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狙われる野ウサギ3

狙われる野ウサギ3


ようやく春も近づき雪の降る日も少なくなり「カンジキ」を付けて雪の原に立っても自由に歩けるようになると、猟銃を持った射手「タツマ」の立つ位置に勢子「オイッコ」が獲物を追い出す大掛かりな巻き狩りが森で行われるのです。里山では猟銃所持許可と狩猟免許の持っている猟師は少なく、勢子となる多数の人たちは自分たちが追い出す獲物を射手が数多く射止めてくれて配分される獲物の量をどのくらいもらえるのか、猟師の射撃の腕に熱い期待を高めるのです。


猟銃も現代のような上下二連銃、水平二連銃、自動装填銃などの便利で性能のいい銃などなく、代々猟師の家で受け継がれてきた一発の散弾しか発射できない単発銃「村田銃」でしかないのです。「村田銃」は二十八番、口径十四.五mm 射程距離を遠くまで高めるために銃身は長く重く、発射された鉛粒の散弾が拡大するパターンを銃身内で絞られ、遠くまで殺傷能力を強める設計になっているのです。


そんな難しい銃で獲物を狙うのですから、獲物を狙う正確さと猟銃の性能に射撃の腕を要求される射手はプレッシャーを感じるのです。散弾も獲物によって鉛粒の大きさを何種類か選択して、猟に出る前の晩に真ちゅうの空薬きょうに定量の黒色火薬と鉛粒と雷管を詰めて自作するのです。


勢子は射手が山の頂点の位置に付いた事を知らせる笛の合図で、一斉に森の上に向かって射手が先回りして待っている位置に向かい、横一直線に並び大声を出したりブリキの缶をたたいたりしながら追い上げていくのです。野ウサギの習性として、逃げる時は前後の足の長さの違いから森の地形の高い方へと逃げる癖があるのです。


追い上げる途中で飛び出した野ウサギは、全力疾走で逃げ切るのかと思っていると突然に止まり、追ってきたものが何だろうと後ろ足二本立ちになりながらしばらくの間愛きょうたっぷりと振り返って見るしぐさをする、興味心が旺盛な癖もあるのです。そんな場面に出あう勢子は、「ウサギとカメ」の話を思い出し苦笑してしまうのです。


森の中間ころまで追い上げると、山の上で乾いた銃声が「パァーン、パァーン」と木々の間からこだましてきこえだすと、勢子たちは久々のうさぎ汁の味が脳裏をかすめてますます大きな声を張り上げ奮起してきつい雪の斜面を追い上げて行くのです。


 大人たちは山で大掛かりな野ウサギ狩りをおこなうのですが、子供たちは子供でかやぶき屋根の下や家の隙間に潜り込んで寒さと降る雪から避難しているスズメを狙うのです。家の周りの雪が夜と昼の温度差で表面が固くなると、スズメは集団で雪の上に餌を探し回るのです。その行動を見て子供は、家から農作業用のカゴ「ボテ」と二十センチ程の棒にロープを縛って伏せたカゴの片方に隙間ができるように立てるのです。親に見つからないように米びつから米を持ち出してきて、仕掛けたカゴの中央あたりにまいておくのです。片方のロープは家の中に引きこみ戸の隙間から監視していると、木の上や軒下にいるスズメは警戒心がとけだし一羽二羽とカゴに近寄りだし数匹がカゴの中央にまいた米をついばみ始めたらいっきにロープを引っ張るのです。カゴの中に取り残されたスズメは毛を抜かれて焼かれ本物のスズメの焼きとりになるのです。囲炉裏のオキ火の遠赤外線の熱で香ばしく焼けて、骨も苦にならずおいしく食べるのです。



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