第1話 少年の決意
草が生い茂る庭の真ん中。
さらさらした黒髪をした、顔立ちの良い少年は、剣を隣に、脚を伸ばしながら座っている。
俺――剣城恵人は毎日の特訓を終え、今はひと休み中だ。
ふと、上を見上げると雲一つない明るい空が見えた。
だんだん眠くなってくる……。
「おーい、水はいるかー?」
突然、後ろから親父の声がして振り返ると、木造で出来た自分の家の窓から顔を出し、こちらを見て呼んでいた。俺は親父とよく似た顔をしている。
「ああ、もらうよ」
汗で服がびしょびしょだ。ちょうど喉も乾いていたので、有難い。
親父は家から出て来て水を渡してくれた。
「お前は剣を振るってばっかだよな、この時間は」
俺の特訓が終わると、いつも言ってくる言葉だ。なぜ言ってくるのかは分からない。でも、決まってこう答える。
「親父、俺は強くなりたいんだ。親父と同じ失敗はしたくない……」
親父は俺のお母さんを守る事が出来なかった。俺がまだ小さい頃、突然見知らぬ人達が来た。そいつらは俺のお母さんを殺しに来た。なぜ殺しに来たのかは分からない。当然、親父はお母さんを守る為に戦った。しかし、親父を瀕死の状態にし、お母さんは殺された。
俺はお母さんが殺されるのを物陰で見ていることしか出来なかった。
「そうか……」
親父は少し悲しそうだった。
「だがな?恵人、俺はお母さんを守る事が出来なかったがお前まで失いたくない……だからここで静かに暮らそうと思っているんだ」
いつもは「そうか……」で終わらせていたのに、今日は違った。その言葉を聞いて、怒りが込み上げてきた。
「親父、俺はお母さんが殺されるのを見たんだ。放って置いたらまた誰かが殺されるかもしれない。静かに暮らす?そんな事できるかよ!」
親父はお母さんを殺したヤツらと戦って、左腕を失っている。
俺の住んでいる所は山にある、小さな集落だ。剣を扱うのが得意で、集落の人達は皆、強者ばかりだ。
その中で親父は一番強かった。
「恵人、聞くんだ。俺が相手しても勝てなかったんだ。奴らは相当強い。お前が行っても無駄かも知れないんだぞ?」
「戦ってみなきゃ分かんないだろ!」
俺は家の中に逃げるように入り、バンッ!と扉を閉め、部屋に閉じこもった。
確かに親父の言い分は分かる。 俺が本気で相手しても親父は余裕の表情だった。
小さい頃、俺はお母さんが殺されてすぐに、強くなるために剣を持った。
何も悪くない人を殺すのは間違っている。そう、お母さんが殺されたあの頃からずっと思い続けてきた。
「俺が絶対に正す、お母さんを殺した奴らを……」
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