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狙われる野ウサギ2

狙われる野ウサギ2


 獲られた野ウサギの毛皮は剥がれて板に貼り付けられ何日間陰干しにしてから保管して置くと、定期的に毛皮業者が買いに来るのです。野生動物の中でも猟銃を使ってもなかなか獲られないテンやキツネの毛皮はまれに獲られた時は、高額な値段で取引されていたのです。運よく一匹でも獲られたその日に毛皮業者に電報を打つと、翌日には都会から蒸気機関車に乗って買付けに来たのです。

 

野ウサギや他の毛皮も貴重な現金収入なのですが、里山の人々には大切な動物性タンパク源である肉にも魅力があって捨てるところなく柔らかい骨まで石で細かたたきつぶして滑らかな口当たりになったら、カルシウムがたっぷりの肉団子にして奇麗に食べてしまうのです。うさぎ汁は豊富な越冬野菜と肉をみそ仕立にして、囲炉裏の自在鍵「カギツケサン」につるされた鉄鍋でゆっくりと煮る久々のごちそうを家族全員が集まって暖かな囲炉裏を囲んで食べるのです。


多少残る骨や内臓を外の堆肥置き場「コヤシバ」に捨てて置くと、その夜は必ずと言って良い程夜の猛きん類であるフクロウが高い柿の木にとまり、「ノノスケホーホーノノスケホーホー」と餌にありついた喜びの低い鳴き声を発し静かな冬の暗闇に吸い込まれていくのです。普段なら血の匂いを嗅ぎ付ける悪賢いキツネや俊敏なテンが御相伴にありつくのだろうが、深い雪のために身動きが取れなくて羽のあるフクロウだけがごちそうにありつけたのです。


野ウサギは餌を探す夜の行動に、ほぼ同じ場所を通り雪の上に足跡を残すのです。水を嫌う野ウサギは沢の川に入る事なく、川をまたぐ倒木の上か人間が架けた橋の上を通り足跡を付けるのです。その行き返りの方向を何日間観測して同じ個ケ所に足跡を付けて通り道となっている通路に、にわか狩人は細い針金を使ってワナを作り仕掛ける位置を決めるのです。


野ウサギは他の動物のように四本の足を交互に動かす歩き方をしないのです。細長く発達した後ろ足二本をバネにして蹴って跳び短い前脚より先に着地させるので、「ピョンピョン」とマリが跳ねるような走り方をするのです。


この習性を利用して猟をする方法がくくりワナなのです。野ウサギの頭が入いる位の大きさに締まったりゆるんだりする細い針金の輪を作り、片方は柔軟性のある細い木にくくり付けておくのです。跳んだ野ウサギが輪の中をくぐれる微妙な高さにして数ケ所仕掛けるのです。仕掛けた針金のワナとの高さと野ウサギの跳ねる高さがうまい具合に一致して輪の中に頭が入ると、前に逃げようとする引っ張る力で輪が絞まり、針金をくくり付けてある柔軟性の有る木が折れない限り後退することを知らない野ウサギは力尽きてしまうのです。


せっかくワナにかかった野ウサギも森のギャングであるキツネ、テンに横取りされる場合も多々あるのです。里山の人も野生動物も、生きる為には必死で食べる事が精いっぱいの時代なのです。



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