第15話 新しい炎
目を覚ますと俺は、カレンの膝を枕にして寝ていた。
「あ、起きたわよ!」
「うっ……」
頭痛がする。身体も重い。
「起き上がったらダメですよ。まだ完治じゃないので」
エレナが俺の顔を覗いて言ってくる。
俺は死んでいないみたいだ。体には傷が少し残っている。
「この胸の傷は恐らく残ります。深く斬られていましたので……」
「死んだかと思ったわよ……!」
カレンは涙で瞳が潤っていた。こんなに心配する子だったか……?
「おっ?恵人おはよう!」
晃が謎のテンションで声を掛けてくる。焦っていたのがわかりやすい。
「戦いはどうなったんだ……?」
「エレナが来て勝ったのよ!エレナは凄く強いわ!」
「フレミアはそこにいますよ」
見ると壁を後ろに座っていた。傷が身体中にある。
「殺さないのか……」
「最初は殺すつもりでしたよ。でもまさか僕達と同じ、全知者を憎む者だなんて……」
「どういう事だ?」
全知者なのに全知者を恨んでいる?訳が分からない。
「あの方はスパイだったのですよ。ソードライン王国育ちで、マジックメイクビラージュまで行って炎の魔法を得たらしいです。全知者を倒したいと考えている人です」
なるほど、そういう事なら分かる。
「幹部になれたのか……全知者も甘いな……」
「話してないでとっとと兵器を破壊しに行きな……人質もいる。幹部になって得た情報はその後だ」
スパイならなぜ俺達を殺そうとしたのか気になるが……まずは兵器だ。
「あっ、恵人は行かせませんよ?寝ててください」
「だが……」
「フレミアに聞きたいことがあるでしょう?」
エレナは俺の心の中を見透かしたように言う。魔法使いは心の中も分かるのか?
「……分かった。待ってるよ」
三人は兵器の元へ行った。
二人だけになり、沈黙が続く。一度は俺を殺しにかかった相手だ、そう簡単に心は開けない。
だが聞きたいことがあるのも事実。口を開かねば。
「……フレミア、なんで俺を殺そうとした……いや俺たちを」
「……あたしに殺られるようじゃ全知者に勝てないだろ。殺されるならせめてあたしの手で殺そうと思っただけだ」
「お前に勝てるやつなんてそんなにいないよ……現に幹部だ……」
「ああ、そうだろうな。ちなみに今回の件で幹部じゃ無くなるがな……。エレナという奴は何者だ?全く歯が立たないぞ」
「自称魔王だ。父が魔王だったみたいだ」
するとフレミアは微笑し、無理無理と首を横に振る。
「勝てないわけだ……」
「それともう一つ聞きたい。どうやって幹部になった?」
「アイツらのフリをした。身元も誤魔化せば通ったし、強ければ仲間入りだ。下っ端は脳がないのかもな……冗談だが」
階段を登る音が聞こえ、三人が帰ってきた。
「兵器を破壊しました。人質も解放しましたよ。この建物にはもう用無しです。フレミア、情報を」
「わかったよ……全知者はこの監視所の裏から真っ直ぐ先だが……」
フレミアは一回咳をし、
「あたしは全知者の全滅を諦めた」
エレナが眉をひそめる。他も同じ反応だ。もちろん俺もだ。
「どういう事です?」
「ヤツらのアジトはソードライン王国とは比べ物にならないほど大きい。いや、アジトじゃないな都市だ」
「なっ……」
それを聞いた俺は声が出た。皆も驚いている。人数は俺達より多い、ただでさえ強いのに……。
「あたし達は……あたし達の先祖は差別されて追放されたんだ。弱いからや悪事を働くからという理由でな」
「それじゃあ……人が殺されたりするのって……」
俺はその先の言葉は浮かんでいた……でも言えなかった。
「ああ、弱いやつ、あるいは悪いやつはいらないから殺すんだ。兵器とかも使ってな」
「そんなの……正しいわけない……必ず止めてみせる……!」
重い身体を起こす。カレンが支えてくれた。
「あたしは諦めたんだがな、もしかしたら皆その事を知っていたのかもな……」
フレミアが俯く。疲れているのも無理はない。激しい戦闘の後だ。
「フレミア、お前にもついてきて欲しい。全知者が何人いようと関係ない。ヤツらは間違っている。俺達が正してやろう」
「はっ、いいぞ。アンタについて行くのは面白そうだ」
顔を上げ、楽しげな表情をしている。殺されそうになったがもう気にしていない。仲間になってくれるなら心強い。
「ありがとう。ここはもう用はないんだな?エレナ」
「はい。用無しです」
「じゃ、出るか……」
俺達はフレミアという新たな仲間を連れ、監視所を出た。
いかがでしたか?
罪の無い人を殺すのは間違っている。これは全知者だけに言えることなのでしょうか?
おっと、口を滑らせてしまいました笑
誤字、脱字やアドバイス等ありましたら言ってください!
それでは皆様が楽しめる作品を目指して頑張ります!