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ホワイトチョコ手渡しロボット(アプリ坊主外伝2)

作者: 蚊取TENGO

西暦20XX年。3月某日。池袋の風景を彩るコスプレAIロボット達は、朝早くから今日この日とばかりに営業に勤しむ


「お嬢様。よろしかったらおひとつどうぞ♪」


長身でスラッとした男性型AI執事ロボット『H315 エムイケ』


『わぁ!ありがとう!』


道行く女性達に営業を掛ける。


「おかえりなさいませ、お嬢様♪」


彼の成績はバツグンであった



たった一粒のチョコを手渡す為だけに莫大なエネルギーを費やし、狭い路地を右往左往する彼に異変が起きたのは、それからしばらく経ってからの事であった



「ちょっとちょっとキミ!何やってんの!」


エムイケが大声で叫ぶ


『・・・私?』


ネコ耳と黒いロンゲにフリルのスカート。AI搭載型メイドロボ『V214 アキ』が反応する。彼女はホームグラウンドの秋葉原を離れて営業活動をしているばかりか、チョコを『女性に手渡す』という失態まで犯していた。

ここまで発達したロボットであれば、人目をはばかり機械語でやりとりをする事もできたであろうが、この時代におけるAI同士の会話は反乱を招くとして基本、人語をベースとして発信されなければいけない。


『何って、チョコ配ってるんだけど?』

『観てわからない?』


いけしゃあしゃあと返答するアキ


「わからねぇよ!ちょっとキミこっち来なさい・・ぬっ!むっ!」


手を取ってエスコートしようとするがパシパシとブロックされ渋々と店内に案内する


「それで?一体全体どうしたっていうの?」


早口でまくしたてる彼を


『(ストップ)』


アキがジェスチャーで静止するが


「まさかキミ、「本体(ガワ) を間違えた」とか言い出すんじゃないだろうね」


おかまいなしに質問攻めだ。要するに『本来ならば男の体で来るところを間違えて女の体で来たんだろ?』と先にオチを予測したのだ。だが


『違うよ』


アキが否定する。続けて彼女は


『あなたからチョコを貰う為にわざと間違いを起こしたのよ』


こう返答した


「・・・・」

「・・・・・・」

「・・・。。」


どの表情を作ってよいのか解らない。どう接したらよいかと自問自答を繰り返すうちにエムイケの思考が停止し、フリーズする。


『だって私が 池袋(ここ)に男の外見で応援に来たとするでしょ?』

『そうしたら、中身(プログラム)はどうあれ、見た目は男性になってしまう』

『・・・もう、聞こえないか・・』


アキは止まったまま微動だにしない彼に近づくと


『早いのはあなたも同じでしょ・・』


カゴの中身の無料配布品をひとつだけ取り出し


『来年はコレ・・解決するのかなぁ・・』


店を静かに出て


『(いつになったら私達は結ばれるんだろう・・)』

『(それとも・・ AI(わたしたち)にとっては、相手をフリーズさせることが・・・)』


人間には見えない色が池袋に舞い降りる。ホタルのように飛び交い、無機質に消え去って行く様は形を変えた雪のよう。

そのなにかのカケラは来年こそは「彼女に手渡される」に違いない




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