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主守隊


 「ほんとうに…いいんですか?葵様」


 「いいって、どうせ一人じゃこの森で生きてけないでしょ?」


 「あ…ありがとうございます!」


 

 前にクロウが拾ってきた魔界の子は正式に仲間となった。


 彼女の名前はシエラ。


 神獣リアの言っていた通り、魔界の神獣ゼオヒムの被害に遭って逃げてきた子だった。


 ほっとした表情でクロウを見つめる。

 できてんねぇ!


 私達に迷惑をかけまいとツンケンしていたようだ。下手な演技だったけどな。



 


 そして、新しく仲間になった神獣のリアは、いつの間にか私物を持って来ていた。

 急に家の中で裁縫を始めたので、豆腐ハウスを増築して部屋を作ってあげた。

 各々の部屋も増築中だ。




 「できたぁ!凄くなーい?私裁縫やばくなーい?」


 「ほんとだ凄い!…ていうかなんで制服?」


 「え?趣味かな」



 リアの特技によって私達に新しい服が用意された!

 みんなもれなく学生服だが…。


 しかも私だけセーラー服。この体にはちょっと早い気もするが。



 「リア…私の服は少し小さいような気がするんだが…」


 「アイネスちゃんは私のイチ押し『女子高生 夏服ver』よ!」



 おお!制服っていいな!

 アイネスのおっぱいが程よく主張されている!素晴らしい出来だ!



 「まぁお近づきの印にって事でサービスね。これからは材料さえ用意してくれれば服を作ってあげなくもないわ」


 「服を用意してもらえるのは本当に助かるよ、ありがとうリア」


 「んま、女の子ばっかなのにオシャレできないなんてダメっしょ」



 ただのギャルではないな。やはり神獣という名の転生者は何でも魔術で出来ちゃってチートだな。

 私は衣服作れんけど。


 

 私達の拠点は充実していった。




—————————-



 

 アイネスが『主守(シュシュ)隊』というものを結成したらしい。引き締まった表情で報告してきた。



 「神獣リアを特別顧問として迎え、わたしを筆頭に今後、葵様に忠誠を誓うものを迎え入れてゆく所存です。今のところは私とシエラしかいませんが…」


 「ん?クロウがいるでしょ?」


 「クロウは入れるつもりはありません」


 「何言ってるのよ、遊ぶ時はみんなで仲良く遊びなさい」


 「あそ…び…」



 がーん と、後ろに擬音でも書かれていそうなくらい、アイネスは分かりやすくショックを受けた。


 あぁ、ごめんごめん。


 なんかごっこ遊びみたいだなと感じてしまっていたんだ。

 アイネスもいい歳なのに遊びな訳ないよな。


 へたり込んだので頭を撫でてあげると呻きながら私のお腹に顔を埋めてきた。


 7才にすがる27歳…



————



 結局クロウは仲間に入れてもらえなかったらしい。男子禁制なんだと。


 主守隊の結成報告があった後、アイネスとシエラが着替えてきた。


 メイド服に。



 「主守隊特別顧問リア殿に作って頂きました。」


 リア…良い仕事してんじゃん…。


 二人の後ろでリアが私をニヤニヤ見ていた。

 私もニヤニヤしていた。


 アイネスは堂々としているが、シエラは随分ともじもじしている。無理やり付き合わされてるんだろうか。



 「主守隊は主人様の手足となって働く所存です。給仕から護身まで、そして何かご要望があればいつ何時でもお申し付けくださいませ」


 「分かったわアイネス。あなたにそこまでして貰えて私も嬉しいわ」


 「葵様…!そ、それでは近いのききき、きっすを…」


 「おいアイネス!急に意味わかんねぇ事言ってんじゃねぇぞ!」


 

 アイネスとクロウがまたいがみ合う。

 それを見てみんなが笑う。賑やかだ。


 ………




 夜。


 すっかり増築して出来た私の部屋に、シエラがメイド服のまま訪ねてきた。



 「どうしたの?シエラ」


 「はい、どうしても、その、改めて葵様にお礼が言いたくて…」


 「そんな、いいのに」


 

 お礼を言いに来た彼女は、どこか泣き出しそうな表情をしていた。

 そうか、彼女は虐殺が繰り返されているという魔界から逃げてきた子なんだ。随分としっかりしているけれど、まだ9才そこらだもんな。



 「シエラ、こっちにおいで」


 

 そう言って、そのまま彼女を抱きしめた。


 

 その日の晩、彼女は大泣きしながらずっと私に抱きついていた。



————



 そして朝、起きると泣き疲れて眠っているシエラが私の隣で眠っていた。


 私は外観7才のはずだが、もうみんなの中では母親的ポジションなんだろうか?


 シエラはこのまま寝かせといてあげよう。




 私も最近は増築続きで疲れてるんだが、こんな可愛い寝顔がベッドの上にあったら惰眠なんて貪れんっすわ。


 

 外の空気をなんとなく吸いに出た。


 静か、森の中だというのにとても静かだった。


 静か?



 見慣れない人物がゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。


 それは男。


 大柄でも、小柄でもない。


 顔は無表情。



 外見だけでいえば「優しそうな人」とさえ感じるような。


 だが何故か私の体全体が、その人に対して危険だと感じている。


 心臓の鼓動が早くなる。


 手が震える。


 足が動かない。


 至る所の汗腺から汗が吹き出す。


 こいつは…



   『ヤバイ』

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