アンスタシアファンタジー
2185年現在、この世界では大規模FDMMORPG『アンスタシアファンタジー』というゲームが大流行していた。
通称アンファタと呼ばれるそのゲームは仮想現実と言われ、無限の自由度がテーマとされたゲームだった。
その自由度とは、レベル無制限、細かすぎるパラメーター、比率的に地球の15倍の広さのオープンワールド、不可侵領域の撤廃、スキルやアイテムの自由生産…という今までのゲームの常識を崩し、その上、ゲーム内で恋愛や仕事が出来てしまうというようなもの。
その世界にのめり込んでしまう若者はもちろん、年配者までのめり込んでいった。
このお話はその世界で最強のプレイヤーの話である。
小鳥遊優は現実世界では何も出来ない引きこもりであった。
そんな彼はRPGの世界に憧れた。モンスターと戦い、レベルを上げるだけで、強く…そして賢くなるそんな世界に憧れていた。
「現実に経験値があれば、俺が世界最強なのにな。」
彼は今日も仮想世界でレベル上げの効率を考えていた。彼のこの世界での仕事は『情報屋』。モンスターの弱点、巨大ギルドの制作したダンジョンの攻略法、どこかのマッドサイエンティストが産み出したキメラの見た目や戦闘情報などなどの仮想現実の情報を売ってお金を稼いでいる。ちなみに、アンファタ内のお金は電子マネーとして現実世界で使えるため、彼はそれで生活をやりくりしている。
そんな彼の数ある情報商品の中でも高く売れるのは『レベリング情報』だった。
アンファタはフルダイブ環境であるため、五感は使えるし、データ関連の仕事はいくらでもある。鍛えたスキルで新しいプログラムを作成し売ったり、料亭を開いて料理を売ったり…他にも単純に闘技大会に出たり、ギャンブルをしたりと、いくらでも稼ぐアテがある。
しかし、どれをするにもレベルを上げないといけない。
その理由は三つ。一つ目は消費者がレベルが低いものより高いものを欲しがるため。二つ目はモンスターを倒さないとスキルポイントが手に入らないため。三つ目はいい素材やデータは強いモンスターが落とすため。
この三つだ。
そのため、効率の良いレベリング情報は高く売れるというわけだ。
彼はそれを理由に今現在、命を賭けていた。
理由は一年ぶりの新イベントにあった。
先程説明した通り、アンファタは自由なゲームだ。自由すぎると言っても過言ではない。そのため、プレイヤーが作ったイベントであれば幾らでもある。だが、今回のイベントは運営側の正規イベントだった。
彼はイベント自体に興味をそそられたわけではなく、正規新ポップモンスターに興味を持っていた。
なんと、上手くレベリング効率化出来れば従来の3倍の速さでレベル上げができるようになるのだ。高値で売れると確信していた。
その効率化の途中、彼の人生は大きく変わっていった…