秋空のくも ~おつまみホラー~
秋空が一番危ないそうだ。
見上げた空にかかる蜘蛛の巣、そのうちのいくつかは、本物ではないらしい。
空の割れ目がそう見えるのだという。
雲母のようなものがキラキラとこぼれ落ちてきたらもういけない。すぐにその場から離れるべきだ、と。
「どうして離れないといけないのさ?」
「あれは引っ張るからな。」
それは怖い。
「だがとても綺麗なんだ。」
とも言い添えた。
「蜘蛛の巣ではないと言ったが、あれも蜘蛛なのかもしれないな。」
糸で引っ張るからな、義足の伯父はそうひとりごち、公園のベンチからゆっくりと立ち上がった。
あまり冷やしすぎると、失くした右足が痛むのだそうだ。
伯父の隣を歩きながら、空を仰がずにはいられなかった。
見たいような見たくないような……。
ふと横を見ると、伯父も空を見つめていた。