妹の身代わりとしてデートに行かされていましたが、王子様は最初から「僕が愛したのは君だ」と離してくれません
「ありがとう。お姉様が私の代わりにデートして下さったおかげで王子と婚約出来ましたわ。一度受けたプロポーズは絶対、もう逃しませんわ」
妹の部屋に洗濯したシーツを持っていくと、妹が私に言った。
宝石を散りばめた様なドレスで座っている妹と、ボロボロの服で妹のベッドのシーツを変えている私。
「庶民的な場所が好きなんて変わった方ですけど、王妃になるなら我慢しますわ。くれぐれも、自分が身代わりをしていたいなんておっしゃらないでね、お姉様」
取り替えたばかりのシーツを踏みつけて妹が言う。
屈んで脚を丁寧に浮かせて、シーツを取ろうとする。
妹の名前で会って欲しいと言われていたあの人が王子様だったの?
「まあ、誰も信じないでしょうけど、クスッ」
使用済みのシーツを畳んで、私は妹の部屋を出る。
私は転生者だと気付いた時からこの家では召使い同然で、「妹に成り代わっていた」なんて言っても信じて貰えないのは本当だろう。
綺麗な服を着せられて、妹を名乗って男性と会えなどと、裏があるとは思っていたけど……。
私は思わず王宮の前まで来ていた。
王宮に出入りする華々しい人たちにの中で、私のみすぼらしい格好は浮いている。
家に帰ったら仕事が終わっていない事を叱られるだろう。
ただ、あの人はいい人だったから、本当に王子様なら、妹と結婚して、私みたいに妹と家族から虐げられるのは可哀想だ。
もしかしたら、会えないかと思って門の前まで来たけど、会えるはずないわね。
ずっと待っているわけにもいかないから、帰る事にする。
妹は欲しいものは、なんでも手に入れる。
王子様も、妹の手に入る運命だったのよ……。
「運命、だ——」
声が聞こえた。
俯いていた顔をあげる。
——彼が立っていた。
「君から会いに来てくれるなんて——」
そう言って抱きしめられる。
ここは王宮の門の前で、品のいい格好の方々が行き交っている。
彼もいつもと違う格好で、まるで王子様みたい。
自分の格好にハッとする。
「ダメです! こんなみすぼらしい女に抱きつくなんて!」
私は、彼を振り払った。
彼は、私を“なんだ”と思って抱きついたの!?
デートしていた時の宝石を散りばめた様な妹の服は着ていないから、妹には見えないはずなのに!
「何度もデートした君の事を服が違うくらいで間違わないさ。節目がちに常に周りに気配りする君が好きなんだ」
そう言って彼は微笑みを浮かべる。
「でも、妹と婚約したって……」
「君と結婚したら、君にも影武者が必要だから、僕の影武者と君の妹が結婚してくれたらいいと思ったんだ」
「え?」
妹がプロポーズを受けたのは王子の影武者……?
「一度受けたプロポーズを断るのはこの国では大罪なのは知ってるだろう? 君を虐めた奴には相応しいだろ」
妹自身が王子様を逃さないって喜んでいたのに……。
私の為に怒ってくれたの?
ただ優しいだけの人だと思っていたけど——。
顔が熱くなる。
彼が私だけを見てくれている。
「君を傷付ける人だけは許せないんだ……」
低い声に、暗く瞳が光る。
すぐに少しやり過ぎたかもと、彼はしゅんとする。
王子様の格好なのに、いつもの彼の姿が見えた。
「……ありがとうございます」
私は思わず笑って言う。
彼は照れた様に笑う。
でも、彼の顔が私の耳元に近づいて囁く。
「それで、僕がここでプロポーズしたら君は何て答えるの?」
「え……」
一度受けたプロポーズを断ったら大罪——。
「僕は君を愛してる。だから、みんなに伝えたいんだよ」
王宮の前を行き交う華々しい人たちの波の中で、断ったら王子様の恥をかかせてしまう。
でも、
「……こんな人前でプロポーズされたら、私、断ってしまいます」
恥ずかしさに真っ赤になった顔を覆って私が答える。
「だよね……」
がっかりしている彼……。
「でも……」
二人っきりなら……、続けようと思ったけどやっぱり恥ずかしい……。
「君には二人っきりでしか愛を囁けないね」
王子様は私のことをとてもよく知っていて、もう家には帰りたくないことが伝わってしまった。




