今までに見た夢の話 8
「あいたっ。」
隣を歩いていた友人?が言った。
どうしたのかと思い見てみると、友人?が何か拾っていた。
「どうした。」
「いや、何か降ってきたから何かと思ったらこれっぽい。」
友人?の手に有る物を見るとコンビニでカレー等を買った時に貰えるプラスチックのスプーンを指先で摘まんでいる。
「なんだそりゃ。」
辺りを見回す。
時刻は夕方、黄昏時とでもいうのだろうか。
オレンジ色の夕日が影を伸ばす。
川沿いの土手のジョギングコースを散歩しているのだから左手は川。右手には住宅街だがそこまではグラウンドが有り距離がある。
グラウンドには中学生だろうか?野球部が練習をしている。
何人かが固まって地面を見ている。
プラスチックのスプーンが飛んでくるような距離には誰もいない。
カラン
後ろで音がしたので振り返ると誰もいない。
アレ?
と、思い後ろに向き直り地面を見るとプラスチックのスプーン。
スプーンを拾い友人に見せる。
「スプーンだ。」
「見せて。」
友人?に渡すと自分の拾ったものと重ねて比べている。
「まったく同じもんだ。」
渡されて見比べてみると、スーパーやコンビニで貰えるプラスチックのスプーンに見える。
「なんでスプーンにしたの?」
「いや、オレじゃないよ?!」
「イヤイヤ、周りに誰もいないし、こんなことしそうな人に心当たりが有りまくりなんですけど?」
カラカラン
・・・
二人で音のした方を見る。
2メートルほど離れた所にプラスチックのスプーンが2つ落ちている。
「ほら。」
「ゴメン。」
じゃあ誰が?
「あっ!」
ちょっと離れた所で女の人がうずくまっている。
「大丈夫ですか?」
駆け寄って見てみると肩を押さえてうずくまっている。
肩を押さえている指の間から白い見覚えのある物が生えている。
(まさか)
自分の手の中にある物の持つところと同じに見える。
ゴスッ カラン ゴスッ
横から音がしたのでまさかと思いながら音のした方を見るとアスファルトにスプーンが2本生えている 。そして1本転がっている。
友人?が叫んだ
「屋根のあるところまで走れっ!!」
?
「いいから走れっ!!」
友人?がグラウンドを指差しながら走って行く。
グラウンドの方を見るとさっきまで練習をしていた野球部が何人か寝転がっていて、蜘蛛の子を散らすように散り散りに走っている。と、思って見ていたら1人倒れた。
ゴスン
理解した。
スプーンだ。
スプーンが降ってるんだ。
プラスチックのどこででも貰えるようなスプーンがアスファルトに刺さるスピードで降ってきているんだ。
アスファルトにプラスチックが割れずに刺さるってどんなスピードだよ?!
友人?を追いかけて走り始める。
女の人も気になるけどもし予想通りなら他人の事を気にしている時間はない。
間隔が短くなってきている。威力が上がってきている。
友人?は屋根のあるバス停や一軒家を無視して中学校を目指している。
そうだろう。目的地は同じだ。アスファルトに刺さるのだからペラペラのバス停の屋根や瓦屋根など薄紙と同じだろう。せめて、鉄筋コンクリート。それも階層があればあるほど良い。グラウンドを突っ切りながら倒れている練習着姿の中学生を観察すると意識のある子もいるが、頭部に白い物が生えている子は即死だろう。
ドスッ ドスッ ドスッ
すぐ近くに白い物が降る。
少し遠くに降る。
斜め前に降る。
離れた所から「がはっ!」っという声が聞こえる。
振り向かずに走る。
自分の足の遅さが嫌になる。
さっきの女の人が、中学生が気にならない訳じゃない。
でも、自分が死んだら終わりだ。振り返らずに走る。
友人?はもう校舎に入っている。
中学生が校舎からゾロゾロ出てきた。
スレ違いざまに会話を拾う。
「放課後に避難訓練?」
「もうホームルームも終わってるから帰っても良いんじゃね?」
「避難訓練なのに集合場所が体育館?初めてだよね。」
振り返らない。
校舎は目の前だ。
ズムッ!!
後ろで重低音が鳴り地響きを感じる。
友人?が驚いた顔でこちらを見ている。校舎に入り友人?を通りすぎてから止まって振り替える。あちこちに白い物が落ちている。何人も倒れている。呆けている友人?の視線を辿ると…なんだろう?そんなにビックリするような物が…在る…!!
クレーターだ!よく見なければそうとはわかりずらいが、先程自分が通った所に直径10センチメートル深さ1、2センチメートル位の凹みと中心に白い物がちょっとだけ見えている。
さっきの重低音の正体はアレか。場所的に自分の走っていた所の1~2メートル後ろに落ちたらしい。
友人?が呟く
「隕石じゃなくて隕スプーンだ…。」
なんだそりゃ?
友人?の立っている所からは空が見えているので友人?の横に並んで空を見上げる。
空を横切る流星の数々。
薄暗く鳴り始めた空に途切れることなく尾を引く流星群。
その時自分のズボンのポケットから、同時に友人?の上着のポケットから、校舎の中からスマホの緊急災害速報の着信音が鳴り響く。いつもと違う緊急災害速報の着信音。だけど聞きなれた着信音。
あぁ、なるほど。理解した。…朝だ。
いつもの見慣れた寝室。ぼーっとしながら今の夢の内容を思い返す。
夢だから途方もない内容でも良い。質量とか大気の摩擦とかプラスチックがとかいろいろ気になることもある。
それよりも気になるのは、夢の中で自分が友人と思わず最後まで友人?と感じていた彼。彼は小学生の頃に同じクラスだったサッカー少年団の人気者。もう何10年も会っていない。なんで今頃。
そして、なんでスプーン?
色々なツッコミは夢なので。