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魔法

 「イサゴ=ユージ。お前の使う魔法はなんだ?」


教会の司祭、メリット=バージはそう僕に尋ねた。


僕に与えられた魔法は治癒魔法。


この世界において、とても希少な魔法。


それを握れば教会はさらなる力を得れる。


しかし僕はそれを望んでいない。


現代日本で生まれ育ったのだ。


選択の自由にまみれた人間は、拒否を覚えている。


それに、僕が望んだのは魔法であって治癒魔法ではない。


転生する時、神様が無理やり僕にこの魔法を持たせたのだ。


一歩司祭へ近づき、顔を上げる。


僕を睨む視線に対し、思いっきりーー


「わかりません。」


すっとぼける。


そもそも、僕が治癒魔法を使ったのはほんの1回ポッキリだ。


使ってすぐに気絶したわけで、本格的に魔法を使ったことは、まだ1度もない。


わからない、という答えは嘘でもなければ答えになっていないわけでもない。


完璧だ。


「なら、今から確かめようか。」


これで終わると気を抜いていた僕に返ってきた答えは、予想をはるかに飛び越えていた。


「確かめるったって、どうやって?」


司祭は懐から、1つの玉を取り出した。


「この玉に向けて、1つずつ魔法を試してみろ。」


「いや〜、その玉が壊れたら、責任取れないし…。」


まずいまずいまずい。


「問題ない。これはただの石だ。」


司祭は僕が治癒術師だと確信しているようだった。


どこから情報が漏れた?


とにかくーー


「一度教会へ入っても?」


「なぜだ?」


「魔法は神の奇跡ですし、使わせてもらえるか確かめないと。」


さっきの教義をそのまま捉えた言葉を返す。


「ふん。いいだろう。」


司祭は神に祈ったところで無駄だとでも言いたげな態度で答えた。


もし、ここで魔法が使えなかった場合どうなる?


教会の中へはいる。


ああいう司祭たちのもとで働く?


魔法が使えない奴として扱われる?


どちらでもいい。


巨大な神様の絵を見上げて、立膝をつく。


ー神様。


『大変なことになってるねぇ〜。』


やはり、ここに来れば神様と話せるらしい。


ー他人事みたいに言わないでよ。どうにかして。


『前に言ったか?奇跡はすぐそばにある。お前はどうして生きている?考えてみろ。』


ー答えになってない。


『馬鹿な人間だなぁ。いいだろう。教えてやる。魔法を作り出したのは人間だ。あとはもう自分で考えろ。』 


そう言って、神の気配、は消えた。


目を開ける。


「どうだ?使わせてもらえそうか?」


教会から出ると、司祭はあくびしながら聞いてきた。


ー奇跡は、すぐそばにある。


「ほら、魔法を使えよ。」


ー魔法は、人間が作り出した。


魔法ーー

それは精霊を使役する力。


「精霊。」


いるんだろう?


すぐそばに。


「力を貸して。」


すべて、イメージだ。


なにも見えない、わからない。


すべて仮定から始まるんだ。


作り出せーー


司祭に向けて手をかざす。


あいつの度肝を抜いてやれ。


二度と手を出させるな。


「燃やせ。」


そう唱えた瞬間ーー


空気は音を立て、燃えた。


確かに、かざした手の先に、火の玉が出来ていた。


呆気にとられる僕をおいて、その玉は司祭めがけて飛んで行った。


小さな爆発が起こり、辺りの人々の視線がこちらへ向いた。


ーズキン!


直後に猛烈な頭痛に襲われた。


視界の端に腰を抜かした司祭が見える。


ハハ…。


ざまぁねぇな。


耳鳴りと、打ちつけられるような頭痛に、僕は気を失った。


 ♦


「知ってる天井だ。」


初めてダンジョンに潜った後、入院していた病院と同じだ。


でも、なんでだっけ。


体を起こす。


ー頭がいたい。


「ユージ…?」


声のする方を見る。


「カルラ。」


泣き出しそうな顔をして、カルラは一つ息を吐いた。


「よかった~~。」


カルラとリェレンは確か首都のほうに行っていたはず。


何があったのか、いまいち思い出せない。


「う~ん、レンは?」


姿がないのは、少し心配だった。


「教会で祈ってるよ。昨日帰ってきたら、ユージが倒れて目覚めないって聞いて、大慌てで教会に。」


ーあぁ、教会。


…。教会?


「まずいかも。」


「何が?」


「ちょっと教会といろいろあって。レンを呼んできてくれる?」


「でも、ユージは?」


「大丈夫。教会の問題のほうがでっかい。」


「わかった。急ぎだよね?」


「うん。ダッシュ。」


カルラは頷くと病室を駆け出して行った。


教会の疑いは晴らせただろうか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ユージが、倒れた?」


ダンジョン調査からの帰り、ギルドへ向かうとそんな話を聞かされた。


魔法を使った直後に倒れたらしい。


治癒術師ということはばれていない。


つまり、ユージは精霊魔法を使ったということ。


「レン、どうしよう?」


「私は教会に行く。カルラはユージを。」


「何するの?!」


「祈るだけ。」


そう、神は私たちをちゃんと見ている。


教会に駆け込む。


立膝をつく。


ーエテルネス。


『どうした?』


ーユージには、何が?


『教会の疑いを晴らしたんだ。』


ー精霊魔法も、使えるの?


『前に君に言った通り。彼には私を混ぜている。』


ーじゃぁ、なんで倒れて?


『魔法については、彼から聞きな。いずれすべて理解できるから。』


ー相変わらずすべては教えてくれないんだな。


『すべて教えては、神の意義はなくなる。頑張れ。』


しばらく、動けなかった。


ユージが、神と混ざっている。


その事実を、私自身どんどん実感する。


「リェレン=クリスティだな。」


「私に何か?」


「少し、聞きたいことがある。」


振り向いた先のその老人は、怪しい笑みを浮かべ、こちらに一歩近づいた。

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