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六家の集い その4

お待たせしました…。

こ、更新です!

Act.11  六家の集い その4



(う〜ん、今から輝さんのマンションに行くのか…。

お父様にバレたら今度こそ許されないわ、絶対に!


会社は即クビで、外出禁止令が出て、最後には部屋に監禁されるわ、私…

で、でも愛しのしーちゃんの為だもの

お父様も事情を知ったらきっと私を許して下さるハズ。

だから実行していいのよ、これは!)


輝のマンションに行く事に関して、どうにかこじつけを考えついた朱美はそろりと部屋の扉を開けた。


一瞬、ぎいいい、と音が立った事で背中に冷や汗がどっと出たが、誰も気付かない様子にほっと安堵の溜息を零す。


(よ、良かった…。

誰も気付いていない)


と心の中で呟いていると急に忍の部屋の扉が開いた。


「し、しーちゃん…」


ぱくぱくと口を開き、だらだらと冷や汗を額にたれ流し、慌てふためきながら朱美は忍の視線を逸らす。


「あれ?姉貴、今から外出?」


くすりと微笑みながら忍は、朱美に近寄る。


「え、ええ…」


「もしかして、輝さんと会うの?」


忍の発言に更に汗をだらだら流し目を泳がす。


そんな朱美の様子を見て自分の勘が当たった事に、忍は柔らかく微笑んだ。


「そうだよね。

婚約が決まったから殊更、会いたいよね…。

うん、俺もそうだから。」


勘違いもいい所だ、と思いっきり否定しようと思い忍の言葉を中断させようと思ったが、忍の最後の言葉に口を噤んでしまった。

考え深げに言う忍に、「彼女の事を考えているんだ、きっと…」と、そう思った途端、ずきりと胸に痛みが走った。


(しーちゃんに彼女が出来た事は本当に喜ばしい事なんだから、寂しがっては駄目よ、朱美。

しーちゃんの幸せが私の幸せなんだから。

やっと心からの笑みを見せる様になったしーちゃんを私は守らないといけない。

だって、それが私が涼司さんに対して示す事が出来る想いの証だもの…。

私の、唯一愛する人の…)


ふと寂しく微笑む朱美を忍がそっと抱きしめる。


急な忍の抱擁に朱美は頬を真っ赤に染め目を見開いた。


「姉貴…。

輝さんと幸せに。

俺は姉貴の幸せを誰よりも望んでいるから。」


「しーちゃん…」


目を細め微笑む忍の視線は、何処か懐かしむ様に朱美を見つめている。

忍のあの瞳はきっと自分に亡き母を重ねているんだとそう思った途端、涙が止めど無く流れた。


泣き出す朱美に忍が更に優しく朱美を抱きしめる。


「泣かないで…。

俺は姉貴に泣かれるのが一番、堪えるんだ。」


だから笑って、と言う忍の言葉が何処迄も優しくて、朱美は溢れる涙を止める事が出来なかった…。


忍との感動的な出来事を心の糧に朱美は輝のマンションへと赴いた。


今朝方、朱美に手渡されたマンションのカードキー。


何時でもマンションに来て欲しい、と真摯に訴える輝に思いっきり訝しげな視線を投げ掛けた朱美を見つめ、苦笑を漏らした。


その笑みが以外に優しい事に驚きを隠せなかったが…。


マンションのカードキーを差し込み扉を開ける。

性格を表すかの如く塵一つ落ちていない部屋に、朱美は薄ら寒い感覚に陥いった。


(ホント、性格を見事に表した部屋だわ…。

目覚めた時、本当にこれ男の部屋よね?と疑ってしまう程、綺麗に整理整頓されていたわ。


まあ、ハウスキーパーを入れているとは思うけど、だけどこれはちょと異常よねえええ。

ふう、だって物の配置の間隔が均一で、ミリ単位迄測ったかの様にズレていない。


な、何、あの本の並べ方…!

本の高さが均一だわ。

そ、それに全てに同じ表紙を掛け、年代ごとにインデックスで解る様に区分している。


い、嫌、こ、怖いわ、この部屋。

こ、こんな付き合い始めたら、掃除の時、けんもほろろに言われそう。

掃除の仕方が下手だとか、床は最初はぞうきんで乾拭きをして専用洗剤をしみ込ませたぞうきんで拭いてとか常に監視をされてながら、一々言いそう。


いや、絶対にそう…。


はっ、もしかして部屋がこれなら、食べ物に関してもうるさいかも。


はあああ、りょ、料理を作れと言われたらどうしよう…。

自慢では無いけど、私、料理だけは苦手なのよね〜。


涼司さんが料理がとても上手かったので、子供の頃から、変に頑張らなくてもいいと思ったのが思いっきり誤算だったわ…。

しーちゃんも涼司さんに似て料理が上手いから、目も口も肥えてしまったのよね〜。


しーちゃん…。


どうして、どうしてあんなにパーフェクトなの?


ホント、世の男が霞んでしまうじゃないの!

輝さんには悪いけど、私には論外なのよね。

その論外な男に今から好い様にされるのか…。)


と、心の中で悶々と葛藤しているといつの間にか輝が帰宅していた。


「朱美、早かったな…」


と近づき耳元で囁く輝の艶やかな声に朱美は、胸が高鳴る。

そんな朱美に目を和らげ微笑みながら、輝は朱美の顎に手をかけ唇を重ねた…。



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