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METAL HEARTS  作者: 主神 西門
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ロスト



リンクが撃破された瞬間、ファーティマは垂直に上昇を開始した。比較的低いビルの屋上に着地し、更に高いビルに沿って上昇する。それを追うロストだったが、彼の機体は地上ほどの俊敏性を空中では発揮出来ないようだった。低いビルの屋上に到達した時には、ファーティマは既に遥か上へと昇っていた。その上昇するファーティマとすれ違う様に、ロストへと向けて舞い降りてくる黄金の機体が現れた。


ムーン「任せとけ」


その機影を確認したロストは、屋上から降下しながらチェーンガンを黄金の機体へと撃ち放つ。連なる弾丸をかわしながら、ムーンはビルの陰に身を潜めた。地上へと到達したロストはムーンが潜んでいるビルの裏へと素早く回り込む。チェーンガンのロックオン表示が赤く点滅した瞬間、ロストの画面の左上に謎のカウンターが現れた。


10……9……


ロストの機体は操作不能となっていた。


「こいつは……」


ビルの陰に待ち構えていたのは、先程の黄金の機体ではなく、山吹色の機体だった。


8……7……


メタ•ナイト「よう!大将!」


6……5……4……


ロスト「誰だ?お前?」


3……2……


……1……


上空から降下したムーンのブレードがロストの機体を貫こうとした時、一本の赤いブレードがそれを受け止めた。そして、ほぼ同時に2本目の赤いブレードが黄金の機体の腕を斬り落としていた。


ロスト「この機体にスタン効果は通用しない。逆に利用させてもらった」


利用させてもらった?わざと動けないふりをして、相手が接近するのを待っていたと言うのか?


メタ•ナイト「やるねぇ。大将」


マシンガンを乱射しつつ、メタ•ナイトは天雷を後退させた。最大の武器でもあるスタンスキルが無効となった以上、通常兵器ではこの相手には勝てる気がしない。しかもフロート機体の足は早い。当然の様にロストの機体の追撃は凄まじく、既に目前に迫っていた。メタ•ナイトは武装をマシンガンからブレードへと切り替え、ロストの斬撃に備えた。


ロスト「逃がさんよ」


赤い閃光をメタ•ナイトの天雷がブレードで受け止める。その状態で両者が睨み合う。


ロスト「作戦としては良かったがな」


メタ•ナイト「そりゃ、どうも」


ロスト「相手が悪かった」


メタ•ナイト「同感だ」


ロスト「こっちへ来るか?」


メタ•ナイト「俺らに勝てたらな」


ロスト「では決まりだな」


メタ•ナイト「かもな」


その言葉と同時に、天から降り注いだの一筋の光がロストの機体の右腕を斬り落とした。


ロスト「天空のバイオリニストか」


メタ•ナイト「いちいちカッコつけんなよ」


天雷のマシンガンが弾丸の雨をロストの機体へと降り注ぐ。それを全身で浴びながらも尚、その機体はビルの谷間の闇へと疾走して行く。


メタ•ナイト「見た目より頑丈だな」


ファーティマ「深追いしない方がいいよ」


メタ•ナイト「わかってる。あいつは得体が知れない」


ファーティマ「他の援護に回るよ」


メタ•ナイト「はいはい」


ファーティマの位置をレーダーで追いながら、メタ•ナイトの天雷もビルの陰へとその姿を消して行った。



「流石に強いな」


黒いソファーに深く腰を掛け、壁一面を覆うモニターを眺めながら、男は神山 旧子に語りかけた。


「猛者と言うより、曲者揃いですから」


同じくモニターを黙って見つめていた旧子が無表情に答えた。


「ところで、オタマジャクシの尻尾の謎掛けの答えはわかったかね?」


「いえ、まだわかりません」


「まぁ、子供の戯言みたいなものだ。VOLTEのパスワードにしても、しっかりとした根拠もない。我々への陽動のつもりだろうが、そんな子供騙しには乗らんよ」


「仮に陽動だとしても、その裏には別の思惑があると言うことになります。油断は禁物です」


「油断?最初から勝負は決まっている。これは油断ではない。余裕なんだよ」


そう言うと、男は咥えた煙草の煙を宙へとゆっくりと吐き出した。


「お客様は神様なんて言う時代は終わってる。我々が神なんだよ」


「神……ですか?……」


「君は理解しているだろう?」


「信仰の自由と言う言葉もありますが」


「選ぶか、選ばれるか。どちらにせよ、私には好都合だがね」


「長谷川専務は神になるおつもりですか?」


「とんでもない。私はただのプレイヤーに過ぎない。ビジネスのね」


神山 旧子の冷ややかな問いに、長谷川と呼ばれた男はその痩せた顔に僅かな笑みを浮かべて答えた。


2人の見つめるモニターの画面が、別の場所へと切り替わった。中央に映るふたつの機体。それぞれに部隊長を務めていた両雄が肩を並べている。


スレンダー「まさかあんたと共闘することになるとはね」


ムタ中将「そのまさかと言うのは、いい意味でかな?それとも悪い意味でかな?」


スレンダー「どっちもだ」


ムタ中将「良くも悪くもお互い巻き込まれたって事だ」


スレンダー「ベルフェの言う事を全て信じている訳じゃないがな」


ムタ中将「確かに、俄かには信じ難い事ばかりではあるが」


スレンダー「もう、とっくに誰かがマスコミや警察にチクっててもよさそうなもんだがな」


ムタ中将「資本主義ってことだ。マスコミだってボランティア団体じゃない。広告やCMで食ってる」


スレンダー「華神様さまって事か」


ムタ中将「いつまでも隠しきれないだろうがね」


スレンダー「その前にケリ付けろって事ね」


ムタ中将「そしてもうひとつ。これは単純に結城vs華神って事ではないのかも知れんな」


スレンダー「聞きたくない。これ以上の面倒はごめんだ」


その2人の会話を見ていた神山 旧子の目が、冷たい光を放った。



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