24.一条家のこの頃 side望月光
「平和だねぇ~」
「それが1番でしょ」
とある日の昼下がり、俺たち3人組はダイニングの端っこでおやつを食べる。本日のおやつは、最近柚子ちゃんが修得したセサミクッキーだ。形は不恰好だけど味はなかなかだと俺は思う。
先日、分家である一乃瀬家で襲撃事件があり一条家にも簡単な聴取があった。それも落ち着き最近はだいぶ平和が漂っているのだ。
「お姉ちゃん、そろそろ来るかなぁ?」
結衣さんは襲撃事件の影響もあり近頃はこっちのお屋敷に来ていない。1週間から2週間に1度のペースで来訪していた姉を柚子ちゃんは恋しがっている。
しょぼん……という単語がよく似合う寂しそうな顔に思わず胸が締め付けられる。
「いろいろが落ち着いたら、すぐ来てくれるはずや」
「まぁ結衣ちゃんだって、柚子に会いたいんじゃない?」
俺と風見の返答に、彼女の顔にいつもの太陽みたいな笑顔が戻った。うんうんと1人で頷いたと思えば、ガバッと目の前のクッキーを掴み取り頬張る。良家のメイドがそれでいいのか……と思うが、彼女らしくてとても素敵だなと俺は思う。
このまま、ここでずっとーー。
彼女を見ているとそう思わずにいられない、この気持ちを秘めておかなければいけない事が少し苦しくなってきたこの頃だった。
結衣さんの噂をしていた日の夕方ーーお屋敷が少し騒がしくなった。
「望月!ごめん、お茶の準備をしてダイニングに持ってきて貰えるかな?お客様が2人とご当主様の分。お茶菓子はーー必要ないかな」
「承知しました」
返事をする俺の顔を見て立花さんが笑った。
「結衣ちゃんと一乃瀬家からのお付きが1人来るって。柚子ちゃんにも伝えてあげてね」
「はいっ!」
キッチンに向かう足取りは軽い。柚子ちゃんはこの時間夕食の準備をしているはずだ。結衣さんが来るーーそんな知らせを聞いたらきっと、いつも以上の笑顔を見せてくれるだろう。後ろから立花さんの走らないよーという声が聞こえるけれど、今日は聞こえないふりをして俺は彼女の元へと駆け出した。




