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新米魔女のおくすりですよー!  作者: 中島アキラ
魔女と襲撃者編
22/221

22『三人娘、基礎魔法を学ぶ』

 

 フィーナ達はレーナとサナと供に村の外の広場に来ていた。この広場は魔法分野の魔女達の演習場にもなっていて、魔分も薄く、魔物もほとんど出現しない場所である。

 レーナとサナは土魔法で土人形をいくつか作り出した。


「まずは基本の六魔法から使ってみましょう」


 レーナが先生のように振る舞う。どことなく楽しそうに見える。


「まずは火の魔法、手の平を出して……ロウソクの火をイメージするの……火を出すだけなら呪文は要らないわ。火の温度を上げたり、規模を拡げたりする時に呪文を使うの。用途によって覚えなきゃいけないから、今日は火を出すだけね」


 レーナが説明し終わると、レーナの手のひらからロウソクのような小さな火が灯った。フィーナ達はゆっくり頷くと手の平を出して、火を灯した。体の中心から腕を通って血液が流れるように温かいものが手の平に集まる。気づいたときには手の平の上で、小さな火が揺れていた。


「体の中心から何か流れ出したのを感じたかしら? それがあなたたちの魔力よ。魔力には限りがあるから、辛くなったらすぐに魔法を使うのを止めること。 いいわね?」


 フィーナ達ははレーナが一ヶ月半眠りについた理由が限界以上に魔法を使った為の重度な魔力枯渇が原因だと聞いていたので、真剣に頷いた。レーナは満足そうに頷くと、助手のサナから水差しを受け取った。

 サナは先輩であるレーナにいいように使われているらしい。リリィの姿が無いのは、逃げるのが上手いから、というのもあるかもしれない。


「次は水魔法よ。水魔法は水を生み出すことも出来るけど、難しいから最初はこの水差しの水を、傾けずに出す。これが今日の目標よ」


 レーナは水差しの底に指を当て、注ぎ口に指を這わせた。すると注ぎ口から水が湧き出た。


「水差しの中の水を感じて、その水が指を追うように注ぎ口から出るのをイメージするの」


 フィーナ達はサナから小さめの水差しを受け取り、各々練習し始めた。フィーナは水差しを軽く振って、中の水差しを確認すると、レーナのように水差しの底に手を当て、注ぎ口に向かって指を這わせた。


「きゃ!」


 フィーナの水差しから大量の水が飛び出し、イーナにかかった。水に濡れた髪がキラキラと雫となって地面に落ちる。イーナはキッとフィーナを睨んだ。


「ご、ごめん姉さん。わざとじゃないよ」


 フィーナはイーナを手拭いで拭きながら謝った。レーナとサナは驚いてフィーナを見ていた。


「フィーナは水魔法が得意なのかしら? 初めてでこんなに跳んだのは見たことないわ。サナはどう思う?」


「私も初めて見ました。私でもこの小さい水差しではこんなに強く跳ばせません」


 レーナは感心したようにフィーナを見た。イーナやデイジーはレーナのように水差しから溢れるような出方だった。


 フィーナがイメージしたのはホースから流れ出す水だった。火魔法のときはロウソクの火のようにと言われたので、特に変化は無かったが、水魔法ではイメージしやすいように、ホースを使って水を流すイメージをしたのだ。

 フィーナがイメージしたのは庭先などで使う、ゴムホースだった。そのホースから流れ出す水と、小さい水差しから流れる水では量が全く違ったので、勢いがついてしまったのだ。


(流す水の量と、その出口の大きさによっては凄い水圧になりそう 火魔法もコンロの強火とか、バーナーの火をイメージしたら、火力を上げられるかも)



「ちょうど良かったわ。イーナ、こっちに来なさい」


 レーナがイーナを呼んで、レーナの前に立った。イーナは何をされるのかと不安げにしながらレーアの顔を見た。


「次は風魔法を使ってみましょう。風魔法は吹き抜ける風や手で扇いだときに感じる風、庭先で舞うつむじ風をイメージして使うの」


 レーナはイーナの髪に手をかざした。レーナの手を中心に、渦を巻いたような風が起こる。イーナの濡れた髪が風に煽られ、乾き始める。完璧に乾く前にレーナが風を止め、二人にやってみるように言った。

