【4】攫われてしまいました
どうしてこうなった!?
本日2回目の疑問に答えてくれる人はいない・・・
今、フェリーナがいるのは煤汚れた窓のない広い部屋・・・地下室だろうか?
光が差し込まないが、うすらぼんやりな明かりが所々灯されている。
その中には10人くらいの男女の子供が押し込まれていた。
子供達の顔は、恐怖、怯え、疲労、無気力がまざりあった表情をしていた
そのなかにフェリーナも先ほど乱雑に放り入れられた。そのときの痛みで目が覚めたが投げ入れらときにぶつけて肩が痛むが今はそれどころじゃない!
ここどこ!
さっきまでとはまったく違う場所!!
それに、このまわりの雰囲気は・・・
わたくし!誘拐されたのよね!!!
答えとしてはそれしかない
遡る事暫し前、お城を抜け出して2時間と経っていないときにはまだフェリーナは満足気ににこにこして目的のものを手にしていた
カラフルな移動式ワゴンの屋台には揚げた芋や串に刺さったお肉、香ばしいソースを絡めた麺をパンに挟んだもの、一口サイズに切った果物、飴を絡めたお菓子
懐かしい庶民的な食べ物たち
「うふっ、やっぱりこの粗雑なソースの味はくせになるぅ」
お忍び姿に着替えたフェリーナは、まずは現世で初の庶民の味ホットドックでおなかを満たしてご満悦にしていた。
「さて、次は・・・」
時間はたっぷりとはいかないが目の前の王都中央公園で遊ぶことはできる
前世とあわせても初めての王都の市中なのだからあまり冒険をしすぎるのもいけない
そう思いながら、公園に向うと音楽が風にのって微かに聞こえてきた。そちらに顔を向けると芝生広場に人だかりができていたのを目にする
なにかしら?
わくわくとその人だかりに寄っていくとヴァイオリンを踊りながら弾いている2人の青年がいた。
手習いの練習にしては上手すぎるし、旅の演奏家かな?
演奏は陽気な庶民に親しまれている曲だった。
フェリーナは小さな子供で、高い人垣が厚くもっとよく聞きたいのにとうろうろするが近づくことができない
「お嬢ちゃん、もっと聞きたいのかい?」
一人の青年に声をかけられた
声をかけた青年は、楽器を弾いている青年たちとお揃いの服を着ていた。
「よかったら、抱っこしてあげよう」
「・・・っひゃ!」
考えていて答えをしていない中、いきなり脇に手を差し込まれて肩車をされてしまった。
「僕たちは旅をしながら音楽を聞いてもらっているんだよ」
やっぱり、お仲間さんでしたか。
「・・・ありがとうございます」
ちょっと恥ずかしくはあったけど肩車をしてもらうことで音楽がよく聞こえた
更に、前のほうでは陽気な音楽に合わせて数人が思い思いに踊っていた
小さな子供が主だがみんな陽気な音楽とその音に合わせて踊る子供たちに釘付けになっていた。
フェリーナは人垣の後ろで演奏を夢中になって聞いていた
だから、気がつかなかった
いきなり布が口にあてがわれ、
そして声を上げる間もなく目を閉じ、くたっと体から力が抜け、
フェリーナの頭から帽子がぽとっと芝生の上に落ちた
それを後ろからきた男が支えて肩車をしている青年と顔をあわせた
「世話になったな」
「いえいえ、かわいいお嬢さんですね」
「かわいい娘だよ。ありがとう、このまま連れて行くよ」
「それはよかった」
まるで男の子供のような会話がされる
2人の会話の後、男は意識のないフェリーナを抱え足早に広場を後にする
その直ぐ後、音楽を奏でていた青年たちも広場を後にした
◇
あの公園から記憶がない・・・
陽気な音楽と合わせて踊る子供たちの楽しそうな姿を夢中で眺めていたのに・・・
見知らぬ青年に持ち上げられたときはびっくりしたが、演奏している青年のお友達というので警戒を緩めてしまった
後ろから口に布があてがわれて甘い香りを吸い込んだまでは覚えているがその後は、いきなりの放り込まれたときの痛みだった
ここにいるのは恐らく・・・いや同じ様に攫われた子供で間違いがないだろう
