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新米魔女のおくすりですよー!  作者: 中島アキラ
魔女と襲撃者編
13/221

13『依頼』

 フィーナ達が作業を続けているとデイジーが帰ってきた。三人分の革袋を開き、中の薬草を出していく。

 イーナとデイジーは本に載っていた、扱いやすい薬草を採っていたようだが、フィーナは目につく限り、様々な薬草を採っていた。並べられた薬草を手元の資料と照らし合わせながら、効能や使い方を確認していく。


「これはリーンネーブルっていうんだ。効能は―――葉の部分が整腸作用があって、茎の部分が外用の消炎剤になる。ふむふむ。おお茎からアロエみたいな粘液が出てる。これが消炎剤に使えるんだね。根の部分は毒性があるんだ。なるほどなるほど」


 フィーナは前世に無かった薬草を中心に確認し、イーナは食用になるハーブに興味があるのか、料理のレシピとハーブの組み合わせを、ああでもないこうでもないと試行錯誤していた。デイジーは何やら薬草では無く、角のような物を手に、資料を眉を寄せながら読んでいる。


「デイジー、その角はどうしたの?」


「サナから貰ったー」


 どうやらシャープホーンディアーという魔物の角らしい。レーナは魔物の素材も研究していたようで、シャープホーンディアーの角は粉末状にすることで、健胃薬として使えると資料に残されていた。



「サナが薬に出来たら欲しいって言ってたー」


 狩人は森の中に長く入るため、森で食料を調達するのが普通なのだが、シャープホーンディアーの角の薬『鋭角薬』は狩人にとって、必需品なのだそうだ。レーナが眠りについてからは、村全体で薬不足となっており、切り詰めて使っているそうで、分野長のリリィが不足した薬を調合して、なんとか保たせているらしい。


「分野長、すごく疲れてそうだったもんね」


「フィーナは分野長の姿を見たの?」


「そういえば二人は分野長の手しか見てないね。綺麗な人だったけど、今にも倒れそうな顔してたよ」



 リリィにはリリィの研究があるはずだが、分野長として断るわけにはいかなかったのだろう。重たい身の上話をされたフィーナにとってはリリィがとても可哀想に感じた。


「出来れば手伝ってあげたいね」


「村の中での依頼なら、見習いでも受けられるよ」


「サナも助けて欲しいって言ってた」


「じゃあ一度ギルドに行ってみよっか」



 三人は用意を済ませ、魔術ギルドに向かった。



 リリィは部屋にいるようで、さらに増えた書類の山のむこうで手を振っていた。


「レーナ先輩の研究資料あった〜?」


「はい、それも膨大な数でした」


「さすがレーナ先輩だね〜。絶対残してあると思ってたよ〜」


「それでですね分野長、依頼を受けたいのですが」


「んん〜? 外受けの依頼はダメだよ〜?」


「いいえ、分野長から依頼してもらいたいんです」


 リリィはゆっくりと立ち上がると、フィーナ達の元へとフラフラと近づいた。


「もしかして薬の作製を引き受けてくれる〜?」


「はい、資料を見て、これなら可能だと判断しました」


「くぅ〜…やっぱりレーナ先輩の娘さんだよ〜。それじゃあ魔術ギルド錬金術分野、分野長からの依頼〜。村で不足してる薬の作製と調合をお願い〜」


「はい、任せて下さい!」


「わ、私もお手伝いします!」


「デイジーも!」 


「頼むよ〜。これで少しは寝られるよ〜。これが不足してる薬品のリストね〜。採集に行く時はサナと一緒に行くこと〜」


「「「はい!」」」



 三人は直ぐ様フィーナの家に帰り、レーナの研究室で不足している薬品を確認した。狩人用の痺れ薬、害虫の駆除薬、魔物よけの芳香剤、消炎、鎮痛、健胃、整腸、抗菌等など、かなり酷いレベルで不足しているようだ。中には毒草から作る物もあった。フィーナは難易度別に分け、必要な素材を書き出した。

 イーナには見分けが簡単で、採集も楽だが量が多くいるものを、デイジーには魔物の素材を書き出して渡した。


 次の日、フィーナ達はサナと供に採集場所へ向かった。採集場所に向かう途中でも必要な素材が得られたので、前より時間がかかってしまった。

 サナはフィーナ達が採集している間に魔物を狩り、素材をデイジーに渡していた。


「君達が受けてくれて助かったよ。リリィはすぐ無理をするからね。心配だったんだ」


「他の錬金術分野の方には依頼しなかったんですか?」


「したけど断られたんだ。錬金術分野は人気もないし、人も少ない。リリィが率先して新人を教育しなかったから、怠け者が多くてね。石を金に変える研究やら雑草から万能薬を作る研究やら………不毛な研究で忙しいらしい」


 サナは大きく溜息をついた。


「そもそも錬金術は薬草の調合、調整、精製、栽培、検証する分野なんだ。それなのに何故か訳の分からない実験をする奴が多くてね。彼女らのせいで錬金術分野の人気も更に落ちている」


(錬金術って名前が悪いんじゃないのかな……?)


「レーナ先輩がいた頃は凄い人気だったんたけど、どうしてこうなったのか―――」


 サナは肩を竦めて、わからない、と首を振った。背中の弓がカチャカチャと音をたてる。


(多分分野長が放ったらかしにしたせいだろうなあ)



 フィーナ達は大量の素材を袋に詰め、サナは近くの狩人小屋から荷車持ってきて、狩った魔物を載せていった。


(あとはこれを薬にするだけだ)


 フィーナは大量の素材を薬にするべく、魔術ギルドの角部屋へと向かった。素材が多すぎて、レーナの研究室に置けなさそうだったからだ。

 四階に持って行くのが面倒だったが、受付で一度預かり扱いにすることで、角部屋に届けてもらった。


 部屋の四分の一が素材で埋まっていたが、フィーナは湧き上がるやる気に腕を捲くった。イーナもデイジーもやる気十分だ。


「よーし、どんどん作っちゃっおう!作成方法は渡した資料通りにね!」


「フィーナが凄いやる気だから、こっちまでやる気になっちゃうよ」


「魔物の素材はデイジーが担当だかんね!」


 三人は一斉に薬の作製に取り掛かった。



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