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METAL HEARTS  作者: 主神 西門
3/93

対イリオス



遠くから聞こえて来る戦闘の音を聞きながら、謙介は敵部隊のメンバー表を開いた。


イリオス部隊。参戦しているのは5名中5名。全員参戦している。名前をタップすると機体が確認出来た。


最初に現れ、スレンダー隊長の「高機動型3番」と戦闘中なのは、エリスの「光の騎士」だ。ミットの「デスクローナ」の相手は、ジェインの「マグナス」。ムーンの「禁忌の月」と刃を交えているのが、AKARIの「アイアンナイト TYPE-634」になる。残るは2名はスナイパー系のファントムスネークが操る機体に迷彩が施された「惑兵」と、アマトウの操る「アルコォル」となる。


「うわっ!」


敵部隊の画面を閉じ、再び戦場へと切り替わった瞬間、謙介は思わず声を上げた。


目の前にアルコォルがいる!


小刻みな衝撃でストライカーの動きが封じられた。アルコォルが脚部に装備したオートマシンガンを連射しながら接近して来る。こいつは威力は連射されると、操作が鈍くなるらしい。


アルコォルが、その右腕のクロウを

振りかざした瞬間、ストライカーは

衝撃と共に右方向へと弾き飛ばされた。


何が起こったのかわからない。

アルコォルに視点を向けると、クロウごと右腕が斬り落とされている。


その前に立ちはだかるピンク色の機体。Cローズの「ティア•ラ」だ。おそらくティア•ラがタックルでストライカーを弾き飛ばしたのだろう。

謙介はライフルでアルコォルに追撃をかけた。アルコォルは再びオートマシンガンを連射しながら、今度は

かなりの速さで後退して行く。それを追うCローズのティア•ラ。


ストライカーはその場に留まり、ロックオン出来る限り、ライフルで狙撃を続け、ティア•ラを援護した。


ロックオンが出来なくなったのを確認し、ストライカーも移動を開始した。残るはファントムスネーク。その装備からして、この戦場のどこかから遠距離狙撃を仕掛けてくるはすだ。小刻みにブーストを繰り返しながら、ファントムスネークの影を捜す。しかし、さすがに戦場が広すぎて、こちらから見つける事は不可能に思えた。


謙介はストライカーを停止させた。

じっとその時を待つ。


遠くで、黄金の筋とふたつの青い筋が激しく動いているのが見える。ムーンとAKARIのブレードの光だろう。スレンダーのチェーンガンの音も聞こえて来る。謙介は不思議な興奮を感じていた。


ストライカーを停止させたまま、謙介は戦場を眺めていた。たまにロックオン表示が出た時のみ、ライフル射撃を行った。まず、命中する事はないのだが。


そして、その時は来た。


ストライカーが衝撃を受け、前方へと弾かれた。ファントムスネークの狙撃だ。ダメージカウンターが半分削られた。ファントムスネークは後方にいる。すぐさまストライカーを旋回させて、狙撃ポイントへとブーストダッシュさせた。


その姿は確認出来ないが、ロックオン表示が画面左へと移動する何者かの存在を伝えている。移動速度はそれ程でもない。何とか追いつけそうだと謙介は思った。微かに敵の機影が見えて来た。その小さな機体は動きを止めている。


狙撃される!反射的にライフルを撃ち、ストライカーを左へと回避させた。ライフルの弾道と交差するようにファントムスネークの放った弾丸が右サイドをすり抜けた。かなりの威力だ。もう一発食らったら完全に終わる。緊張と興奮が同時に押し寄せて来る。スマホを持つ手に汗が滲んでいるのがわかる。


しかし、威力が高い分リロード時間も長い。その僅かな時間に接近出来れば、あるいは勝機があるかもしれない。ファントムスネークへ向けて、謙介はストライカーのブースターを全開にした。


やがてロックオン表示の先に、迷彩柄の小型の機体が明瞭に姿を現した。その機体とは不釣り合いに思える巨大なレールガンを装備している。なるほど、あんなもので撃たれたら初期装備のストライカーの機体は2発が限度だろう。ライフルでは太刀打ち出来ない。ブレードが頼みの綱だ。


謙介はストライカーをファントムスネークの後方に回り込ませようと、再びブーストダッシュかけた。


「エリア外です」


画面上に赤い表示が現れた。それと同時にカウントダウンが始まった。

15秒以内にエリア内に戻らないと、戦線離脱とみなされる。


エリアの境界線でファントムスネークは待ち構えていたのか。謙介は慌てて戻ろうとしたが、先程のブーストダッシュによって、パワーが戻り切っていない。通常走行でエリアへと向かう。最短距離の先にはレールガンを構えるファントムスネークの機体がある。エリア内へ戻った一瞬で勝負が決まる。ブレードの一撃に全てを託し、謙介はストライカーを走らせた。


完全に見抜かれていた。

いや、これもファントムスネークの作戦だったのだろう。


エリアの境界線から惑兵が後退して行く。これでは、エリアに戻った瞬間にレールガンの餌食になるのは確定だ。しかし、カウントダウンがストライカーを追い詰める。もう、進むしかない。戦線離脱よりは、戦って敗れた方がいくらかマシだ。ブーストパワーが戻った。全開でエリアへと向かう。


残り3秒でエリア到達。

案の定、レールガンの弾丸がストライカーを襲う。この距離では避けようもない。ヤケクソでライフルの引き金を引いた。凄まじい衝撃がストライカーを襲う。


右腕撃破!使用出来ません。


何と言う幸運だろう。右腕のみの破壊判定になった。コアへの直撃は免れたのだ。


パワー全開でストライカーを突進させる。ファントムスネークの惑兵はレールガン以外の武装はショートブレードのみらしい。逃げもせず、そのショートブレードを構える惑兵へと向けて、謙介はブレードによる渾身の一撃を振り下ろした。


惑兵の左腕が宙を舞う。更に一撃を加えようとしたストライカーの目前に、レールガンの銃口が突き付けられた。その銃身が僅かに光を帯びている。


戦闘終了


黒くフェードアウトした画面に文字が浮かび上がった。戦闘時間の30分が経過したようだ。初部隊戦は制限時間に救われた形になった。


両部隊の名前の下のダメージカウンターの数字が回転を始める。

僅かの差で、イリオス部隊に軍杯が上がった。この差は、おそらく自分のものだろうと謙介は申し訳なく思った。


Cローズ「お疲れ〜♫」


部隊掲示板に早速書き込みがあった。


スレンダー「やっぱりカモにされたな、新人くん」


ミット「カモ対カラスなら良かったのに」


ムーン「AKARIが来るとは思わなかった」


ケンくん「弱くてすいません」


スレンダー「レーダーとブースターをランクアップしろ」


ミット「そして逃げまくれ」


確かにブースターは変えた方が良さそうだ。何気に外に目をやると、窓を伝う水滴に気が付いた。外はいつの間にか雨が降り出していた。その光景に、何故だかたまらない寂しさを謙介は感じて、スマホを握りしめた。



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