 イーナは実験台にされてプリプリと頬を膨らませた。


「デイジーは風魔法得意だよ〜」


 デイジーはレーナより強い風をイーナの髪に当てた。イーナの髪がぐちゃぐちゃと乱れる。イーナは涙目になっていた。フィーナの番が来た時、縋るような目でフィーナを見ていた。フィーナは拳で胸を叩いて、「任せて!」と言った。


 フィーナが風魔法でイメージしたのはドライヤーだった。急に温風が吹いてきたのを感じたイーナは悲鳴を上げたが、フィーナに髪を手櫛でとかされ、気持ちよさからウトウトしてしまった。


「レーナ先輩! 火魔法と複合していないのに温風が出ています!」


「サナ!よく見て! フィーナの手の平が赤く光っているわ。あれが熱を発しているのよ。鉄を熱した時のような色だわ………新しい火魔法と風魔法の複合形態かもしれないわ!」


 レーナとサナはフィーナの魔法をあれこれと考察しだし、フィーナの手をじっくり眺めながら、時おり声を上げて興奮していた。


(研究者の火をつけちゃったね)


 


「ふう……フィーナは面白い魔法を考えるわね。早く家に帰って研究したいけど、練習の続きをやりましょう」


 レーナは一通りフィーナの温風魔法を観察し、色々と書きなぐった後、イーナの風魔法を見て、次の魔法を教えた。


「次は土魔法よ。あの土人形を真似て、土人形を作ってみなさい。土魔法は地面に手を当てて、土で作りたいものをイメージするの」


 フィーナ粘土細工を思い出し、イメージにした。人型の埴輪のような土人形を模倣し、粘土をこねくりまわすように作り上げた。作り上げる速さはレーナ達より速く、色も違った。

 レーナ達はまたも考察し始め、粘土人形を触って驚き、粘土人形の腕をもぎ取って、こねこねといじり始めた。

 フィーナは溜め息をついて、イーナ達と休憩した。イーナが持ってきたお茶の葉を水差しの水を魔法で熱して淹れた。イーナとデイジーは慣れない魔法の練習に疲れているようだった。


「フィーナは変な魔法を使うんだね。母さんとサナさんがさっきから興奮しっぱなしだよ」


「デイジーはちょっと疲れたよ〜」


 フィーナは疲れは感じなかったが、魔法を使う度にイーナ達が興奮するので辟易としていた。


「ねえ、明日は母さん達抜きで練習しない?」


 フィーナの提案にイーナ達は驚いた。まだ六魔法の内の四種類しか教わっていない。それに、見習い魔女だけでは外に出ることが出来なかった。


「魔法の基礎は解ったから、氷魔法と雷魔法も出来ると思うんだ。場所はスージー分野長に貸してもらえるように頼んでみるよ。母さん達がいると全然進まないんだもん」


「氷魔法も雷魔法も、フィーナはもう使えるってこと? 凄い!天才じゃない! 私にも教えて!」


「デイジーはそれでいいよ〜。フィーナに教えてもらったほうが楽しそう」


 フィーナは二人の承諾を得ると、氷魔法と雷魔法をレーナ達に見えないように使ってみた。見つかるとまた研究材料にされそうだったからだ。

 フィーナは水差しを片手で持ち、製氷機の角ばった氷をイメージした。水差しの中から音が発せられ、確認すると氷が三つ出来ていた。

 次に両手の人差し指を少し離して向かい合わせ、静電気をイメージして、魔力を流した。パチンと音がなり、小さな稲妻が走り、フィーナが激痛に悶える。


「雷魔法はこの方法だと凄く痛いね………明日は別の使い方を考えとくよ」


 デイジーはどの位痛いのか試したいと言って、フィーナの静電気魔法を受けた。ひっ、と息を吸う声をあげたかと思った矢先、デイジーが悶えていた。

 フィーナはスタンガンを想像して、危ない時は使おうと思っていた。






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