「人を騙すキツネ」と信じて疑わなかった頃3
「人を騙すキツネ」と信じて疑わなかった頃3
長いあいだ里山で狩猟をしていた老猟師は、寄る年波と最近に体調を崩したのを機会に今年から猟師を止める決意をしたのです。しかし、老猟師が残念で成らないのは長年にわたって使い込んだ愛着のある自慢の村田銃が代々受け繋がらなく他人の手に渡ってしまうのが惜しいのです。それと過去何年間の猟で培われた猟場の経験に知識と、猟を止めることによって山林を守る事ができなくなるからなのです。増え続ける動物の為に植林した若木への食害や、動物の生態系の均等が崩れていくのを危惧するのです。
老猟師は思い切って息子に、狩猟を継続しないと山林や農作物に悪い影響が出る事を説いたのです。自然界の有り方や厳しさについて納得した息子は、狩猟方法の全てを教えてくれるなら猟師をやっても良いと言ってくれたのです。
銃砲所持許可書の変更手続きと狩猟免許試験に受かり、農家の収穫作業も終わりに近づき狩猟解禁日の晩秋となった息子は銃の癖や射程距離を体で覚えこむ為に、草木が枯れて見通しの良くなった野原の山へキジ、ヤマドリ、カモなどを狙って連日猟に出るのです。しかし、普通の銃よりも銃身が長く殺傷能力を高める為に散弾の広がるパターンを遠くまで広がらない設計の村田銃は、ヤブのなかから目の前に飛び出る鳥類には不向きで熟練の技が必要とされたのです。至近距離で運よく射止めても、粒々の散弾のかたまりに直撃された鳥は大きな穴が開くかバラバラになってしまうのです。
早く四本脚の中型動物を射止めてみたい息子は、冬になって毎日降り続く雪のためで家に閉じ込められてしまい、あせる気持ちをおさえて雪の降り止むのと雪の原の安定を待っているのです。家から見える山のすべてや木の幹と枝までにも毎日の吹雪に吹き付けられて白くなってしてしまい、見渡す限り雪のベールに覆われた白銀の世界なのです。