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チョーゴーキン――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る  作者: eggy


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57/65

57 考察した

『そういうラノベ的知識を持った神レベルの存在がこの世界に関与しているということなら、その存在がその〈テンテンテン〉なるノベルに似せた事態に向かわせようとしている、と考えるのが自然だろうね。そんな神的存在が一人とも限らないけどさ』

『だねえ』


 それが本当の神なのだとしたら、一人二人ではなく一柱ひとはしら二柱としなければ不敬に当たるのかもしんないけどさ。今の想像が当たっているとしたら、どうにもそんなのあがめる気になれないんだよなあ。

 そもそもあたし、その神が御座おわす世界の生き物じゃないしねえ。

 そのまま少し間を置くと、王子は天井を見上げて思いを巡らす様子になっている。


『でも、そうだとしたらさあ』考えながらの調子で、問い返してきた。『この事態を造っているのが神的存在だとしたら、こちらとしたら何をしても無駄ってことになるんじゃない? 相手が全能の神じゃ』

『まあ、そうだねえ。全能ってことならね』

『じゃあどうするの』

『まずそこを考察してみようよ。本当に相手は全能なのかどうかをさ』

『どうやって?』

『今までこの世界に起きていたことをできるだけピックアップして、というしかないよね。神レベルと思われる相手のしてきたことに、限界とか傾向とかが見つからないか』

『ふうん』

『一つは、あんたも気がついているんじゃないかな。それこそ限界なのか、その神さんが自分で決めたルールなのかは分からないけどさ。これまでもいろいろ理解を超えてこちらを悩ませている、掏摸とか王宮職員とかの不可解な行動。我らが神さんには、そうした人間に自分の意思とは別の行動をとらせる、洗脳とか操縦とかそんなことができると考えていいんじゃないか。そしてそんな操縦みたいなのを行う相手に、一定の傾向がある』

『ああ』少年は小さく頷いている。『そうだね。こう言っては何だけど、そういう行動をとらせている相手はノベルなんかだとモブと呼ばれる名もない人物、主要キャラじゃない人間って感じかな。本人にしたらモブも何もないだろうけど、ノベルストーリーを追う気になっている存在からしたらそうした区別というかルールみたいなのがあるかもしれない、と』

『だよね。乱暴に言っちゃうと、その神さんの目的がこの国を破滅させることだけなら、そんなモブを操るみたいなこそこそした操作をする必要はない。国王を操って狂乱した行動をとらせれば即目的達成だ。そこまで行かなくても、薬草採取を失敗させたいならエトヴィンやカルステンたちを操るのがいちばん簡単だよね。ここまでの経緯を見る限り、我らが神さんにそうしたことをする意思はない、たぶん一定のルールを設けて最小限の操作介入でノベルストーリーに近づけた推移を実現しようとしているんじゃないかと思われる。神さんが何と言うかゲーム感覚でこんなことをしていると考えたら、これは納得できるよね。何かしらのルール縛りがなくて好き勝手できる、開始直後にいきなりクリアできてしまうゲームなぞ、プレーしても面白くも何ともない』

『だねえ』

『だとするとさ。このストーリーのクライマックスは第三王子が魔法爆発を起こして、国王夫妻もそれの巻き添えになるってところだろうね。それを実現させるためには、隣国王女との会見の場で王子が国王の側にいなくちゃならない。逆に言うと、王子がその場に行かなければこれは起きない。神さんがこれを無理矢理実現しようと思うなら、王子本人を操って嫌でもその場へ行かせるのが最も簡単だろうね。でもここまでの考察が当たっているなら、たぶん神さんはその手段を執らない。別の人物なりを操って、王子が出席しなくちゃならない状況を作るんじゃないか』

『ああ、そうなるね』

『一応こちらの対策としたら、まず今までしているように爆発が起きないように王子を治療すること、それと周囲からの働きかけで王子の出席が避けられなくされることを阻止する、ってところかな』

『うん』

『だけどこれも、確実とは言えないかな。何にせよ最大のクライマックスなんだから、相手としては絶対これだけは実現したい。としたら最後の最後、どうしても実現困難なら今までの禁を破って王子や国王を直接操る手段を執るかもしれない』

『……ああ』

『それをされたら、こちらとしちゃ手の打ちようがないことになるよね。こっちの対策としては、神さんにこれを実現困難と思わせない、王子の治療も周囲からの働きかけ阻止も、気づかれないように進めるっきゃないわな』

