里山の子供たちの遊び男の子女の子「春」4
里山の子供たちの遊び男の子女の子「春」4
あらゆる木々の梢がそれぞれの新芽の淡い色でおぼろに彩られて気持ちのいいそんな日は、男の子が女の子と一緒になって遊べるのは歌いながら無邪気に手をつないでする「カゴメ カゴメ」や「花一もんめ」なのです。
「♪かーごめ かーごめ かーごのなーかの とーりは いついつであう よあけの ばんに つーると かーめが すーべった 後ろの正面 だーれ♪」
「かごめかごめ」は里山の空き地や田んぼに色とりどりのガラ模様がついたチャンチャンコを羽織った男の子から女の子が集まって来て、まず全員でジャンケンをして一人の鬼を決めるのです。鬼になった子供は、子供たちが作った輪の真ん中に入って両眼を手のひらでおおって下を向いてしゃがむのです。鬼の回りの子供たちは手をつないで鬼を中心にして歌をうたいながら時計回りに横歩きをするのです。歌を歌い終わったら止まって全員がしゃがみ、鬼は真後ろにいる子供が誰なのかを当てるのです。鬼は後ろの子供の笑い声や隣の子供とするひそひそ話を聞いて誰だか当てるのですが、人数が多いと誰だか分からないので「声だし」を頼むのです。頼まれた真後ろの子供は「あ~」とか「う~」とわざと変な声を出して、その声を聞いて思いついた子供の名前を「○○チャン」と当てるのです。当たれば鬼を交代して、外れたらもう一度鬼になるのです。普段から仲が良かったりけんかしたりしながら子供たちのコミュニュケーションがうまく取れていないと誰だかわからず当てることが難しい遊びなのです。
「勝ってうれしい はないちもんめ 負けてくやしい はないちもんめ 隣のおばさん ちょっときておくれ 鬼が怖くて行かれない おふとんかぶってちょっときておくれ おふとんかぶっちゃ行かれない あの子がほしい あの子じゃわからん この子がほしい この子ってだぁれ 相談しましょ そうしましょ 決まった ○○ちゃんがほしい ○○ちゃんがほしい じゃんけんぽん」
「花いちもんめ」は同じ人数で二つのグループに分かれるのです。それぞれのグループの子供たちはお互いに手をつないで向かい合って横一列に並ぶのです。どちらからが
「勝ってうれしい花いちもんめ」と歌いながら前に進み、もう一組は後ずさりに後ろに下がるのです。進んだ方は、花いちもんめのめの所で片足を相手に向けて前に高くけり上げるのです。今度は反対に、後ずさりしたグループが先程の相手と同様に前に進み、「負けて悔しい花いちもんめ」と歌いながら、同じように足を高くけり上げるのです。最初に歌った方は、「あの子が欲しい」もう一方は「あの子じゃわからん」と言い、再び先に歌った方が「相談しようと」言ったら残りの組が「そうしましょう」と言うのです。
ここまで歌ったらグループごとに誰が欲しいか相談するのです。決まると、「決まった」と叫んで再び手をついで向かい合うのです。ここでも先に歌った方から歌い、「○○ちゃんが欲しい」と相手の名前を言って前に進み、同様に片方のグループも欲しい人の名前を言うのです。それぞれのグループから一人の代表を決め、ジャンケンで決着をつけるのです。ジャンケンで勝ったグループは名前を呼んだ子供を自分のグループに連れて来て手をつなぐ、その繰り返しでどちらかの人数が無くなるまで続けるのです。里山の家と家の遊び場の空き地からは絶えず子供たちの遊ぶ声やけんかをする元気で賑やかな声が、ウグイスの鳴き声と一緒に混ざりながら遠くの方から近くから聞こえるのです。
