ゼロから始める無双チャンバラ
彼女に引っ張られるがままに行くと、高い棟につく。
彼女は俺を引っ張って棟内の「大学自治会体育局」と書かれた表示の部屋に連れていく。
中に入ると、いかにも役人でもやってそうなインテリ眼鏡がいた
「ハアハアすいません、遅れて。連れてきましたハアハア。だから、廃部にするなんて言わないでください」
彼女は、息切れしながら必死に言葉を繋ぐ
「だって、そうだろう」
眼鏡は言う
「君たちスポーツチャンバラ部は、この体育局にとって何ら益をもたらしてない。大会成績はここ10年なし。おまけに近年では部員が減り続け、現在10人あまりしかいない。しかもそのうち実質的に活動しているのは何人いるのやら。体育局局長として廃部の判断は何ら間違ってなかろう。」
「でも、局長仰りましたよね、部員を1人でも連れてくれば考えてやるって」
えっ!?
聞いてない。
俺いつこの部に入ることになったの?
しかし、話は俺を置いてけぼりにする
「ああ言ったとも。"考えてやる"とね」
「えっ!?」
「君、名前は何と言うのかな?」
局長とやらは俺に視線を合わせて問う
「いっ、伊切田と言います」
「ほう、ではこうしよう。これから僕と君でチャンバラで勝負をする。もし伊切田くんが勝利すれば廃部の件は無しにしよう。ただ、もし僕が勝ったら潔くのれんは畳んでもらうよ」
「そんな、そんなのあんまりです!」
女の子は声を上げる
「チャンバラをやったことのない人にいきなりチャンバラをやらせて、上手くいくわけないじゃないですか」
「おっと、チャンバラ未経験者と言う点では僕も一緒ではないかな。まあ、初対面同士では運動能力がモノを言うがね。さて、5階の道場が空いてるからそこに来たまえ。それでは先に失礼するよ」
※
「ごめんない」
棟内の階段を登りながら彼女は謝る
「いったい全体どうなってるのかは、なんとなく分かったけど、それよりも僕が入部するというのはちょっと急展開すぎやしませんかね」
「本当にすいません。こんなことになってしまい」
「いやいや、君が謝ることじゃないよ。勝負をふっかけてきたのはあちら側なのは自明の断りだし」
「入部の件については、勝手な申し出ですいませんが籍だけうちの部に置いてもらえませんか?もちろん、今後私たちの部活動には一切参加しなくても構いませんので。勝負に関しても棄権してもらって構いません。あなたが私たちの部のために戦ういわれなんてありませんから、、、」
「でも、断ったらこの部はゴミ箱に入っちゃうんでしょ?いいの、それで」
「それは、、、それは私がなんとか局長を説得します」
「でも、君が説得するよりもあの局長さんを倒した方が話が早いのは自明の断りでしょ?まあ、何かの縁だし人命救助ならぬ部命救助でもしちゃおうかな、なんちゃって」
「ありがとうございます。でも、お気持ちだけで十分です。局長は、大学一のスポーツマン。サッカー、バスケ、野球など20種にも及ぶ競技を経験しそのどれも一流。同じ初心者でも訳が違うのです。いくらあなたが剣道経験者だからといって、、、」
「おっと、僕を見くびらないでもらいたい。僕も局長に及ばないくらいの肩書きはあるからね」
「そーなんですか?」
彼女の目は不安そうである
だからこそ僕は
「そーなんですよ。大勢の新入生の中から僕を選び取るくらいの君の目利きにかなうくらいのね」
やれやれ、大学生活開始早々初戦局長級とは
中々波乱と万象の幕開けだ