絆
あれから俺とリジュは夕方頃にシェーラさんの家に戻った。
入り口にはキャスさんがいた。
『申し訳ありませんが長とユウ様がお話中です。
誰も通すなと言われてますので今夜は長とはお会いできません』
そういうとキャスさんはリジュをキッと睨んだ。
俺はリジュの前に立ち代りに答える。
『わかった、お互い、少し距離をおいたほうがいいね。
今夜は会うのはやめとくよ。
代りにリジュが戻ったことだけ伝えててもらえないかな?』
『わかりました、伝言は伝えます。
お夕食はのちほどお部屋にお持ちしますので部屋でお召し上がりください。』
そういうとシェーラさんがいた部屋にキャスさんは入っていった。
俺たちは説明された部屋に移動した。
部屋に入ると、じっちゃんとレティが待っていてくれた。
『よぉ、以外と早かったな』
『リジュさん、心配しましたよー』
マオ様、レティさんご迷惑おかけして申し訳ありません。
じっちゃんは立ち上がり、リジュの頭をポンポンとした。
『気にすんな、俺たちは家族だ。
いつでも頼りな』
次にレティはリジュに抱きついた。
『よかったです』
家族がお互いを大事にしてるのが嬉しかった。
俺はリジュとレティを2人して抱きしめた。
『じっちゃんの言う通りだ。
俺たちは家族だ。
だからいつでも甘えて、頼ってくれ』
『ありがとう、刃くん』
『はい、刃さん』
それから俺たちはキャスさんが用意してくれたご飯を食べて次の日を迎えた。
朝方、ばっちゃんが部屋に戻ってきた。
『おはよ刃、リジュちゃんの様子はどう?』
『ばっちゃん、おはよう。
うん、一応落ち着いたかな。
シェーラさんこそ大丈夫?』
『そうね、だいぶ動揺はしてたけど心配ないわ。
いろいろ、溜まってたのが爆発したみたいね。
今は落ち着いて寝てるわ。
一度、リジュちゃんとシェーラちゃんはとことん話し合った方がいいみたいね』
『ばっちゃんもそう思うか。
そうだよな、家族は仲良くしないとな』
そのあと、ばっちゃんからシェーラさんの考えや思い。
昨夜話していたことを聞いた。
『なるほどね、少しわかった気がする。
やっぱり2人は話し合わなきゃ。
ばっちゃん!俺にできることある?』
『そうね、リジュちゃんについててあげなさい。
こういう時にささえてあげるのが旦那よ。
さて、私も少し寝てくるわね』
そういうとばっちゃんは部屋に戻って眠ってしまった。
しばらくするとキャスさんが朝食の用意ができたからと呼びに来てくれた。
『そういえば、キャスさんはなんでこの家にいるんだ?』
『私は長の孫だからな、家族が同じ家にいてもなにもおかしくないだろ?』
さも当然という風におっしゃるキャスさん。
『・・・・は?』
今なんといった?シェーラさんの孫!?
『どうした?』
『いやいや、どうした?
じゃなくて初めて聞いたんですけど!!』
『ふむ、そうだったか?』
『はぁ、キャスさん的に昨日の件はどう思う?』
『リジュというやつが悪いに決まってるだろ?』
ちと、カチンとくる。
『それはなぜ?』
『長を殴っただろ?』
ふむ、どうもこの人は短絡的な人だな。
『ならほどね。でもさ、そこに至るまでの考えを踏まえての結論?』
『どういう意味だ?』
『要はお互いよくわからないうちに言い合いになったみたいなもんさ。
だから、俺は2人を話し合いさせて仲直りをさせたい。
だって2人とも家族なんだぜ?