他の広場では、おもに女の子が集まって「ゴム跳び」で遊ぶのです。輪ゴムや虫ゴムをつないだものを使って跳ぶ高さを競うのです。ゴムの位置が女の子の足首の高さから、ひざ、腰、胸と順番に高くしていき、最後に頭の位置になってすべての高さを跳ぶことに成功すれば終りなのです。まず、ゴムを持つ二人と跳ぶ人を決めるのです。ゴムをもった二人は、二Mぐらいの長さに引っ張りながら離れてゴムを張るのです。そして、残りの子供たちが順番に跳ぶのですが跳べなかったときは、ゴムを持っている子供と交代になるのです。最初は足のくるぶしの低い高さから跳び、ゴムの位置がひざのときは前向きにまたいで跳ぶ男跳びや、腰くらいの高さでは体をひねって後ろ向きに跳ぶ女跳びがあるのです。最後にゴムが頭の位置の高さになると、素直には跳べないので両手を地面について逆立ちになりながら足先にゴムをひっかけて跳ぶ軽業師みたいな逆立ち跳びをする活発な女の子もいるのです。
天気の良かった夕方から月が出始める頃の影が長くなる時間帯に五~六人から十人くらいの子供たちは、「影ふみ」をして遊ぶのです。はじめに、体のどの部分の影を踏むと鬼になるかを決めるのです。例えば頭の部分に決めたとすると、ジャンケンで負けた一人の鬼が一生懸命に相手を追いかけて行き影の頭を踏もうとするのです。踏まれたらその子供が次の鬼になるのですが逃げる子供は、疲れてくると木の陰か家の影へ逃げ込むのです。自分の影を消して休んだりして追いつめられて困った時は、その場に小さくしゃがんで頭をふって体をもじりながら鬼に影を踏まれないように頑張るのです。やがて夕暮れが深まってきて影も長くなり始め西の空が赤く染まりだしてくると、あちらこちらから夕餉の匂いがして「ご飯だよぉ~」とモンペに白い割ぽう着姿のお母さんが小走りで子供たちの遊び場まで迎えに来はじめるのです。一人抜け二人抜けはじめて子供たちが少なくなって寂しくなると、迎えに来てもらえない子供も帰りだして遊びの解散になるのです。
大勢の子供がジャンケンをして、負けた子供が鬼になる「かくれんぼ」も男の子も女の子も一緒になって遊べるのです。鬼になった子供は家の囲いや立木に前向きにもたれ、目をつむって決められた数をかぞえるのです。そのあいだに他の子供たちは納屋の戸の隙間やミソオケの中に入ったりして、いろいろな場所に隠れるのです。数をかぞえ終わった鬼は「もういいかい」と大声で言うと、隠れた子供たちは場所がわからないように小さな声で「もういいよ」と返すのです。鬼はその声がした方角を目指して探しに行くのですが、隠れた子供は物陰を伝って見つからないように移動するのです。鬼は見つけると「見っけ」と叫び、見つかった子供は鬼とジャンケンをして新しい鬼を決めるのです。誰も見つけることができずに何回も鬼になる小さい子供は、しまいに泣きだしてしまうので大きい子供が鬼を代わってやることもあるのです。また、鬼になって数をかぞえる時に決められた百まで数えるのが面倒くさくなると、途中から数を飛ばしてごまかしたりもするのです。
同じ時代の都会の子供たちには、里山には無いホッピングと言う遊び道具が流行り出していたのです。取手と足場の付いた一本棒の底面がばねで弾むようになっていて、両足を足場に乗せて「ピヨコンピョコン」と飛び跳ねてバランス感覚を競う遊びなのです。次第にテレビが家庭に普及し始めた都会の子供たちは「スーパーマン」や「鞍馬天狗」と「お笑い三人組」などの娯楽番組を見て楽しんでいたのです。都会からゆっくりとした時間の格差で流れてくる里山の子供たちは、文明の利器や購入する遊び道具に未だ巡り会わないのです。相も変わらずお金に頼らずに自然にある物をうまく利用して造る遊び道具で仲よく遊ぶのです。