プロポーズ
今日、晋也からプロポーズされた。
突然の事でビックリして、言葉に出来ず暫く立ち尽くしていた。私には隆史と言う彼氏がいた。
しかし、隆史は最近冷たい。
トンネル工事とダムの建設を必死に頑張っているのは分かるが私の事は、ほったらかしにして夢中なっている。
当然、二人の時間も少なくなっていた時、晋也が現れた。
「ねぇ、愛ちゃん今日お昼一緒にどう?」
ちょっと照れ臭そうにハニカんだ笑顔に私は思わずOKしてしまった。
晋也は真面目で優しい人だ。これまでにも何度かランチに誘われた事があったが、その時は優子と伸子と約束をしていて結局断っていた。晋也にとっては決死の覚悟で三度目の誘いだったのだろう。声が若干震えていた事に私は気がついた。
「いいよ!晋也君、一緒にランチ行きましょ!」
私は横目でチラリと隆史の方を見た。
隆史はそんな私に気が付きもせず、仲間達と今日の出来事や明日の予定などについて楽しそうに話している。
「今日の失敗は俺が悪い。トンネルの場合はまだ修復出来る。この調子で行けば明日は大丈夫だろう。がんばろうぜ!ダムの場合水を流してからじゃ失敗は許されねぇ…」
熱く集る隆史に私はため息をついた。
「行こう!!晋也君」これ見よがしに隆史に向けて言っているのに、やっぱり隆史は気がつかない。
それ所か隆史はふざけて遊んでいるのか、仲間達と輪になっている。
「気合だ。気合だ。気合いだ。気合だ。気合いだー!!」
アニマル何とかの真似だ。男達は笑いあっている。
「楽しそうだね…」
横にいた晋也が囁いた。
「何よ、あれバッカみたい!!ただの子供じゃない」私はそう言って晋也の腕を掴んだ。
「早く行きましょう。」
引っ張る様にして晋也を連れて行き二人で隆史に見える範囲でわざとらしく、お昼を取った。
それから私と晋也は急接近した。
その後も隆史のトンネル工事は続いていた。
私の事は一切、気にしていない様だった。
「隆史…帰るね?」寂しそうに小さく心で呟きながら横目でチラリと隆史を見た。
隆史は私の視線に気がついた様で「ん?」と言う表情でこちらを見ていた。
けれど、私は何も言わず鞄を手にした。一人で帰ろう。そう思った。
「愛子?」隆史の声が聞こえたが私はわざと無視した。
一人で考えたかった。
晋也と一緒に食事をしたり遊んだりしているのも楽しい。隆史が私をもう愛していないのだとしたら、晋也の気持ちを受け入れてプロポーズをOKするべきなのか?
「女はね、愛するよりも愛される方が幸せになれるのよ!」
昨日やっていたテレビドラマのヒロインの言葉を思い出した。そうかもしれない…。
愛しても愛しても報われないのはとても辛い。ならば愛してくれる人を好きになれば幸せになれるのだろうか…帰り道、自分の部屋、お風呂の中、ひたすら考えた。
「どうしたの?」母親の顔が目の前にある事に気が付きビクリとした。
「元気ないけど何かあった?」
母親の優しい言葉に思わず泣きたくなった。
「あのね、あの…」
言いかけたその時、母親が大きな声で叫んだ。
「あっ!いけない!ケチャップ忘れた!!」
母は素早くエプロンを外すとバタバタと走り財布を手にとった。
「一緒に行く?」
ニッコリ笑ってそう言った母に私は無言で首を左右に振った。
「じゃあ、ちょっと行ってくるわ!」
バタンと勢いよくドアが閉まり私は一人になった。
私はゆっくり化粧台の前に立つ。引き出しにある口紅を取り出した。
「私だって、もてるんだから…」
ピンク色の口紅を薄く引いた。チークもアイシャドーもマスカラもつけた。
「うん!イケてる。」
私はお気に入りのワンピースに着替えた。
今から隆史に会いに行こう!!そして隆史の想いを聞こう。晋也にプロポーズされてる事、けれどもやっぱり私は隆史が好きだと言う事をきちんと伝えよう!そう思った。
「ただいま〜」
母が帰って来てしまった。今から出かけて来ると行っても、もうすぐ夕飯だから明日にしなさいと言われるのがオチだ。
私はベットに倒れこむ様の形で寝転んだ。もちろん化粧がつかないように仰向けだ。
「…ハァ〜」大きなため息をついた。
どうすればいい?母の目を盗んで出かけてしまうか…しかしキッチンにいる母を欺く事は出来ない。キッチンを通らなければ玄関には行けないのだ。
どうしよう?どうしたら?……考え過ぎたせいかいつの間にか眠ってしまった様だ。
母親の叫ぶ様な声で目が覚めた。
「愛子!!何やってるの!!お母さんの化粧品勝手に使っちゃダメでしょ!!んも〜早く顔洗ってらっしゃい!」
困った様な微笑ましいと言った様な顔でママは私を見た。
「子供扱いしないでよ。愛子ね、晋ちゃんからプロポーズされたんだから!」
「はいはい」ママは嫌がる私の手を取って洗面所に連れて行った。
「ただいま、参上!」
パパの声がした。仕事から帰って来た!私はママの手を振りほどいてパパの所へ全力疾走した。
「何だ?どうした?その顔は?」パパは優しく私の頭を撫でた。
「愛子ね、晋ちゃんにプロポーズされたの。結婚しようって!」
パパとママは二人で顔を見つめ笑いながら同じ台詞を口にした。
「あぁ〜それで、お化粧?」
けれどその後、ママだけは不思議な顔で続けた。
「あれ?でも愛子、隆史君が好きじゃなかった?」
私は頬っぺたを膨らませまがら言った。
「だって…隆史君はお砂場で小山のトンネルばっかり作ってて愛子と全然遊んでくれないんだもん。だから隆史君なんて…好きじゃないもん。」
怒られた様に下を向く愛子にパパは言った。
「本当に大好きだ、って心から思える人じゃないとパパは結婚なんて許さないぞ!」
ママは微笑みながらキッチンへ歩いて行った。
「はいはい。ご飯にしましょうね!今日は愛子の好きなオムライス!早く顔と手洗って」
ママの言葉に私とパパは手をあげてニッコリと笑ったって応えた。
「はーい!」
すいません。前回と同じ様な作品です。
今回は少し無理があったかな…すぐに気が付かれた方も多いかもしれませんね…ただ、こう言う文章ならではのどんでん返し好きなんです。