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里山の子供たちの遊び「春~秋」9

里山の子供たちの遊び「春~秋」9


子供たちは里山のどこにも生えている竹を使って、いろいろな遊び道具を作る名人なのです。その代表的なひとつに竹馬があるのです。「竹馬遊び」は同じような「缶ぽっくり遊び」より足を乗せる位置が地面から高くて、しかも接地面が小さくてバランスを保ちにくく子供たちの技を要する遊びなのです。竹ヤブから握りしめられる適度の太さの竹を切ってきたものやら、収穫した稲を天日干しにする「はさがけ」に使う竹サオの先端部分を途中で切って用意をするのです。竹は自分の背丈以上の長さで二本そろえて切って、足を乗せる台の二枚の板を節の部分で挟んで受けになる支えの板と一緒に縄で固く縛ったら竹馬の完成なのです。初めて竹馬に乗る子供は台の位置を低くしてバランスを取りやすいように作り、慣れてくると段々に位置を高くするのです。乗り方にはいろいろとあるのですが、上達すると屋根のヒサシにとどくほどの高さで乗る者もいたり、片足を上げてケンケンをしたりする子供もいるのです。竹馬に乗って誰が一番に早いかかけっこの競争をすると、石にけつまずいて転んでしまいすり傷を負って痛い目にあうこともあるのです。自らのケガばかりでなく、広場で数人のグループを作り、距離をおいて二手に分かれた子供たちは対じする相手の正面から衝突して、竹馬から落としあいっこをする合戦をしてケガをすることもあるのです。しかし、何よりも竹馬の足場を大人の背丈ぐらいに高くして乗ると、びっくりするほど普段の景色が変わり新しい発見がいっぱいあって、少し大人になったような気分になるのです。夢中になって遊んでいると、足の親指と人さし指のあいだで竹を強く挟んでいるので、知らず知らずに付け根の皮膚がめくれて赤くなって血がにじみ痛くなると家に帰り「赤チン」をぬって治療の完了なのです。


庭先で子供たちは慣れた手つきで大人でも重いと感じるナタを使って、両腕を広げた長さに切った太い丸竹を縦に割るのです。ある程度の幅に割った竹は、張力が一番強くなる厚さまで平らに内側を削って弓を作るのです。弦には太くて丈夫なヒモや針金を片側の先端にくくり付けて、ある程度の反りが出るように張ったらもう一方の先端に固定するのです。矢はなるべく真っすぐで軽くて細い竹を使うのですが、曲がっている竹は囲炉裏の火でアブって真っすぐにしたら適当な長さに切るのです。弓で矢を飛ばす方法は、両腕で弓と弦をそれぞれ前後に引き離し保持しながら、弦に矢をかけるのです。矢とともにさらに弦を手で強く引いてから離すと、その弾性から得られた反発する力で矢を飛行させて、遠方の的や標的に当てるのです。自作の弓を持ち寄った子供たちは、広い野原で遠くへ飛ばしあいをしたり、家や納屋の板壁や土壁にチョークで書いた的に命中を競ったりするのです。時には、真っすぐ飛ばずに矢が意図のしないとんでもない方角に飛んでいって、子供にあたったりするので危険な遊びとして先生や親から何度も怒られ注意をされるのですが、男の子たちは懲りもせずに人の来ない神社や山に行き隠れて「弓矢遊び」をするのです。


青竹で作る水鉄砲作りは簡単なのです。筒の部分は直径四~五cmの竹を三十cmほどの長さにのこぎりで切って、筒の片側のふさがっているフシの部分にキリで小さな穴を開けるのです。次に、直径二~三cm位の竹を四十cmほどの長さに切り、筒の内側がいっぱいになる太さまでボロ布を細い針金できつく巻きつけると押し棒ができあがるのです。筒に押し棒を押し込んで水鉄砲の先を亜鉛製のバケツなどにくんだ水の中に入れて、押し棒を引くと筒に水が吸い込まれるのです。筒にたまった水を押し棒で一気に押し出すと、筒の先端に開けた小さな穴から水が勢いよく噴き出すのです。初夏の暑い日差しの中で、「水鉄砲遊び」で水をかけっこすると気持ちがいいのですが、そのうちにエキサイトしてきて顔面中心に水を浴びせられると一瞬息ができなくなるのです。こうなると、つかみ合いとなって泣いたりわめいたりの大きなケンカに発展するのです。


切り余った小さな乾燥した竹を割って竹トンボをつくるのです。十センチから十五センチくらいの長さに切り、ほとんどの男の子が肥後守という折りたたみナイフをいつもポケットに入れていて,鉛筆削りや木工作をするのに使うのです。そのナイフで羽根になる部分の中心からの両側を互い違いに片流れに薄く慎重に削って、ヘリコプターのプロペラのような反りをつけた羽根を作るのです。羽根の中央にキリで一つ穴をあけ竹バシを削って心棒を羽根に固定する作り方と、二つ穴をあけ、羽根だけが空を高く飛んでいくようにするものの二種類があるのです。どちらの竹トンボも心棒を両手のひらですり合わせ回転させて揚力をつけながら、タイミングを見て竹トンボを空に向かって放すと勢いよくキューンと空中に舞い上がるのです。子供たちは飛ばし合って、高さや飛距離滞空時間を競ったり、台の上に置いた的に当てて落としたり、お互いに向かい合って飛んでくる竹トンボを取り合ったりして「竹トンボ遊び」をするのです。まわりで見ている子たちは、竹トンボが舞い上がる度にワーイワーイと歓声があちこちから沸き上がるのです。二つの穴のものは、へたをすると羽根が自分の顔に飛んできたりするので危険なのです。


里山の子供たちは、小さな頃から近所の年長の子供が年少の子供をまとめて面倒を見ながら昔からの伝統を受けつないでいくのです。家庭で使うさまざまな道具を使いこなした物つくりから遊びや生活全で発生する危険の恐れを察知する能力を身につけることと、里山で生きて行くうえで最低限やってはならないことを年長の子供が実践して覚えさせるのです。年少の子供は年長の子に厳しく里山で子供として生きていくことをたたきこまれながら、絶えずワクワクとさせながら野山や川を飛び回り自然に有る物をうまく使って遊び道具を造り成長していくのです。  


山ササの葉を舟のかたちになるように折ってササ船をつくるのです。洗濯に使う大きな金タライに浮べたり、古の旅人の喉の渇きを潤してきた街道沿いに流れる用水の小川に流すと、ゆらゆらと流れながら所々の瀬にとどまり漂うさまを見たりして「ササ船遊び」をするのです。流れる小川の岸はコンクリート造りではなく、石工の技で大小のケンチ石を組み上げて水流の勢いで崩壊しないように護岸されているのです。その石の表面に厚く青いコケがむしていて、わずかな石との隙間に咲いた一輪の野花が水の流れに押されては戻って小舟のロのように何度も同じうごきをしているのです。近くの谷あいから流れてくる水は、地下を何年もかかって流れ出た湧水で冷たく大変にきれいなのです。家の玄関前は石組を入り江状にして水を引き込む洗い場があって、家庭で食べる泥のついた野菜やススで真っ黒な鍋釜に食器などを洗い、汗と泥の入り混じった衣服の洗濯もするのです。めったに車の通らない起伏のある街道沿いに向かい合い軒を並べて建つカヤブキ家屋と、静寂とした雰囲気が漂う小川の風景は童謡にあるように、さらさらと清らかな音をたてて流れているのです。その小川には家への通路に大石を湾曲に割った幅の広くない石橋が各家にかかっているのです。


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