【1】仲良くしませんか?
ブルンベルヘンのある大陸には4つの国があった
東にクライネフ国
北にエーデルワイズ国
南にスハノフ国
西にブルンベルヘン国
それとは別に大陸中央に窪んだ広大な黒い土地があり、そこにはかつて国があり大陸を我が物にしようとして200年前に強大な黒魔術を使って失敗したため滅びた国があった。ここは窪みの国と呼ばれとても人が住める状態でない。
瓦礫と化した城を中心に草木生えない何もない地中に黒く窪んだ土地が広がっている
今の4国は力関係は均衡をたもっている
窪みの国のことを教訓に概ね友好的関係をもっている
窪みの国が滅んでから4国の王家に姫は産まれていない
この大陸にはかつて精霊と妖精が多くいた
しかし、黒魔術に精霊と精霊と妖精に愛された人間を生贄にしたという。
それ以降精霊は、この大陸で姿は少なくなり、精霊と妖精の愛し子はいない
精霊と妖精に愛されたかつての人間のは王家直系の姫君だった・・・
◇
200年ぶりに誕生したブルンベルヘンの王女フェリーナは、両親と兄弟の愛を受けて素直で愛らしい美少女に成長していた
5歳になったフェリーナは艶やかな黒髪に長い睫に縁取られたくりっとした金の瞳は、蜂蜜色と言われていた。
頬はいつも薔薇色で小さくぷくっとした唇はいつも微笑みを浮かべていた
フェリーナ5歳の誕生日には国中だけでなく周辺国の王族、貴族たちからも贈り物が届いた。
面会の申し出も沢山あったが、フェリーナのマナーがまだ行き届いていないのでと国王のラウレンスは断り続けている
そんなフェリーナは、王城の際奥にある王家の内宮、プライベート空間でほとんどすごしている
フェリーナのために庭園の奥にフェリーナ専用の庭園と温室を作り、更には庭園奥の小高い丘に円形の白亜のガセボまで建てた
お散歩や庭遊びはいつもこの庭園で兄たちが遊んで、本が読みたくなれば優しいお母様が時間を見つけて読んでくれる。
政務に疲れた父王がたまにこのガセボでフェリーナを膝に乗せて休憩していることもあった
・・・・・・愛されている実感すごくあるわ
フェリーナには、平民で質素倹約に努めて暮らしてきたエマとしての記憶があるので我侭に強請ったりしていないが
この庭園や温室などは3歳を過ぎたあたりからプライベート空間より外に出たがったために作られたものだった。
絵本で見たことのない花を指差して見てみたいから植物園に行きたいと言えば、数日待たずに庭園や温室に植えてあった
街で流行りのお菓子は何かと聞けば翌日のおやつででてくるし、
珍しい鳥を見たいなぁと呟けば、南の国より取り寄せた
ちょっと呟いただけで他国から取り寄せられたときには思わず引いてしまった
あの鮮やかな色の鳥さんはぴーちゃんと名づけて専属飼育員を雇って温室で飼っています
さすが、王族だなぁ
もしもフェリーナが世界すべてが欲しいといえばやりそうな気がする・・・
・
・
・
・・・絶対に言いませんけど!!!
考えるだけも恐ろしい
ふぅ
思わず溜息をついて虚ろな目で目の前で繰り広げられている状況を見ます
そうです、現実逃避してました
すいません
説明をしますと
麗しの4人の兄たちが今日もフェリーナの庭園でフェリーナを囲んでお茶会をしていました
フェリーナも最近やっと大人と同じく紅茶を解禁されました。
この前までは、蜂蜜入りのミルクしか飲ませてもらえず随分子供扱いされたものです。
エマは貴族様の屋敷でおいしい紅茶の入れ方を習ってから好きになったのになぁ
できたら、お花の香りのする紅茶がいいなぁ
あぁ、話が逸れましたね
目の前にはさっきまで私と話をしようと方々から話かけらていましたが私の一言で黙り込んでしまいました件の兄様たちがいます
薄々気がついてはいましたが・・・
切っ掛けは些細なことでした
最初はお父様もお母様もいて7人で楽しく和やかにお茶をしていました
ちなみにお父様がいるときはお父様のお膝がフェリーナの定位置です
お父様がお兄様方に近況を聞いたり、お兄様方がお父様からの雑談を聞いていました。
そのうち、お父様の従者がきてお父様もお母様も席を外したとたんに4人によるフェリーナ奪い合いが始まったのです。
ええ、いつものことですよ
でも、いい加減やめて欲しくって、ちょっと温室のぴーちゃん迎えに行きますから4人でここで待っててくださいって言って離れたんですよ
でも、忘れ物したから直ぐに引き返しました
近くまで戻ってあれ?って思いました
植え込みより小さい私は兄様たちから見えないようでしたが話し声ひとつしないので不審に思って屈みこんで暫らく伺っていました
・・・
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
どうしよぉ
4人が別々のほうに顔を向けたまま誰も話をしていません
嘘でしょう!
