表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/37

スミヨイ。


 

 みかんって面白いとは思わないだろうか。


 バナナもそうだ。剥けば食べれる。

 というか食べやすい様に皮で保存している様な、食べられるために育ちました。みたいな。


 私はつくづくそう思った。そういう形をしている植物が、面白いと思う。




 この世界でもそういう野菜や果物がある。


 「白弁当(しろべんとう)」と呼ばれる植物があるのだが、実が熟すと炊きたての白米みたいになる。皮が複数個の米を包んでおり、それはもう、弁当だ。


 他にも、「風船栗(ぷっくり)」という果物は、こぶしくらいの大きさの実で、中身がほぼ果汁で出来ている。実の突起部分から吸うと簡単に果汁が飲める。


 

 この世界の植物は積極的に食べられに来てる感凄い。あと、自然な甘味や旨味でどれも美味しい。


 たまに、いかにも食べれそうに見えて実は有毒で、殺した動物の血肉を食べる植物もあるそうだが、ここら辺は土地が豊かだから、相当森の深いところにまで入って、日の当たらない様な場所じゃないとそういうのは生えないんだとか。



 アイネスがそういった森の恵みをとってきては私に教えながら食べさせてくれるのだ。



 クロウと二人で出て何をするかと思えば、森の実りを持って来たり、家具を作ったりしている。


 私はアイネスの手早く作った椅子に座らされた。



 しばらくはアイネスがせっせと運んでくる木の実をぱくぱく食べていたが、なんだか眠い。


 食べて寝るなんてどうなんだ。

 まるでだらしないデブじゃないか。


 私はデブじゃない、体も心も。

 だが、この眠気は如何ともし難い。

 眠い…。




 

———



 起きると夜になっていた。



 昼夜逆転か?ニートの時はよくやっていたが…。


 部屋を見渡すと、二人が頑張って用意した椅子やらテーブルやらがあった。生活感出てる。


 そして私一人は作り立てのベッドに横にされていた。二人とも固そうな床で寝ている。



 気を回し過ぎなのだ。そこまでしなくてもいい。


 私は二人を起こさない様に風魔術で優しく持ち上げると、私の両脇に寝かせた。



 見れば二人とも手にマメが出来たり擦りむいたりしている。ま、一晩握ってたら治るだろ。



 まだ眠い。寝直した。




———-




 朝起きると私は元気いっぱい。

 ベットのお陰でだいぶ質の良い眠りが出来た。

 しかし、二人の姿がない。


 家から出てあたりを見渡したが、いない。


 焦る。

 

 闇雲に走り出そうとした時、アイネスの声が何処からか聞こえて来た。


 私はその方向へとゆっくり近づいてゆく。




 「生理現象なのはわかるけど、葵様の隣でするのはどうなの?」


 「ち…違う。何もしたわけじゃ…。」


 「葵様に気づかれる前に洗うのよ、もし見つかったら不快な思いをさせてしまうわ」


 「うん…わかってるさ」



 クロウが自分のパンツを小川で洗ってた。


 なんだなんだ?オネショか?

 まったくクロウ君はまだおねしょをするのか〜。はずかしいなぁ全く!



 俺は前世じゃ中二までしてたけどな。

 今日は優しくしといてやるか。


 ん、でもクロウと孤児院で寝泊りしてた時はおねしょなんてしてなかったよな。

 ベッドも濡れてなかったし取り替えた後もなかった。



 ん?あぁ…アレか。9才でそれは早い気がするがアレか。



 アイネスは女性だし。私が優しくしてやるか。


 あ、私も女か。






 そんな事はともかく!

 家と家具のおかげでだいぶ魔力も回復した…。気がする。


 無理はしない。無理をするとまた数日間魔力が著しく下がる可能性がある。


 ので、木を使った家や家具作りを手伝っていくのだ。



 

 驚く程順調に作れる。

 作った木箱みたいな家に木箱みたいな家をくっつけて部屋を追加していく。

 建築センスはないが、魔力で無理矢理家を作るのだ。


 お陰ですっかり幾何学的なみてくれの家ができた。


 家自体を増やして、2人の家も作ってやろうとしたら猛反対された。一緒がいいらしい。可愛い奴らめ。


 でも私は分かってるぞ。

 トイレは家の中と遠目の外に用意した。外のはクロウ君を思ってだよ。


 ちなみにトイレはボットン便所だか、私が使うと浄化されるので、定期的に使えば問題ない。

 私のおしっこ?は異常なまでの浄化性能がある。おしっこというより特殊な体液だと捉えた方がいい。

 アイネスが私のおしっこをポーションの類ではないかと、私のおしっこを飲ませて欲しいと言い出したが断固拒否した。いや、本心では飲ませたいけどね。

 私の残り少ない善意がそうさせないのだ。



 私の体はいったいどうなっているんだか。

 もし仲間が、私の触れてるだけで治癒できる能力を上回る大怪我をしたら、おしっこをかければいいのか。いや、そういう場面を作らない様に善処せねば。





 

 