仲良くした方がいいだろ?』
『私には関係ないことだ。
それに私にはそんなことにかまってる暇はない。
私には私のやることがある。』
昨日、シェーラさんと話した部屋の前まで行くとキャスさんは部屋に入らずどこかに行ってしまった。
部屋に入ると昨日は見てない男の子が食事の用意をしてくれていた。
うん、すごく手際がいい。。
『あ、すいません。もう少しで準備が終わりますのでどうぞ、お席でお待ちください』
そう言いながらも手元は止まらず着々と準備を進めていく。
『あの、私もお手伝いします。』
後ろからリジュがそういうとお茶の準備をし始めた。
『お客様にそんなことやらせれませんよ。』
『いえ、お気になさらないでください。
それに2人でやったほうが早く済むでしょ?』
『よろしいのですか?』
男の子は俺に聞いてきた。
『うん、君さえよければリジュにも手伝わせてくれないかな?
あっ、なんなら俺も手伝おうか?』
『刃くんは座っててください。』
『えーでも、3人でしたほうが早く終わるだろ?』
俺も手伝おうとするとリジュは却下した。
『3人でするほどの量はさすがにないよ。
それに刃くんはどかっと座っててほしいの』
さすがにそこまで言われたらしょうがないか。
おとなしく座っておく事にしよう。
リジュの言葉通り、準備はそれからすぐに終わった。
『あの、ありがとうございます。
助かりました。
えとお名前お聞きしてもよろしいですか?
あまりにも手際がいいんですね』
『リジュ・レインと言います。
一応、メイドをしてますので慣れてるんです。』
『リジュさんですか。
もしかして昨日、長を叩いた人ですか?
姉から聞いてます』
そういうとリジュの顔立ちが一瞬こわばった。
『あ、はい。
そうです。
昨日、
あなたたちの長を叩いたのは私です。ごめんなさい』
『いえいえ、僕に謝ってもしょうがないですよ。
謝るなら長にお願いします。
それに昨日聞いた話では一方的に長がまくしたてた感じですね。
だいぶ動揺してたのかな?
あっ、ごめんなさい。
まだ挨拶してなかったですね。
長の孫のキャロと言います。
姉というのはキャスのことです。』
え?こいつキャスの弟!?
それにしても、姉とは対称的に冷静な感じだな?
『えと、キャロ君。
それでもやっぱり家族が叩かれたのだからその家族には謝罪が必要だと思うんです。だからすいませんでした。』
キャロは納得したように頷いた。
『リジュさんは真面目なんですね。
わかりました。その謝罪受けました。』
そんな話をしてるとみんなが朝食を食べるため部屋に集まってきた。
長とばっちゃんが最後に部屋に入ってきた。
『あらあら、私たちが最後みたいね。
それじゃ座ってご飯にしましょうか』
リジュとシェーラさんは席を少し離して座った。
『あらー、美味しそうね。
それじゃいただきましょう』
ばっちゃんがそういうとみんなが食事をしだした。
食事はどれも美味しかった。
がいかんせん。
とても空気が微妙だ。
リジュはシェーラさんが部屋に入ってから緊張してるのがわかる。
シェーラさんはシェーラさんでどう話しかけていいのかこまねいているようだ。
先ほどからチラチラリジュの方を見てはご飯をガツガツと食べている。
はぁ、とりあえずなんとかしないとな、そう思っているとばっちゃんも同じことを考えていたみたいだ。
その時、飲もうと思っていたお茶を思い出したばっちゃんにアイコンタクトでお茶に注意を向ける。周りにばれない程度に。
感のいいばっちゃんは、気づいたみたいだ。
『シェーラちゃん、食べるのもいいけどお茶でも飲まないと喉を詰まらせるわよ』
さっと、お茶を取りやすい位置に移動させた。
『は、はい。お姉様』
お茶をとるとごくごく飲んだ。
『あっ、このお茶おいしい。
キャロ、お茶の葉を変えた?
今日 は一段と美味しいわ』
『いいえ、長。
それを入れたのはリジュさんですよ。
すごいですよね。普段使ってるお茶の葉をでここまで美味しくなるなんて』
『え!?あ、そ、そ、そうなの?
こ、こここのお茶あなたが?』
『は、はい。
私が入れました・・・あ、あの!!』
やっと話すきっかけが生まれたその時。
『お、長!大変です。
エルフの森に魔獣が!』
ぶち壊す事が起きてしまった。
 




