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教会

 寝泊まりするのは、前と変わらない公園の雑木林。


ホームレスじゃない。


アドレスホッパーだ。


いずれは家を買う。


その時は、3人で住める家のほうが良いだろう。


川辺まで歩いて顔を洗って髪を整える。


いつもはカルラの魔法でやっていたことだ。


ー魔法って、ホントに便利。


僕も一応魔法使いなのだが、使ったことは一回しかない。


しかも使った時の記憶はない。


もっとうまく魔法を使えるようになりたいから、リェレンとカルラと一緒に行動することにしたのだが、二人は遠くのダンジョンの調査に行ってしまった。


たぶん来週には帰ってきてくれる、はず。


ダンジョンには2回だけ入ったことがある。


1回目は途中で気絶していたとはいえダンジョンから出たときにはすでに3日が経過していた。


2回目は一切気絶もせず、というか運動も歩くことしかしていなかったが、外では4日が経っていた。


もしかしたら、ダンジョンを通れば過去に戻ることも可能なのかもしれない。


身支度をして街の中心へ向かう。


教会。


この世界で最も大きな権力。


リェレンとの約束を破るわけではない。


ー『一つだけ、約束して。教会に、君が治癒術師ということだけは言わないで。』


理由は考えられる限り2つ。


1つ。


以前リェレンから聞かされたとおりなら、治癒術師が管理対象ということ。


リェレンとして、このパーティーから治癒術師を失いたくない。


2つ。


リェレンが神と本当に会話をしていたと仮定した場合。


僕の存在が彼女にとってどういう意味を持つのか、知っていることになる。


僕としてもそこを100%理解しているとは言い切れない。


だが、僕とリェレンに与えられた情報が異なっていたなら、僕を引き留める理由を作ることも納得できる。


ただこれは完全な推論だ。


1つ目の理由がメインだろう。


とにかく、教会に近づくなという約束ではない。


向こうのスタンスを探る上でも、今日の布教活動の手伝いには意味がある。


ーなかなか、肝が据わってきたのか?


自分でも驚いた。


前までなら、こんな面倒なことはしなかった。


二人のいないうちに、僕らにとって一番大きそうな壁を取り除く。


僕の真ん中には、二人がいる。


 ♦


「はい、受諾証は確かに受け取りました。では、こちらでお着替えをお願いします。」


教会につくと、修道女に中へ案内された。


思いのほか広い。


神様の絵はいたるところに飾られている。


偶像崇拝OKなのか。


「布教活動では、教義を唱えながら街中を歩いてもらいます。エテルネス様のありがたいお言葉ですので、しっかり伝わるように大きな声でお願いしますね。」


どうしよう。


嫌すぎる。


もともと宗教に対しては何とも思っていなかったが、

大声で教義を唱えながら歩き回る集団って…。


怖いだろ。


自分がその輪のなかにいるのは、嫌だ。


しかし、これもお金のため。


教義を知るだけでも、その宗教の成立や信仰させる対象も読める。


つまり、この国の理想を学ぶことも、できなくもない。


そうやって自分を無理くり鼓舞して手渡された教義を読み上げながら、教会団員たちと街を歩く。


小さい子供は好奇の目を、大の大人たちは深々礼をしたりお金を投げたり…。


出来れば、子供にはそのまま育って欲しいものだ。


「全ては神の意思のままに。信じるのみが人のさだめ。信じ行え。神が見捨てぬ人となれ。」


結構厳しい教義だな。


努力して神様に助けてもらえる人間になりましょう。ということか。


前の世界のいろんな宗教が混ざった感じだ。


「魔法は神の奇跡。無力な人を救う神の奇跡。精霊を、世界を、神を崇めよ。」


これは前にカルラから聞いたような話だ。


神の奇跡である魔法を、人間は使わせてもらっている。だから、神のほうが人間よりつよい、と。


それについて、あの神様はどう思うんだろう。


案外、神は何もしてないなんてことがある気がする。


そうやって街を練り歩くこと2時間弱。


僕らは教会へ帰ってきた。


そしてーー


「イサゴ=ユージ。お前に、聞きたいことがある。」


何やら物々しい格好の人が1人。


僕の名前を呼んだ。


 ◆


「どちらさまですか?」


僕の名前を呼んだその人は、教会関係者にも、軍の関係者にも、はたまた貴族にも見えた。


「これは失礼。私はエテロネア教会カティアロナ大教会の司祭、メリット=バージ。今回はお前に1つだけ、聞きたいことがあってここまでやって来た。」


教会関係者か…。


僕は緊張を高める。


「聞きたいこととは?」


「お前の使う魔法はなんだ?」


やはり来た。


治癒魔法を使うこと、それがリスクになることは、この世界に来てから知った。


神様。


責任、取ってもらおう。


僕はその司祭へ向けて、一歩を踏み出した。

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