 そんな事をしながら半月が経った。



 手作りなものばかりだが、魔術のおかげでより便利に快適に暮らせる様になってきた。


 電気やガスがないのはいくらでも魔術でどうにかなる。アイネスが家庭的な魔術を使いこなしてくれるのだ。

 私も習って、風魔術以外の基礎的な魔術を使えるようにした。


 水道設備はどう作ればいいか分からないが、前世で見た蛇口には電気の様なものはなかった。

 恐らく、圧力がかかっていて、出口さえ開けば出ると言う仕組みなんだろう。


 と、思ったので。

 家の上に貯水タンクを作り、そこから木で作ったパイプで家に繋いで、家のキッチンまで繋いだ。

 位置エネルギーって奴だ。

 普通は木製でパイプなんて出来ないけどな。鉄がないんだよ鉄が。木を滅茶苦茶に加工できるからいいんだけど火事で1発だな。


 蛇口はどう作ればいいのか分からなかった。何故捻ったら出てくるのか…。


 パイプからドバドバ水を出しながら試行錯誤をした。


 最初は穴の開いた棒みたいなのを用意して、その棒を回す事で、穴に水が通ったり通らなかったりで蛇口を再現したが、棒が中々きっちり収まらずに水が漏れ出した。


 あと、私の知ってる蛇口じゃない。


 ので、今度はネジをイメージする。


 パイプを上向にし、上からネジみたいなやつで回して蓋をするのだ。


 これで開け閉めは出来る。後は水が使いやすい様に、出た水が横向きにまとまる様に囲ってやるのだ。

 ネジはその外からひねれるように…。


 蛇口出来たわ。


 開けると持ち手が漏れた水で濡れるのが微妙だが出来たわ。



 アイネスとクロウがめちゃくちゃ褒めてくれる。

 私も満更でもない。



 「なんですかこれ!」


 「これは水道設備、もとい蛇口だ!洗い物もしやすかろう?」


 「凄いです!魔石もないのに水を用意しなくていいなんて!」



 水は上に用意してるんだけどね。


 クロウが夢中になって蛇口を開けたり閉めたりしていた。

 おいあんまやると上の水なくなっちゃうからな。大きめに作ってるけど。




 と、言う事で、お家に念願のシャワールームも作った。お風呂も。

 蛇口作るの楽しい。

 水しか出ないけどな!!!


 お風呂の水は抜くと外に流れる。

 持ってくるのは手動で私が…。



 温水ってどうすればいいんだ?いや、魔術を使えば作れるけど、自動にしたいよ〜。



 結局、その日は温水を諦めた。


 お風呂の湯はあっためてるからあったかい。

 アイネスとお風呂だ。

 一緒に入るのは2回目だが、前とちょっと関係性が違う。


 

 「葵様、お背中お流しします」


 「は〜い♡」



 今ではすっかり、アイネスは私のお世話係。これからはずっとアイネスとお風呂に入るぞ!



 「って冷やぁ!!」


 「も、申し訳ありません!」


 「あ!灯の火が…水掛かって消えちゃった」


 「葵様!すぐに灯りをお付け致します…えぇと…」


 「いいのよ、アイネス出来ないでしょ?ほれ」



 ボンっと火が宙に浮いて出る。


 結局私の魔術だ。


 折角アイネスが服を脱いで私とお風呂に入ってるのに、夜だから灯りがなくて魔術使ってなきゃいけないし、私の火だけで照らされる浴室は何だかおどろおどろしい。


 う〜ん。改良の余地あり。




 そうやって少しづつ、すみやすい拠点にしていく。





 ちなみにお風呂は露天風呂のようにした。

 部屋の外なら夜でも星に照らされて明るい。


 温泉掘り当てたわけじゃないからお湯は私が入れるんですけどね…。


 アー、シャワーを浴びてるアイネスを見たかったが、これもまた良きかな。


 星に照らされて、湯に浸かるアイネスはそれはもう美しいものだ。



 「葵様?今日はもうお風呂に入られたのでは?」


 「アレはその〜。温泉の動作チェックよ。」


 「動作チェック…?」


 「…私もアイネスと一緒に入るの!!」


 「はい、ぜひご一緒に!」




 ふー。


 アイネスと一緒にお風呂。

 エロい…というより癒される。


 お湯に浸かりながら、端で顎をついていると凝視された。



 「葵様、綺麗ですね…」


 「な、ななな!何だ!!」


 咄嗟に体を隠す。


 「いえ、最近葵様の体が成長なさってる様な気がして、可愛いというより、綺麗だなと。」


 「そ、そうか…」


 「胸も膨らんできましたね」


 「えぇ!む、むね!?」


 そういえば最近ちょっと膨らんできたとは思ってたが、アイネス…まさか私の胸を観察してたのか!?


 私がアイネスの体を楽しんでいたと思っていたが…まさか私がアイネスに遊ばれていたというのか…!?



 「触ってもよろしいですか?」


 「言い訳ないでしょ!!」


 「むう、葵様は私の胸をいつもお触りになるのに…」



 …ぐうの音もでない!!




 「そういえば、葵様は生理はまだですか?」


 「…せいり?」


 「…は!申し訳ありません。ご存知ありませんでしたか…葵様がしっかりされすぎていて7歳児という事を失念しておりました」



 いや、知らないわけじゃないんだけど。

 あぁ、そうか。女だもんな。

 アーめんどくさそう。


 いや、でも排泄も全く人間と違うじゃないか、神獣の私に生理はくるのか?


 …分からん。


 その日のお風呂の時間はアイネスによる保険の授業となった。


 





———-




 この森に来て2ヶ月が経った。


 遠出はしないが、拠点はどんどん快適になっていく。

 スミヨイ。



 そんなある日の昼下がり、アイネスに膝枕してもらっていると、クロウが傷だらけの女の子を抱えてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