『でもさ、そんなことが可能? 相手は全知全能の神と考えられるんでしょ』

『それでも、その全知全能に限界とか隙があると考えるしかないよ。そう思って対策を立てる以外、こちらにできることはない』

『それはそうだけどさあ』


 見ると、王子は天に向かって口を尖らせた、むくれたみたいな顔になっている。

 ほらほら表情出すのはやめなさい、と声をかける。


『この神さんがしてきたと思われることを辿ってみると、ある程度できることとできないこと、みたいなのが見えてくると思うんだよね。かなりのところは想像になるけど、我らが神さんがこの世界をラノベの設定に近づけようとし始めたのは、およそ今より五十年前くらいからだと思われる。その頃からこの大陸でダンジョンが見つかり始めて、徐々に冒険者という職業の者が増え始め、それらを管理する冒険者ギルドというのができたのが二十年前だということだからね』

『うん、そうらしい』

『それ以前この国では東側の中ツ森から出てくる魔獣の危険が大きくて、そちらでは農業なんかと兼業の魔狩人まかりびとと呼ばれる者たちが活動していた。それがこの五十年前くらいから国の西側でダンジョン絡みで地上に出てくる魔物が増えてきて、こちらではそれに対処する職業が冒険者と呼ばれるようになったわけだ』

『ここでも、ラノベ知識の影響が見られるわけだね。ラノベと言えばダンジョンと冒険者。作品によって魔物と魔獣はどちらもあるけど、どちらかというと魔物の方が多い』

『うん。やっていることはそれほど変わらない魔狩人という存在と名称があったにもかかわらず、ダンジョン出現以降は冒険者という呼び方が広まってきているわけだ。魔獣と魔物もはっきりした区別はないみたいだけど、ダンジョン由来のものから魔物と呼ばれるのがならいになっているって』

『うん、そう聞いている』

『まあその辺はさっきも出た、この神さんがその頃からラノベ設定に拘り出したんじゃないかっていう仮定が成立する程度なんだけど。興味深いのは、その四十年以上前頃から起きたいろいろなエピソードなんだ。エトヴィンとカルステンに聞いた限りなんだけどね』

『エピソードって?』

『さっきも言ったように、二十年前に冒険者ギルドってのができた。最初はティルピッツ侯爵領とキュンツェル伯爵領の領都に設立されて、小さな支部みたいなのがその周辺に広がり始めている』

『うん』

『ギルドの長はギルドマスターと呼ばれ、一階フロアには依頼の受け付けをするカウンターが並ぶ。その受け付けの多くは当初、制服を着た女性が担当していた。依頼のことはクエストと呼ぶことになっている』

『見事に、ゲームやラノベの標準そのままだよね』

『それを意識してそこまで細かく、かの神さんが組織の上の方になる人を洗脳なり操作なりしたんじゃないかと想像されるよね。そこはともかく面白いのはね、あんた気がついている?』

『何を』

『今あたしたちは、こちらの現地語で会話しているよね。ギルド、マスター、クエスト、もちろん全部英語だけどさ。これらみんな、現地語でこの発音なんだ』

『あ』

『多くのラノベでは特に説明されてないけどね、おそらく自然に考えて、こういった言葉は現地の異世界語でそういった意味の単語として発音されているのが、転生者である主人公の頭の中に自動翻訳されて届いていると思われるよね。この場合〈長〉に当たる現地語が翻訳されて〈マスター〉になっているとかさ。何で元日本人である転生者に対して自動翻訳が英語になるのかは永遠の謎だけどね。たぶんそちらの神様仕様の自動翻訳が、そういう英語かぶれの傾向を持っているってことだろうけど。何しろかなりの数のノベルで、人名とか固有名詞はどっちかというとフランスやドイツ語寄りなのに、魔物の名前や魔法の名称その他諸々は強引なくらい英語の名付けだというのが決まり事みたいだからさ』

『はあ』

『それにしたって自由業の冒険者個人を相手にする機関が、正史では比較的商会や工房みたいな団体の集まりってイメージのあるギルドという名称――まああたしだって学校で習った記憶だけで、中世ヨーロッパの実態は知らないけどね――に翻訳されるっていうのも少し疑問がなくもない。それにノベルなんかでは〈クエスト(依頼)〉などと記述されていることもけっこうあるけど、本来これ確か〈探求、探索〉って意味だよね。それが掲示板に貼られている仕事内容に対して自動的にクエストって翻訳されているわけだ』

『え? え?』



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