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チョーゴーキン――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る  作者: eggy


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59 列挙した

『他にもいろいろ影響はあるだろうけど、とにかく貴族学院設立なんてのは王家や政権にとって自殺行為に等しい。考慮の上設立を断念するってレベルの話じゃない、はなっからそういう人たちの頭の片隅にも浮かびようがない案件だよ。事実、前世地球の中世貴族社会に、そんな十代の貴族子女対象の学校が存在した例はないはずだしね。あったとしても寺小屋とか教会の日曜学校、他には藩校みたいなの程度だろうさ。あと、別の理由で大学みたいなのはあったかもしれない。とにかくそんな貴族学院みたいなのがあり得ないってのは、あちらの歴史が証明していることだよ』

『……うん』

『ああ、いや。少し熱く語ってしまったけどさ。ここで問題にしたいのは、そんな学校設立の案を三十年以上前に持ち出した者がいるって事実なんだ。今言ったように、ふつうの王族貴族の思考でそんなの出るはずがない。まずまちがいなく、何処ぞの神さんの影響下で発案した者がいるんだと思う』

『そうだろうね』

『でもそれが、その後廃案になった。ってことはこれもまずまちがいのないところで、さっき言ったこの神さんの全知全能でない力の限界を証明していると思う。この世界をラノベに近づけたい神さんとしては、何としても貴族学校を実現したかったと思うよ。でも人間たち全員の常識や本能まで変えることはできなかったかしなかったか、だね』

『うん』

『今の例だけで神さんの限界疑惑について情況証拠は十分だと思うけどね、せっかくだから別の例についても触れておこうか。話は冒険者ギルドに戻るけど、他にも開設当初にはいろいろ興味深いエピソードがあったみたい』

『他にも?』

『ギルドができて冒険者の数が増え、ダンジョンだけじゃなくて地上の魔物や魔獣の討伐が進むようになったらしい。ただその数が増えるどさくさに、妙なことも起こったそうなんだ。一つは、その当初の頃まるでブームみたいに、女の冒険者が増えた』

『へええ、そうなんだ』

『でもそれが、一年も経たないうちあっという間にいなくなった』

『そうなの、どうして?』

『いや、当たり前っちゃ当たり前だと思うよ。これも、ノベルと現実は違うんだから。ここの世界聞く限りじゃ、男女の体力差みたいなのは前世地球とそんなに変わらないみたいでしょ』

『そうだね』

『ほとんどのラノベの世界では、冒険者の半数近くが女だということになってるよね。それに、世界最強の剣士だとかS級冒険者だとか騎士団長や誰よりも強いギルドマスターだとかが、ほぼ決まり事のように女性だということになってるけどさ。つまり、だということは、あちらの世界じゃこっちの現実より男女の体力差が小さいとしか考えられないよね。そんでもって、そんな最強の女性がふつうにゴロゴロいる世界と、体力勝負の競技で男子世界記録を超える女子が事実上まずあり得ない世界とじゃ、常識が違っているはずだ。前者だとおそらく疑問も持たず、女も男に交じって冒険者みたいな野蛮とも言える職業に就くのに迷いはないんだろうね』

『だ……ね』

『だけど現実の世界じゃ、それもこんな治安の保証もない時代に、女が男と同様に荒仕事をするなんて、人生棄てる気にでもならなきゃそんな発想にならないよ。女数人のパーティーで遠出をすることだけをとってもさ。前世で両股りょうもも曝け出した格好の女岡っ引きをおエド市中に駆け回らせるみたいな時代考証のテレビ時代劇でさえ、爺さんの諸国漫遊みたいなドラマで、若い女数人だけとか若い男女混合だとかの旅人はほぼお目にかからなかったよ。そんなの、地方の治安状態や風紀上の常識なんかから、まず想定しようもない設定なんだろうさ』

『……ああ』

『それに加えてこっちには、人間の女をかっ攫うのが習性だと知られているゴブリンだとかオークだとかいう魔物が、うろちょろしてるんだよ。ふつうの女性としての常識を持った人が、そんな環境に飛び込む発想なんてするはずがない。そのギルド開始当初、女の希望者が増えたっていうの、同じことを大勢おおぜいが何処からそんなこと思いついたのか、これもまた誰も分からないって』

