エピローグ
死闘の末にどうにか怪物に打ち勝ったキミは、まず部屋の奥のレバーを上げて、帰路を封鎖していた鉄格子を上げる。
また、死んだ黒ローブの男の懐を漁ると、鍵束を発見したので、それを拝借する。
そして、ひとつ前の祭壇のある部屋に戻ると、祭壇の上で横たわっている少女を抱え上げる。
さらに洞窟を回って、牢屋に囚われていた村娘や子どもたちを、拝借した鍵束を使って救出すると、この邪悪に満ちた洞窟をあとにした。
暗雲に覆われていた空は、いつの間にかすっきりと晴れ渡っていた。
キミがこの死霊使いの洞窟を訪れたのは、近隣の村の住人から依頼を受けたためだった。
その依頼内容とは、村の年若い娘や子どもたちが、近所の洞窟に住みついた邪悪な魔術師によって、次々とさらわれている、さらわれた者たちを救い出し、邪悪な魔術師を退治してほしい──というものだった。
幾ばくかの成功報酬の約束と引き換えに、キミは村人たちからの依頼を引き受けたのである。
救助した村娘や子どもたちを村まで届けると、村の入り口で、矢も盾もたまらず飛び出してきた親たちが我が子を抱き締め、涙ながらの再会を果たした。
そしてキミに対し、心からの感謝と賛辞の言葉を述べ、深々と頭を下げた。
さらに村人たちは、依頼の報酬を渡すだけでは足らず、感謝の気持ちを込めて宴を開きたいと言ってきた。
キミは約束の報酬さえもらえればそれでいいと固辞するが、パワフルな村人たちに押しやられ、あれよあれよと宴の主賓に迎え入れられてしまう。
そうして、村の中心で焚かれた炎の周りで、飲めや踊れやの宴に暮れる村人たちに囲まれたキミは、いつしか穏やかな気持ちになっていた。
日々、殺伐とした旅と戦いに明け暮れるキミだが、たまにはこういうのも悪くはないなと思った。
夜空を見上げれば、無数の星々が輝いている。
キミは、今日ばかりはこの穏やかな気持ちに身を任せようと決めながら、手に持ったジョッキのエール酒を、自分の喉へと流し込んだのであった。




