第7話 マジックメイクビラージュ
「ここがマジックメイクビラージュか……」
木で作られた家が何軒もある。山の集落と似たような雰囲気をしていた。
一つだけ赤い、レンガの家は村長の家だろうか。
この村には湖もあり、かなり良い水質をしていて、自分の顔が映る。
ソードライン王国とは全く違う景色がここにはあった。
「凄くキレイで自然を感じられる所ね」
カレンは王国から出たことは無いのだろう。
初めて見た村に感動しているようだ。
「エレナ、この村にお前の家があるのか?」
「僕の家はありませんよ。ずっと野宿ですので」
「野宿って……家無いのか」
家があったなら泊めてもらおうと思っていた。宿泊はお金が掛かるからという理由だ。
「ねぇ、ここの村の人達は魔法をつかうのかしら?」
「はい。この村の人達は皆魔法を使えますよ。僕ほどじゃないですがね」
冗談なのか本当なのかは村の人の魔法を見てから決めよう。
「とりあえず、旅館に行って何日か泊めてもらおう」
俺は木でできた大きな看板の地図を見た。旅館は村の端にあるらしい。
「早く行きましょう。お腹が減ったわ」
「そうだな。急ごう」
俺達は旅館に向かった。
旅館の受付、俺はあることに気づいた。それは1人多くなったからだ。
エレナも宿泊するという事は当然宿泊費も増える。金が底をつく。
「あー、これは参ったな」
「どうしたのかしら?」
カレンが首を傾げる。
「金がなくなった。討伐クエストでも受けるしかないな」
確かこの村にはギルドがあるはずだ。地図でギルドと書いてあったのを覚えている。
「うっ……お腹が空いているのにー……」
カレンは明らかにイヤな顔をした。
木で作られたギルドは村の中でも建物が大きかった。中には人が何人かおり、混雑していないため、討伐クエストも簡単に受けれそうだ。
「すみません。討伐クエストをやりたいんですが、稼げるクエストはありますか?」
受付嬢に声をかける。この辺りのモンスターなら異常に群れていないなら勝てる自信がある。エレナもいるから安心だ。
「稼げるクエストですね。このクエストはどうでしょう?貴方ならやり遂げる事が出来そうです」
この辺りで謎の黒いスライムがいるらしい。それに立ち向かった人達は行方不明となり、帰ってこなかったという。
高難易度のクエストだ。無事終わらせればお金が沢山貰える。
俺はこのクエストを受けた。
「エレナ、ずっと森に居たんだろう?」
「居ましたけど?」
エレナに黒いスライムが描かれた紙を見せる。
「黒いスライム知ってるか?なんか討伐に行った人が行方不明になるんだと。強そうなんだが」
「うーん……見た事ありませんね。まぁ僕なら余裕ですが」
ホントに余裕そうな顔をしている。もしかして村の人達より強い?村の人達があのオオカミ型モンスターを一気に倒すとは考えられなかったし、他の人とは違うだろうと薄々分かっていたが。
「スライムって物理攻撃は効かないんだろ?エレナの魔法が頼りだ」
よくよく考えてみれば俺は今までスライムを相手にしたことは無かった。
親父が狩ったことがあると言っていたが物理攻撃が効かなく、苦労したらしい。
「ねぇ、攻撃が効かないなら私行かなくていいわよね?」
動きたくないらしい。だがエレナの手助けをする為にも俺らがいなくてはならない。
エレナ一人でも行けそうだが。
「ダメだ。他のモンスターは俺らでやるぞ」
「ううっ……早く終わらせてよね」
当然イヤな顔をしている。
再び森に入った俺達は黒いスライムを探して彷徨っていた。
「中々現れなくないか?」
小一時間は彷徨っている。他のモンスターが現れるぐらいで黒いスライムは見ていない。
「そうね、早く終わらせたいのに……」
「……ッ!! 気配がします!」
いきなりエレナが大きな声で言ったので驚いたが、すぐ剣を構えた。
「どこだ!」
気配は分かるがどこにいるかがまるで見当もつかない。
「恵人、下です!」
エレナが言った通り、俺の足元から黒い何かが現れた。
「まずい!」
このままじゃコイツに喰われてしまう。
スライムの口の部分が俺の脚を喰おうと開いている。
「グラビティ!」
エレナが魔法を使い、黒いスライムがペタンコになって消滅した。
「た……助かった……エレナ」
脚がなくなるかもしれないという恐怖に、心臓がバクバク鳴っていた。
「クエスト完了ですね。帰りましょう」
平然と、村の人が苦戦する相手を魔法一つで片付けた。
「エレナ強いわね!今の技はなんの属性なの?!」
エレナの魔法に興奮したようだ。目が輝いている。
「今のは特殊なやつです。重力ですよ」
少し誇らしげに、短く説明した。
「討伐ありがとうございます!賞金の100万円です!」
ギルドの受付嬢からお金を貰っていた。
「これだけあればしばらくこまらないな」
「やっとご飯が食べられるわね!」
ギルドの横に飲食店があり、この村では魔法で料理すると言う。
「お待ちどう」
木の皿の上には焼き魚を使った料理が乗っていた。
一口食べて見ると生臭くなく、ほんのり塩が効いて美味かった。
「これは美味しいな」
「そうだろ兄ちゃん。湖で取ってきたばっかだから新鮮だぜ」
料理人のおじさんは笑顔だ。美味しいと言ってもらえて嬉しいのだろう。カレンを見ると、食事はもう終わりそうだ。あんなにお腹が空いたと言っていたから当然だが、食べ方は丁寧だった。お嬢様だからだろう。
一方エレナは食べ終えていた。
「頬っぺに何か付いてるぞ」
「あ、教えてくれてありがとうございます」
外見がそのまま女の子なので本当に男の子なのか疑問に思う。
何にせよ、本人が言っているのだから気にする必要はないのだが
そう思いながら食べ物をパクッと口に運んだ。
いかがでしたか?
誤字、脱字やアドバイス等ありましたら気軽に言ってください!
それでは皆様が楽しめる作品を目指して頑張ります!