寒さと貧困との戦い2
寒さと貧困との戦い2
囲炉裏の中では、マキが燃え尽きて出来ている赤々としたオキ火「オキ」をかき集めて、めったに食べられない塩サケの切り身が塩の結晶を付けたまま長方形の足の付いた金網「ワタシ」の上でいい匂いをさせて焼かれているのです。雪下ろしを終えたばかりのおなかの空いた「ハラヘッタ」主にはこたえられない光景なのです。早々に雪と汗でぬれたワラふかぐつ「コンゴ」を、囲炉裏の上にある角材を格子に組んで出来た火棚「ヒダナ」の上に載せ炎の温かさで乾かすのです。
囲炉裏「ヨロバタ」の四方は家族の座る位置が決まっていて、座敷のある正面が「ショウザ」で主が座り、炊事場「ナガシバ」の近い方に座るのが主婦の座で「カカザ」、「ショウザ」の右隣りが来客用「キャクザ」で子供達はその間に座るのです。
囲炉裏では盛んにパチパチと音を立てながら火は燃えているのですが、隙間だらけの建付けと高い天井の家は、燃える炎に向いている正面の体だけが熱くなるだけなのです。家全体が暖かくなる温度にはならず寒いのです。
囲炉裏は一日中大きなマキがトボトボと煙って燃えながら家じゅうを煙でまんえんさせ、人がいぶさせられるクン煙室の中に居るような状況なのです。主は煙い目をしょぼつかせて自在鍵「カギツケサン」に架かっている鉄瓶「テビショ」から急須「キビショ」にお湯を入れて渋茶をすすりながら、真冬の数少ない雪の晴れ間を待ってワラ仕事を続けるのです。主に作るのが、深い雪の中でも埋れずに歩ける「カンジキ」、一冬で何足も掃きつぶすワラふかぐつ「コンゴ」、ワラぐつ「オタテグツ」、雪が融けてから履くワラ草履「ワラゾウリ」、農作業に使うすべ縄、収穫物を入れる袋「カマス」などを作る雪降りの作業なのです。