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METAL HEARTS  作者: 主神 西門
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結城と華神



ベルフェゴール「METAL HEARTSサービススタート時からのプレイヤーは知っているかと思うが、当初のMETAL HEARTS運営会社は結城産業だった。それまでもソーシャルゲームでヒット作を生み出していた結城産業だったが、その地位を確固たるものにしたのは、このMETAL HEARTSになる。」


そうなのか。謙介はそんな事は全く知らなかった。Kの誘いに乗って入り込んだだけで、人気のゲームかどうかまでは考えてもみなかった。


ベルフェゴール「そこに目を付けたのか、本当の理由はわからないが、その結城産業を買収したのが、華神グループであり、現在の運営はその子会社という事になる」


それがどうしたと言うのだろう。運営会社が何処であれ、プレイヤーとしてはゲームが続けられるなら問題ではないのではないか?謙介はそう思った。


ベルフェゴール「当初は友好的なM&A、つまりは結城産業の社員の雇用や経営内容は守られるはずだった。しかし、契約作成の間に秘密裏に華神グループは結城産業の株の過半数を取得し、事実上乗っ取ってしまった。緊急の株主総会において、社長以下、社員の殆んどは解雇されてしまった。」


大人の事情だな。高校生の謙介にとっては理解し難い世界の話しだった。


ベルフェゴール「そして今現在、華神グループはMETAL HEARTSを使って、自らの利益の為に反社会的な計画を実行しようとしている」


スレンダー「話しの途中にすまない。ここまでの経過は理解した。しかし、ここのメンバーの中に華神グループの人間もいるんじゃないか?」


ベルフェゴール「その点は心配ない。華神グループの本社サーバーをハッキングして、関係者は事前に把握してある」


ハッキング!映画やドラマの中の言葉が飛び出して来た事に、謙介は驚いていた。このベルフェゴールとは一体何者なのだろう。


ベルフェゴール「私はMETAL HEARTSが純粋に好きだ。ただそれだけではないが。いずれにせよ、このまま終わらせたくはない。その為の協力者を求めている。現在の協力者の1人を紹介しよう」


メタ•ナイト「協力者です。ハッカーやってま〜す!(・ω<)☆てへぺろ」


見たことあるプレイヤーだ。まさかこんなところにハッカーなんて人種がいたとは。ハッカーはもっと陰湿で自ら名乗らないものだと思っていた。それは、あくまで映画などのイメージだが。謙介は唖然とした。


ベルフェゴール「彼は華神グループに雇われているハッカーだが、彼にも思うところがあって、協力者として参加してもらっている」


何かとんでもない事に巻き込まれている。この部屋に招き入れられた者全てが感じていた。


仏喜羅坊「で?華神の狙いはなんや?」


ベルフェゴール「その前に、知っておいて欲しい事がある」


仏喜羅坊「なんや?勿体ぶらずに、はよ書け」


ミラージュ「仏喜羅坊、ちょっと黙れ」


仏喜羅坊「すまん」


ベルフェゴール「皆も混乱していると思う。申し訳ない。そして、更に混乱させてしまうかもしれないが、イリオス部隊の隊長、皆が閃姫と崇めているエリス。彼女は華神グループの令嬢だ」


その言葉に、参加者の多くに戦慄が走った。あの閃姫エリスが⁉︎新人の謙介でさえ知っているプレイヤー。何故だろう?裏切られたような気持ちが謙介の中に湧き上がって来た。

多分、それは謙介だけではなかったかもしれない。


ベルフェゴール「それを踏まえた上で、もう1人の協力者、いや……リーダーに相応しいかもしれない。その判断は皆に任せるが、紹介したい人がいる」


暫しの沈黙が部屋を包んだ。その沈黙はエリスの正体を知ってしまった事と、これから現れる人物への敬意だったのだろうか。謙介にとっては前者だったが。


悪鬼「初めまして。METAL HEARTSでは悪鬼の名前でプレイしていますが、私は結城産業の元取締役社長を務めていた、結城 大地と申します。今回、このような形でMETAL HEARTSを愛して下さる皆様にお会いする事になったのは、非常に残念に思います。しかし、嬉しくも思っている事も事実です。これ程、真剣にMETAL HEARTSを想って下さる方が集まって下さった事に感謝しております」


元社長!衝撃に次ぐ衝撃で、謙介は気持ちの整理をつける暇もなかった。


仏喜羅坊「感謝?アホ抜かせ!あんたが間抜けなせいで、こんな事になっとるのとちゃうんか⁉︎」


悪鬼「おっしゃる通りです。私が不甲斐ないばかりに、皆様にご迷惑をお掛けしてしまいました」


仏喜羅坊「遠回しな言い方すんなや!株主総会やってるのと違うんやで!腹割って話せや!」


殺伐とした空気が流れ始めた。しかし、仏喜羅坊を止める者はいない。ベルフェゴールでさえ、沈黙していた。おそらく、それは皆が感じていた事だったからだろう。


ケンくん「すいません。悪鬼さん、ひとつだけ質問していいですか?」


謙介はどうしても知っておきたかった事があって書き込んでしまった。。それはこの流れを断ち切ろうとか、そんな事ではなく、ただ純粋に知りたかった事だった。


悪鬼「何でしょうか?」


ケンくん「僕は高校生です。会社経営の難しい事はよくわかりません。だだ知りたいのは……



あなたはMETAL HEARTSが好きですか?」


その質問に、スマホを見ていた全員が呆気に取られた後に、笑顔になった。何と言う質問だろう。METAL HEARTSを作り出した人間に、METAL HEARTSが好きかなんて聞くとは。だが、その笑顔は嘲笑するものではなかった。単純かつ明瞭なもの。立場がどうとかではなく、好きか嫌いか。それだけの事。華神グループや結城産業の件以前の大前提。

この部屋に入った理由みたいなものだ。



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