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新米魔女のおくすりですよー!  作者: 中島アキラ
魔女と襲撃者編
16/221

16『狙われるデメトリアの研究』

「ギルドマスター、初めて逢ったけど、可愛い人だったね」


「本人に言ったらむくれちゃうよ?」


「そうかも。でも可愛いかったなあ」


 可愛い物好きなイーナにはデメトリアを気に入ったようだ。フィーナは若返りの研究のほうに興味があったが。



 家に帰ると早速買い漁った食材でイーナが料理を始めた。フィーナとデイジーは研究室の片付けをした。



 イーナの料理を堪能しつつ、三人は今後について話し合いをした。



「とりあえず私とフィーナのお金は共有して、アーニーおばさんに管理してもらおう。デイジーもおばさんに管理してもらったら?」


「そうする〜」


「今後の依頼についてはどうする? 今までよりは楽だと思うけど」


「慣れるためにもやらせてもらおうよ。私、魔法も習ってみたいんだ」


 デイジーもこくこくと頷いた。サナが魔物を仕留めた魔法矢に興味を惹かれたようだ。


「魔法かぁ〜。私はあんまり才能ないけど、フィーナならありそうだよね。デイジーも簡単な魔法なら使えるし、魔法分野の分野長にお願いしてみよっか?」


「その前にリリィ分野長に話とかないと」


「そうだね! 明日はリリィ分野長に話して、その後魔法分野の分野長に話しに行こう」



 次の日、三人は魔術ギルドに向かった。分野長の部屋はベッドスペースもあり、他の部屋より広いため、リリィはほとんどこの部屋で過ごすそうだ。リリィの部屋に入ると、書類の山が減り、リリィの頭が見えるほどになっていた。

 リリィはフィーナ達を目にすると、軽く伸びをして、にへらと笑った。


「おはよ〜、昨日ぶりだね〜。三人とも働き者で助かるよ〜」


 リリィは立ち上がるとお茶を入れ始めた。イーナがそれを見て手伝う。イーナはやはり手際がいい。リリィは手持ち無沙汰になって、椅子に腰掛けた。


「まあ座って〜。テーブルの上の物は端に寄せていいよ〜」


 フィーナ達はテーブルの上の本や書類を端に寄せた。イーナが空いたスペースにお茶と菓子を置く。菓子はクッキーのようなものだったが、甘さはほとんど無く、蜂蜜をかけて食べるようだ。


「それで〜、今日はどうしたの〜? 依頼はまだきてないよね〜?」



 リリィがお茶を手に尋ねる。フィーナ達もお茶を一口飲んだ。


「魔法を習ってみたいんです」


「魔法〜? 魔法分野に転属するの〜?」


「いえ、錬金術分野で学びたい事は母さんの研究資料で間に合ってしまったので、新しい素材を集めるためにも魔法を習っておきたいなと思いまして」


「そうね〜、レーナ先輩の研究資料があるなら、それを引き継いでくれれば何も問題ないよ〜」


 リリィはほっと胸を撫で下ろした。フィーナ達は分野長の依頼をこなせる程優秀なため、魔法分野に転属などされては困るのだ。


「新しい素材が手に入れば新しい薬を研究出来ますし、魔物からの自衛手段になります」


「そうだね〜、レーナ先輩は魔法も凄かったから、何か研究を残してると思うんだよね〜。魔法分野の分野長に聞いてみるといいよ〜。話は通しておく〜」


「ありがとうございます!」


 フィーナ達は軽く世間話をした後、リリィの部屋を出た。リリィは魔法分野の分野長には今日話すので、明日また改めて来て欲しいと言った。


 次の日、二階の魔法分野エリアへ向かった。魔法分野は魔術ギルドだけでなく、演習施設も所有している。規模はかなり大きく、一番人気だけあって、たくさんの魔女がいた。


「ここが分野長の部屋だね。失礼しまーす」


 イーナが扉のドアノブを開く。中はリリィの部屋と同じ作りだが、リリィの部屋より片付いており、秘書と思われる魔女が事務机に座っていた。


「いらっしゃい。魔法分野分野長のスージーだ。よろしく」


 初老の女性が手を差し出す。フィーナはスージーと握手すると、自分たちの自己紹介をした。


「話はリリィ君から聞いているよ。デメトリア姉さんからも君達をよろしく頼むと言われている」


「デメトリア姉さん?」


「ああ、ギルドマスターのデメトリアは私の姉だよ。 あの見た目だがね」


 スージーは苦笑すると、秘書に手を振って合図した。秘書は頷くと、お茶の用意を始めた。今回はイーナは手伝わないようだ。

 スージーは白髪の混じった茶髪で、目はデメトリアと同じくクリクリとしていた。一見厳しそうな人に見えたが、言葉の柔らかさや、穏やかな微笑みから優しい人なのだとフィーナは感じた。


「姉さんはあの姿だけど、人生は楽しそうにやってるからね。私は何も言うことはないが―――」


 スージーが秘書から貰ったお茶を啜る。


「だがあの若返りは寿命が延びるわけではないんだ。実験では寿命はそのままに、見た目だけ若返ることが判明したらしい。魂は死神が持っていくという噂だから、不老不死なんて、神でもなければ無理なんだろう。それでも若返るってのは女性の夢だからね。姉さんの実験はかなり期待されているよ。私は若返りに興味はないが」


 スージーは意味深く言葉を濁した。


「……実は姉さんの研究を他国の魔女が狙っているんだ。特に隣国のレイマン王国の魔女はかなり攻撃的と聞く。王国も魔女達を支援しているらしい。レイマン王国の魔女が姉さんに危害を加えるんじゃないかと気が気でないよ」


「私達の王国は支援してくれないんですか?」


 フィーナがもっともな事を聞く。フィーナ達の国はメルクオール王国といって、この世界では中堅規模の国らしい。レイマン王国はメルクオールより大きいが、騎士職が強く、女性が台頭する魔女達はそれほど有用視されていなかった。しかしメルクオール王国の魔女村で若返り研究を成功させたと聞き、それを詳しく知るために、自国の魔女村であるレリエートを支援し始めたという。

 レリエートの魔女達も若返りについては興味があり、レンツの魔女達とは仲が悪かったため、支援を受け入れ、メルクオール王国に侵入しようと模索しているらしい。レリエートが国境を挟んでレンツと比較的近い位置にあることにも起因しているらしい。


「メルクオール王国は他国の間者からレンツを守るので精一杯のようだ。もともと戦闘が得意な国ではないんだ。それが少人数の精鋭の侵入となると、経験が少なくてどうにもならないらしい」


 レンツの魔術ギルドは王都の魔術ギルドとも連絡をとっているらしく、情報はよく入ってくるようだ。しかし、現状レンツは村を起こしてまだ百年ほどなので、出来ることが少ないという。


「君達のように優秀な魔女がさらに力をつけてくれるなら喜んで協力するよ。姉さんを守ってあげてくれ」


「はい!」


 イーナが一際大きく返事をした。



 しかしその夜、レンツの村には一人の魔女が侵入していたのだった。



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