材質そのものを召喚することもできるが、良いものはさすがに魔力消費が激しすぎて厳しい。

 魔力濃度の濃い場所なんかがあれば作れるのかも。ここじゃ無理だ。



 ま、護身用ってことでね。



 その後も私とリアは魔術の特訓を続けた。




———それから3ヶ月後———-




 拠点が発達しつつ、魔術も鍛えてきた。



 少しづつ日々の生活が充実し始めた頃。


 魔界の子供達が近場で発見される様になった。

 5人組と6人組、現在計11人保護。


 魔界で何かあったな。


 シエラは仲間との再会を喜んだ。

 まぁ、顔見知りはいなかった様だが。


 彼ら曰く、シエラの一件以降。子供を逃す人達が増えたらしい。

 魔界がどういう統括を受けてるか知らないが、結構逃げれるのか?

 

 だとしても、コレはマズい。

 アイツがくる。絶対。


 ただ、子供達に泣きつかれてことわれるわけもなく、面倒を見ることとなった。


 私も、孤児院にはお世話になったしな。




 …と思ったが、子供達が日に日に増えている…。

 現在24…。1クラス分はあるぞ。



 と、言うことで学校を作りました。



 このままだと色々な問題が出てきてしまう。ので、彼らには生活面での戦力になって貰わねば、ということだ。

 あとついでに学校っていいよね。みたいな。



 リアはノリノリで学生服を作った。ゴリゴリ前世そっくりのやつ、よりチョイ可愛い目のやつを。


 私は理事長だの学長だの色々な肩書をつけられたが、授業講師は主に私とリアがやっている。こういう時こそアイネス…と思うかもしれないが、既に彼女は生活面でのサポートにフル稼働している。これ以上仕事を頼みたくはない。


 魔界から来た子供達はみんな素直だ。

 そりゃぁそうだ。大量殺戮の地獄のような場所から必死に逃げてきた訳だからな。

 そうでなくても、力づくで素直にさせるが。


 


 そんなこんなで、人数が増えたが何とか回している。


 後はゼオヒムがどう動くかだな。


 アイツは絶対またここにくる。

 決して油断してはいけない。




 

 「あおいさま!あそぼ!」


 「んあ?」


 「いや、俺たちと遊ぶんだ!」


 部屋で考え込んでいたら子供達にもみくちゃにされた。

 すると部屋の入り口から物凄い突風が吹き込んできた。


 「あなた達何してるの!葵様に無礼よ!」


 シエラが鬼の形相で入ってきた。私のカードを使ったな。


 シエラを宥めて、子供達とは遊んであげる事にした。

 

 シエラもそうだが、初期メンのクロウとアイネスは、私に対する態度がすごく慎ましいというか、私を神格化しまくっている。

 私を立ててくれているのだ。

 その甲斐あってか、この子達にもまた、敬意を持ってもらえている。

 私個人としては嬉しい限りだ。



 かくれんぼを始めた時、私は少女達に連れられて一緒に隠れた。4人に囲われて、かくれんぼじゃない気がするが…。


 彼女達には夢があるらしい。

 この状況で夢を持つのは素晴らしいことだと思ったんだが…。


 その夢は、主守隊に入る事だそうだ。


 うーん。これもシエラの熱心な指導の賜物、だろうか?

毎回殴り書きらんらら

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