「あの!わたし、えーっと、・・・リーナと言います!」
一先ずはご挨拶と思って名乗って見ましたが、
「「「「「・・・・・・」」」」」
誰も何も言ってくれない不安に他の子どもたちを見るがほとんどが力なく座り込み俯いてこちらを見てくれない
声を出したときはこちらをちらりとうかがってはいたがすぐに俯いてしまっていた
詳しい状況が分からないし誰も話しかけてくれないなんて・・・
フェリーナはその場に膝を抱え座り込んでしまった
もう・・・どうして、もっと考えなかったのだろう・・・
さすがに前世の記憶があるとはいってもエマが暮らしたのは喉かな田舎。
村は誰がどこに住み、どこに行っていつ帰ってくるかがすぐわかる小さな村だったし、町だってこの王都に比べたらなにもない平穏な町だった
だから、こんな拐かしなんて初めてだし対処法はわからない
まさか誘拐なんてそんなの・・・私におこるなんて・・・
いや、フェリーナのまわりは常に両親、兄達、国の重臣たち、城の使用人にまで心配はされていた
こんなに可愛らしいお姫様は、お城から外に出したらいけない。
気を付けないと拐われてしまう
と・・・
いま、後悔しても遅い
なぜ、フェリーナをお城から外にださなかったか
フェリーナは、エマのように平民ではない
フェリーナは、このブルンベルヘンの愛されたお姫様なのだ
しかも、400年ぶりの王女
ただの平民だった前とは違う
あぁ、しかもお城を抜け出したことは誰も知らない
フェリーナが拐われたなんて、誰が気づくだろうか・・・
捜索はされるだろうが、今はまだかくれんぼしているくらいにしか思われていないかもしれない・・・
冷静になればなるほど今の状況からの脱する策が浮かばない・・・
もう既にここに来てからどれくらいの時間が経っただろうか・・・
じわりと目に涙がたまっていくのを感じるが必死にこらえて隅のほうに目をやる
「・・・っえ?」
隅にはよく似た兄妹らしき2人がいたが男の子のほうがすこしぐったりしていた
流れそうな涙をグイっと手で拭って2人のもとへ近づいてみる
フェリーナよりも少し年上の男の子と女の子は2人とも日に焼けた褐色の肌に金茶の髪を肩のながさで切りそろえられていて女の子に男の子が力なく寄りかかっていた。
見るからにブルンベルヘンの民でない異国の様相
2人の顔は殴られた跡がはっきりと頬にあった
特に男の子のほうが酷く瞼が腫れていた
「・・・大丈夫?」
静かに女の子のほうに声をかけると女の子はびくっと見てわかるほど肩を震わせた
その女の子の動きによって男の子が身じろぎをしてうっすら目を開け女の子を見た後、こちらを見た
女の子はフェリーナの顔を見て固まってしまっている
「大丈夫?」
今度は男の子のほうを見て声をかけて・・・
男の子は、腫れた顔をこちらに向けゆっくりうなずいて見せた
その目は腫れぼったく痛々しかった。
「そう。でも、お顔の傷が痛々しいわ。手当はできないのかしら・・・」
そっと、その顔に手を寄せればびくっとして後ろに身を引かれて睨まれてしまった
「ごめんなさい・・・触られるのは嫌・・・ですよね」
努めて優しく言ってみたが男の子はもうフェリーナのほうを見てもくれなかった
それでも痛々しい顔は瞼が切れて血が乾いて張り付き目が開かないようだし、頬は色が変わるほど腫上っていた
せめて冷たい水と手拭いが欲しい・・・
この地下らしい部屋は結構な広さがある。その中で各々子供たちは壁側によってしゃがみこんだりしているのだ
よく見ると唯一の入り口らしい扉の横に水桶が置いてあった。
入口の水桶のほうへ足を進めた
あと少しで水桶のところでその近くにいる一人の女の子の前を通った時・・・
「ちょっと!あなたどこへいくつもりよ!!」
劈くような声が響いた
読んで下さりありがとうございます。
遅々としてストーリーの進行が思ったより進みません
今週中には次を投稿できればと思っています
クーラーなくてキツイですが頑張ります