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ノクトと夜明けの配達便 -影を紡ぐ黒猫は、光を届ける-  作者: 今日も今日とて黒猫さん


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8/8

最終話:夜明けの境界線 ―また会う日まで―

街の危機を救った後、深い眠りに落ちたノクト。

彼が目を覚ましたのは、街の時計塔でもパン屋のベッドでもありませんでした。そこは、現実と影、生と死、そして過去と未来が溶け合う、白銀の光に満ちた「夜明けの境界線」でした。

どこまでも続く静かな水面のようなその場所で、ノクトは一人の人物の背中を見つけます。

ボロボロの青い制服。大きな、使い込まれた革の鞄。

それは、あの日見送ったはずの、若かりし日の姿をしたアルスでした。


-最高の報酬-

アルスはゆっくりと振り返りました。その表情には、もはや老いも疲れもなく、ただ晴れやかな微笑みがありました。

「……よく頑張ったね、ノクト」

その声が響いた瞬間、ノクトは子猫のようにアルスの足元へ駆け寄り、その脛に頭をこすりつけました。アルスの大きな手が、ノクトの耳の後ろを優しく掻きます。それは、何よりもノクトが欲していた、魔法よりも温かな報酬でした。

「おまえが影の中に紡いできたものは、ただの荷物じゃない。人と人の心、そして明日への希望だ。私を超えて、立派な配達員になった」


-鞄の真の主-

アルスは腰を落とし、ノクトが背負っている鞄にそっと手を触れました。

「この鞄はもう、私の形見ではない。おまえ自身の誇りだ。ノクト、おまえの影はもう、闇に怯えるためのものではなく、誰かを温めるための光の道筋レイルになったんだよ」

アルスの体が、次第に朝日の中に溶け込むように透き通り始めます。別れの時が来たことを悟り、ノクトは悲しげに喉を鳴らしました。しかし、アルスは強く、優しく首を振りました。

「さようならは言わないよ。おまえが誰かのために影を渡るたび、私はその足跡の中にいる。……さあ、行きなさい。夜明けが待っている」


-影を紡ぐ黒猫は、光を届ける-

眩い光に包まれ、ノクトが次に目を開けたとき。

そこは、いつもの時計塔の屋上でした。朝露に濡れた自分の毛並みが、朝日を浴びてキラキラと輝いています。

胸の青い徽章は、アルスの瞳と同じ色で静かに澄んでいました。

ノクトは立ち上がり、街を見下ろしました。

煙突からはパンを焼く煙が立ち上り、子供たちの笑い声が聞こえ始めます。ノクトは一回だけ、誇らしく尻尾を振ると、アルスの鞄を揺らしながら軽やかに屋根を蹴りました。

届けるべき手紙は、まだたくさんあります。

影を紡ぎ、光を運ぶ。

黒猫ノクトの配達便は、今日という新しい「夜明け」を乗せて、今日も誰かの元へと駆け抜けていくのです。



「ノクトと夜明けの配達便 -影を紡ぐ黒猫は、光を届ける-」 完

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