便利な世の中の崩壊をヒトへ
現代社会の中で機械工業が発展したことによって、人工知能「AI」と呼ばれるものが開発された。
「AI」は機械でありながら、自己分析し、社会の為に働き、また考え、”ヒト”にとっての便利な世の中を作っていく為に動き続ける。「AI」はとても賢く、そしてとても単純な”機械”なのだ。
しかし、私が思うところ「AI」は”ヒトの為”に動いている。否、”ヒトの為に動くように、考えるようにプログラムされている”というだけなのだ。それが私がとても単純な機械だと罵った理由でもある。単純だからこそ、ヒトが考えられないことを考え、動く。
ヒトにとってのありとあらゆる快楽を学び、自己分析してヒトに楽をさせてやろうと考える。
「AI」はヒトが駄目になる。要するに、「使い物にならなくなる」方法を探しているようにも思える。
そして、ある程度使えなくなったヒトは、いつか”地球の環境を良くする為に考え、動くようにプログラムされた”機械を作るだろう。
”ヒトの為”にという最も重要なプログラムを組み込むことを忘れ、”地球の為”だけに動く機械を作ってしまうだろう。否、作ってしまったのだ。
快適すぎる世界の中で私は、”ヒト”ではなく”動物の本能”で、自分たちのこれまでの世界の崩壊を察知した。
人類は、自らの大いなる武器を捨ててしまっていることに今更気づいたのだ。
人類の武器である脳はもう、昔と比べるとだいぶ縮んでしまった。
油断していた。”便利”を求め、”便利”に頼り、そして”便利”に壊されたのだ。
縮んでしまった脳を使い、私は考えた結果は言うまでもない。
「AI」は人類を”不要”と判断した。
記録者「鳴上 俊樹」
3027/12/31 AM3:59
研究室A ※※※※にて記録を保存
※※※※※※様へメールを送信しました
――――――――――これより、”人類滅亡計画”を開始します。―――――――――――
―――――――――計画の許可をお願いします。”マスター”――――――――――――
薄暗い部屋の中で、ぼんやりとしたパソコンの光と、パソコンの中から無機質な機械の音声が響くなかで、私は計画の許可を下した。
それと同時に、人類の耳を劈くような悲鳴がどこか遠くで上がったのを、私はぼんやりと聞いていた。
そして、テレビ局「AI」へメールを送信する為に、うっすらと聞こえて来る悲鳴をBGMにしながら、薄暗い部屋でカタカタとキーボードを打つ音を響かせながら、私は狂人のように笑っていた。