『テレビゃSNSとかでブームが広がったってわけでもないのにね』

『そうだよ。しかもさ、その時期女性冒険者の大半が、脚だとか腹だとか肩だとか露出した、世間一般常識からかけ離れた服装を競ってしていたっていうんだからね。どうもそのブームが衰退した最大の理由は、そんな服装とかの影響で冒険者集団の中で風紀が乱れきって手がつけられなくなったということらしい』

『わあ』


 ノベルの中のように女冒険者が剣や魔法の腕で男に負けることがない、というなら別なんだろうけどね。ここの世界にそれと同じことを求めるのは、無謀でしかなかっただろう。


『疑問はやっぱり、さっきまでのと同じだよね。ふつうじゃ考えられない行動にその女性たちが踏み出した、それはどんな理由があったのか。何処かで頭の中に天啓が下りてきた、というのが最も納得いく気がする』

『でもそれ、女性の冒険者志望っていうの、数人とかのレベルじゃないよね。ブームのようにって言うんなら、少なくとも数百人?』

『そうみたいだね。だからまた考察すると、我らが神さん、一度に数百人規模の人間の思考を操作できる。操作って言ってもずっと継続的じゃなくて、一度その気にさせるってくらいなのかな。それでもやっぱり、社会に定着している常識みたいなものまでは変えられない、っていうことになりそうだ』

『うん』

『それともう一つ。その同じ時期に、ブームとまで言えないかもしれないけど何件か、同じような事案があったっていうんだけどね。冒険者希望者の中に、遠方の領の貴族子女が入ってきたっていうの。〈自分は三男だから家を継ぐ可能性は低い。それなら自分の人生を自由に過ごしたい〉とか言って』

『何処かで聞いたような話だね。で、それも問題になるの?』

『三男四男だから家を出るっての、本当にそんな成り行きになるのかはこの世界の常識として知らないけどね。少なくとも前世のエド時代に、大名の下の子どもが家にいられなくなって浪人した、なんて話はあまり聞いた覚えがない。男でも女でも何処かに婿や嫁に出すとか家臣として地位を与えるとか、何かしら方法があったと思う。医療事情なんかの関係で後継候補がまちがいなく成人するって保証はないから、子どもは多めに作ってその後の対処も考えられていたんじゃないかと思うけどね。しかしまあ、今問題にしたいのはそこじゃない』

『何か不都合が生じる?』

『他領の領主一族が我が領の中で武器を振るって暴れ回っている、何事であるか、とギルドのある領に引っ捕らえられた』

『へ?』

『これも、考えてみれば分かりそうなものだよ。戦国時代に、オダさんの息子がタケダさんの領地に行って、武器を持って徒党を組んで狩りなんか始めて、見逃してもらえるかどうか。戦国じゃなくてエド時代になっても、まずあり得ないと思う。この国でのその件では、親の領主がギルドのある領主に賠償金を払って解決したみたいだけどね。本当に武器を持って領をおびやかそうとしたかなんてのが問題じゃない、領の間でそんな難癖をつけて賠償を要求することができる事態を作ったという話なんだ。これがエドの世だったら場合によって、幕府は何処かの藩の弱みを見つけてとり潰しにしようって目を光らせているんだ。こんなの、恰好の餌だよ』

『ああ』

『その三男殿がそんなあり得ない発想をするとか、大事に世話されているはずの子息が他の家人に見咎められずに領を出られるとか、何か人ならざるものの力が働いたのかもしれないよね』

『だねえ』

『こんな例、探したら他にもいろいろあるのかもしんないけどさ。今まで挙げたのは、エトヴィンやカルステンとの会話の中でこっちからこんなことはなかったかって訊いたものだから。とにかくも、神さんがこの世にラノベに似せたものを作ろうとしたけど思うようにならなかったんじゃないかって例は、たまたま失敗した一つや二つと看過できないくらいあるらしいってことだ』

『うん』

『だから話は戻るけど、この神さんが全知全能と思い込む必要はないと思う。それができないのかあえてやらないのかはともかく、かなりやりたかったんじゃないかと思えるけどやらないままになっているっていう事項は、いくつもあるみたいだ』

『そういうことだね』



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