私(エマ)ならかわいい弟と話が尽きませんでしたよ!!
弟も私に聞いて欲しいことが沢山あるのか調理中でも纏わり付いて、お布団に入ってからも眠るまでずっとお話していましたよ
4人の兄たちもフェリーナには沢山お話してくれますよ
ガセボには円形に合わせて半円のベンチが作られています
中央から右側に座って、無表情で紅茶を優雅に飲んでますエルベルト兄様は18歳で伸ばした金褐色の髪を後ろで束ねて大人な色気があります。すでに王太子として政務にあたってお忙しいのに時間を見つけては私の相手をして下さいます
いつか忙しいのですからきちんと休憩をして下さいと言えばフェリーナに癒されてるから大丈夫と言われます。ちなみにこれは父様にもいわれました。よく似た親子です
とても穏やかな方で声を荒げるところは見たことがないです。でも多分王太子ですから感情のコントロールに長けていらっしゃるのでしょう。いつか爆発しそうですが・・・
中左側にはエル兄様との少し空間を開けで腕を組んで目を閉じて座っています、二番のディルク兄様は16歳でお母様によくにた顔立ちをしており、黒髪にグレーの瞳の美しく人柄も優しく素晴らしい方です。ただ、噂ではとても毒舌家と侍女さんたちが言ってました。私は言われたことがないので信じてませんが・・・
今は学生であられますが入学当時から前科目満点で学年1位をずっととっています
しかも卒業後は騎士団に入るとのことで剣の腕も同世代の騎士様でも他の追随許さないとか
正に文武両道の王子様なのです
容姿も4人の兄たちのなかで私と同じく黒髪で母様に似ていて私と並んでいる絵を描きたいとこの間、宮廷絵師さんにお願いされました。
エル兄様側、右端でさっきまで私に進めてくださっていた本を見ています、三番目のカルヴァン兄様は典型的な文系インテリさんです
金褐色の髪は肩口で切りそろえられていて本を読むのに邪魔になったのか右耳にかけています
今は13歳ですが、10歳から国の重要文書の管理を任されています
古文書まで解読できる凄い方なのです
大陸歴史を4歳で理解習得してから古文書や魔術書、普通は子供が解読不可能な書物を解読、現文書に訳するなどできる神童と言われるとてもすごい兄様なんです
でも、本人にはそんな自覚はないようでして好きなだけ本が読めて説明したら褒められてだけとのことです。カル兄様のお勧め下さる本はどれもおもしろいです
ディル兄様側左端にはつまらなそうに後ろを向いて庭園を見ています四番目のバルテル兄様12歳です
短く刈られた金褐色の髪にグレーの瞳をしていてまだ子供らしさが残ってますがお父様によく似てます
まだ、貴族学校入学前なので一番フェリーナと遊んでくれます
庭園で追いかけっ子したり、ボール遊び、多分恥ずかしいはずなのにお花で花輪を作って頭にのせても笑って付き合ってくださる優しいバル兄様なのに、今は笑顔がなくて不機嫌に見えます
他の兄様に比べてまだ子供のようでしてフェリーナに一番寄り添ってくださいます。
そんな兄様たちの様子ですが
誰も口を利かないのです
あれ?
そういえば兄様達は、私に話しかけてくるけどお互いに話してたかしら?
記憶にない
…ないということは
じーっと見てたからか、ディル兄様が
開けた目とばちっと合いました。
目があったときはビックリしていましたがふわっと柔らかく微笑むと立ち上がって此方に歩いて来られます
「ディルどこに行くんだ」
いきなり立ち上がったディル兄様にエル兄様は声を掛けますがその声には振り返らずにフェリーナのいる茂みの前に来ると腕を伸ばして抱き上げられました。
「かくれんぼしてたのかい?」
ディル兄様と目を合わせる位置に抱き上げられて優しく微笑んでガセボに戻り腰を掛けられます
そのままディル兄様のお膝の上にのせられてしまいました
茂みに隠れていたのを見つかってから覗き見をはしたないと固まってしまってディル兄様の一連の流れがスマートすぎて、目があったとこから私は思考が止まってしまいました
「フェリーナぴーちゃんを迎えにいったんじゃないのか?」
「一人で行って寂しくなったのなら一緒にいこう!」
「温室のお散歩してもいいなぁ」
「かくれんぼがいいならしようか?」
「……」
さっきまでの沈黙が嘘みたいです
けたたましいまでの喧しさで
私はびっくりですよ
とりあえず今、私が言いたいのは
ぴーちゃんでもおさんぽでも、かくれんぼでもなく
「お兄様方、わたくしがいないときはお互いにお話していますか?」
です。
もう1話投稿します