1話
初投稿にして処女作です。
拙いところばかりかと思いますがどうぞよろしく。
静かな夜だった。
今日も高校の授業を終え、友人と遊んで少しの勉強をする。
近衛修二のいつも通りの1日であった。両親は出かけているが、修二の家ではよくあることなので充分に日常の範囲内である。
ただいつもと違ったのは、普段はやかましい妹がやけに静かだったことか。
妹の恋来は本来かなり騒がしい女の子だ。
いちいちリアクションは大きいし暇があれば喋る。暇がなくても喋る。喜怒哀楽の表現が大きくて、特に怒らせるとその後が非常にめんどくさい。
以前誤って恋来のデザートを食べてしまった時などは一週間も口をきかなかった。
その時は周りに倦怠期だ離婚だと騒がれたが、それはうちの兄妹とは関係ない話だと信じている。
その妹に今日はお節介を焼かれることも遊びに付き合わされることもなかったので修二としては万々歳であるのだが、妹の様子を見ていると静かにしてるというよりは何かが気になって何も手につかない状態のようにも見えた。
夕飯の時もそわそわと落ち着かない様子でいたのは、マナーにうるさい妹にしては珍しいことだった。
修二は平穏が好きである。面倒事や非日常といったものは修二の敵であり最も避けるべきものであった。
そんな修二にとって妹が静かなのは歓迎すべきことであったが、反面落ち着きのない様子は嫌な予感を抱かせた。
面倒事の予感である。
修二の勘はかなりよく当たる。面倒事を避けるのに修二は自身の勘を何よりも大事にしていた。
その勘が面倒事の未来を告げているとなれば、修二も対応をとらなければならない。
では具体的にどうするか。
普段なら面倒事の気配からは離れるのが一番なのだが今回は妹が元凶である。否が応でも巻き込まれるかもしれない。
「さっさと解決してしまおう」
避けられないならば早いうちに芽を詰む。
修二は楽をするためなら努力を惜しまない質である。
そんなわけでやって来た妹の部屋の前。
妹から話を聞こうと思ってきたのだが中から話し声が聞こえてくる。どうやら通話中のようだ。
女の電話は長い。それをよく知る修二が後でまた出直そうと背を向けた瞬間だった。妹の部屋から絶叫が響き渡る。
街も寝静まる深夜にその叫び声はよく響いた。
妹が大声を上げるなど珍しい。
いや、普段からやかましい妹ではあるがここまでの大声をあげることなどない。
なにかよほどのことがあったと見て、修二はあわてて恋来の部屋の前まで戻った。
焦燥に駆られながらノブを回して開いた扉の向こう側には―――
きょとんとした顔の妹と、
その手から溢れ出る金色の光。
状況を飲み込めずにいる間にも金色の光は強さを増していく。
やがて修二の視界はその金色に塗りつぶされていった。
更新は不定期です。