第5話 森の魔法使い
数日間という事もあり、一日中稽古。ソルさんは忙しくないのか……?その疑問が湧く。
「私は戦争が起きない限りする事がありませんよ」
「そうですか……流石にキツイんですけど……」
「キツくて当たり前ですよ。私の娘の為ですから」
親バカというやつか、相当娘を愛しているようだ。
「お父様、お疲れ様です。でも私は守ってもらわなくても戦えますよ?」
カレンは俺に何も言ってくれないのは残念だった。これから共に旅に出るのに何故か一言も喋ってはくれない。
緊張しているのか、それとも負けたのが悔しいのか……緊張は無いか。何せ、初めて会った時は元気だったし。
「カレン、確かに貴女は強いです。ですが恵人にはもっと強くなってもらわないと心配なのですよ」
そして稽古は最後を迎えた。
数日間だったが、一日中やっていたお陰で前よりも神経が研ぎ澄まされたような感じがする。
物凄い豪邸の前、旅の出発のお別れ。
「カレン、無事を祈っていますよ」
「お父様……」
カレンは涙目になっている。きっとしばらくの別れは辛いのだろう。
俺は少し疲れているからか、別れも悲しくはない。
いや、数日間だけだったからかもしれないが。
「恵人」
いきなりソルさんに話かけられ、驚いたが、その先をしっかり聞く。
「カレンを頼みますよ」
その言葉に重さを感じたような気がした。
「はい。任せてください」
ソルさんは満足げな顔をした。
「カレン、お別れは済んだか?」
「……ええ、済んだわ。行きましょ」
こうして俺らは、次の目的地に向かった。
森に入ってすぐの道中、獣道も無く、草も生い茂っていて少し苦労をしていた。
「ねぇ恵人、休みましょう?」
「まだ森に入ったばかりだろ……」
こんなにすぐ休もうとするとは驚きだ。剣術学院のトップなんじゃないのか?
「でも、流石に誰も入った事ないって分かる森入る?それに虫も出るかもしれないわ……」
「ついて行きたがったのはお前だろう」
「ち、ちゃんとカレンって名前があるんですけど!」
何でそこまで名前で呼んで欲しいんだろうか。だが、まだ休む訳にはいかない。せめて歩きづらい所から抜けなければ。
「とにかく、もう少し進んだら休憩をとろう」
この森を抜けたらマジックメイクビラージュと言う村があるらしい。とりあえずそこに少し泊まる事にしている。
気づいたら、さっきよりは進みやすい所になっていた。
だが異変にも気づいた。
進みやすくなった道は獣道であり、それも通ったばかりだと言うことに。
「恵人!モンスターよ!やっぱりこの場所にはモンスターが潜んでいたのね!」
カレンも気づいていたようだ。
「ああ、片付けるぞ」
四足歩行の獣、狼に近いモンスターだ。ゴブリンなどのメジャーモンスターより遥かに強いが俺らにとってはそこまで強い存在ではないだろう。
「たぁッ!」
キレイな金髪を舞わせながら華麗に剣を操る。思わず見とれてしまうが、足でまといになるつもりは無い。
すぐ様、湧いて出てきたモンスターを斬り付け、カレンの援護に向かう。
「流石は私に勝った男ね!」
「油断するなよ」
モンスターが次々現れる。狼型のモンスターは群れる事が多いのだが、群れすぎじゃないか?
明らかにおかしい程湧いてくる。
「キリがないな……」
「どうしよう、このままじゃ食べられるかもしれないわよ!」
すでに俺達は狼型のモンスターに囲まれている。
ここで終わる訳には行かない。全知者を倒しに来たのにここで俺らが倒されては元も子もない……全力でこの場を抜けなければ……!
すると奥の方から黒いローブを着た、身長の低い人が現れた。
これはまずい、格好からしてどう考えても敵だと思われる者が来てしまった。敵なら、こちらに勝ち目はない。
だがそいつは沢山の狼型のモンスターの命を一瞬で奪った。
片手を上げただけで。
「「……ッ!」」
俺とカレンは同じ反応をした。
いかがでしたか?
ちょっとサブタイトルがネタバレな気がしますが問題ないでしょう笑
誤字、脱字やアドバイス等ありましたら言ってください!
それでは皆様が楽しめる作品を目指して頑張ります!