第9話 召喚者
「また森に入るのか」
マジックメイクビラージュは森に囲まれており、獣人の里は山にある。
「里は無事だといいんだが……」
「おそらくもう襲撃された後でしょう……」
獣人は普通の人間より何倍も力がある。自分の爪で戦うと親父が言っていた。
「とにかく、急いで獣人の里に行くぞ。モンスターも出るだろうから周り見といてくれ」
エレナがいるからモンスターが群がっていても大丈夫なのだが、任せっきりなのはだめだ。自分の力で解決しないと。
考えてみればエレナのおかげで何とかここまで来た。
俺の力で全知者を倒せるのか……?
不安は大きくなっていた。
「恵人。モンスターの気配がします……右です!」
俺よりも早く察知したエレナは大きい木の後ろを見ている。
二体のカマキリ型モンスターがいた。俺たちよりも少し大きい。そして気持ち悪い。
「ひぃ!虫よ!こっちに来ないで!」
カレンは虫が嫌いらしい。ブンブンと手を振り、そのまま倒れてしまった。
「やるぞ」
俺は剣を抜き、構える。
「一体は任せましたよ。カレンは動きませんので、もう一体は僕がやります」
「分かった!」
俺は素早く相手の後ろにまわり、頭を斬った……が、一撃では頭は飛ばない。
「中々硬いじゃないか……!」
モンスターは右の鎌で俺を切り裂こうとする。すかさず剣で止め、、右の鎌を斬り落とした。ギャッ!と声を出して怯んだ隙に左も落とし、もう一度頭を斬った。
今度は斬れたようだ。
「ふぅ、こんなもんだろう」
少し荒くなった息を整え、エレナの方を見ると、すでに終わっていた。消し潰したのだろう。跡形もなくなっていた。
「良い戦いぶりでしたね。お疲れ様です」
「ああ、カレンは無事か?」
「ええ、大丈夫よ……」
カレンは戦っていた間に起きたようだ。
「また虫型のモンスター出てきたら次は死んじゃうかも……」
「虫嫌い過ぎないか?」
「仕方ないですよ。今のは気持ち悪かったですし」
話していると、茂みの中からガサガサと音を立てて、何かがこっちに来た。
「……!誰だ!」
剣を構えるが、出てきたのは人だった。全知者ではないようだ。
「おっ、おっかね〜。聞きたいんだけど、ここ何処?」
記憶障害でも起こったのか、本当に分からなそうだった。
「この道はマジックメイクビラージュから獣人の里への道ですよ」
エレナが説明する。
「獣人?なにっ!ケモ耳がいるのか?おいおい……異世界来ちゃったよ俺……!」
頭がおかしくなったのか異世界とか言っている。
よく見れば見ない格好をしている。
ポロシャツにジーパン、リュックを背負っている、短い茶髪のメガネ男だ。
「どこに住んでいたか覚えてるか?」
「日本って所だよ。俺は東京に住んでるぜ」
全く聞いたことない地名が出てきた。日本って所に住んでいて東京って所にも住んでいるのか?家ふたつあるのか。
「カレン、エレナ、知ってるか?」
「全く」
「知らないわ」
皆知らないようだ。首を横に振りながら答える。
「結構重症みたいだ。病院に連れていこう。ソードライン王国に急いで戻るぞ」
「待て待て、マジだから!やっぱりここは異世界……!間違いないぜ!なぁ、俺をあんた達に同行させてくれ!頼む!」
目の前で手を合わせて、頭を下げている。心配しなくても置いてかないのに……。
「同行させてやるよ、病院までな」
「だからちげーって!……あっ!俺は未来予知出来るかもしれないぞ?数多くのラノベを読んできたからな!」
ラノベが何か知らないが、未来予知出来るのか?
「この先どうなるか分かるか?」
「もしラノベの作品と同じ世界なら出来る、それか似たような感じがあれば次の展開が分かるかもしれないぞ?有能そうだろ?仲間にしてくれよー」
「まぁ……いいだろう」
話すのがダルくなってきた。絶対引いてくれないと思ったので、仲間にした。
「ありがとう!リーダー!」
もう一人仲間に加わった。全知者は倒せるのか。不安は尽きないが、今は獣人の里に急いだ。
いかがでしたか?
異世界召喚された人が出てきました。
こういう人は主人公になる筈ですが3人目の仲間ですね。
誤字、脱字やアドバイス等ありましたら気軽に言ってください!
それでは皆様が楽しめる作品を目指して頑張ります!