里山の子供たちの遊び「早春」1
里山の子供たちの遊び「早春」1
子供たちの遊び場に積もった雪が消えて待ちに待った春なのですが、春とは言えまだまだ早い春なのです。天気は晴れてお日様がさしていても残雪で冷やされた風に吹かれると寒いのです。そんな時の子供たちは暖かい日だまりを選んで遊ぶのですが、それでも寒くて我慢ができないときに「おしくらまんじゅう」をするのです。
「おしくらまんじゅう 押されて泣くな あんまり押すと あんこが出るぞ あんこが出たら つまんでなめろ」大きい子から小さい子供が大勢でひとかたまりになって、塀や家の囲いに横一列にもたれて手をふところに突っ込んだまま、こんな歌をうたいながら押しあい圧し合いをするのです。農家の庭先に咲く梅の花の甘酸っぱい香りのなかで、頬っぺたを真っ赤にして手や足を使わず上半身をぶつけあいするのです。気持ちも高ぶりだしてだんだんと激しく押しあいをしていると、体じゅうが暖かくなって汗ばんでくるのです。
勢い余って列から押し出された子供は、遊びが終わるまで寒さの中で立って見ていなければならないのです。どの子も押し出されないようにしっかりと足をふんばって頑張るのです。おしくらまんじゅうは家の縁側などの日のあたるところで座ったままでもできるのです。また、人数に応じて地面に大きな円をえがき、そのなかへ背中を中心に全員が入り同じ歌をうたいながら円からはみ出ないように遊ぶのです。
この遊びに難しいルールはなく、勝ち負けを争うものではないのです。子供たちが寒さのなかで元気をだして精いっぱいに力を出し合うことを楽しむ遊びなのです。無中になって遊んでいるとズボンの尻の縫い目が破れたり、転んで鼻血をだしたり膝にすり傷を作ったりするのですが、それでも子供たちはお互いをいたわりながら暗くなるまで遊び続けるのです。
黒土が農作業で踏み固められた庭では、年上の子供が大将になって五寸くぎを使う「くぎ刺し、くぎツットシ」遊びをするのです。地面に人数分の出発点の振り出し口を作り、立ったまま振りかぶって勢いを良く土に五寸くぎを突き刺すのです。チョコットだけ刺すなら誰でも出来るのですがそれは反則なのです。くぎを刺した位置から出発点に直線を引き、相手の通路を通れないように結んだ線で邪魔をするのです。線をたくみに使う頭脳戦で、あっちに長く線を伸ばして逃げこっちに短く刺して逃げ、最終的に直線に閉じ込められた相手が負けになる遊びなのです。
早い春の天気は毎日目まぐるしく変わるのです。そんな雨の日は家のなかで糸車戦車を造って遊ぶのです。木綿の糸を巻いてあった木製の糸巻きの穴に輪ゴムを通して、片方のゴムを短い割り箸ごと動かないよう固定をして、もう一方の輪ゴムに長めの割り箸を通して結ぶのです。あとは、長い割り箸の方を指で回しながら輪ゴムをねじって床に置くと動きだす手作りおもちゃの完成なのです。子供たちが集まって、途中に分厚い本などを置いたコースを自慢の糸車戦車をどこまで進めるか、しょう害物を乗り越えられるかを競争するのです。勝つために輪ゴムの数を多くしたり減らしたり、巻く回数を多くしたり、少なくしたりして試行錯誤するのです。輪ゴムの数が多くすれば良いのか、いっぱい巻いたから遠くまでで転がるという訳ではなくなかなか奥が深いのです。糸車に輪ゴムと割り箸を使っただけの簡単な構造なのですが、これが実によく走り子供たちは大いに盛り上がるのです。