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22.一乃瀬の夜① side白川結衣




 ーー嫌な予感がするわ。


 目を開けると部屋の中は真っ暗、カーテンの隙間から漏れる月明かりと少し冷たい空気がまだ真夜中だと告げる。睡眠が浅く、夜中に頻繁に目覚める事は良くあることだけれど……。背筋がゾワゾワっとするとこの嫌な感じーー直感で何か起きると告げられている気がする。




 ふーっと息を吐き出して、ベッドから抜け出す。寝巻きから普段着に着替えて、瞳にはその色を変えるレンズを装着する、そしてーー枕の下に忍ばせた拳銃をそっと手に取る。




『撃つ時はーー貴女自身も撃たれると思ってください』




 いつかその身を守るかもしれないからと、私に拳銃の扱いを教えた人から言われた事を思い出す。この身がどうなろうが関係ないわーー柚子と柚子にとって良い環境が守れればそれで。


 そっと耳を澄ませても何も聞こえず、いつもと変わらぬ空気感が広がっている。それで胸騒ぎがするのは何故かしら。思い切ってカーテンの隙間から裏庭を見てみると、怪しい人影も無く静まり返っていた。煌々と辺りを照らす月だけが、何も語らず全てを見ているようだ。




「月の綺麗な夜ね……」




 いつも何かある時、月は静かに私を見ている気がするーーあの日もーーあの時も。






 ーーバンッ!


 扉が無理矢理こじ開けられたような音と、おそらく銃声であろう乾いた音がお屋敷に響き渡った。


 侵入者ねーーいつもの場所に拳銃を忍ばせゆっくり音を立てないように、自室の出入り口に近づく。ドア越しに廊下の様子を伺うーー特に異常はなさそうね。侵入者は1階にいるってことかしら?一乃瀬家では、非常時は当主の部屋に集まると決まっている。坊ちゃんの部屋は私の1部屋隣、ゆっくり深呼吸をして部屋を出ようとしたその時だった。




 コンコンコンコンコン!


 けたたましくノックの音が響き、返事もしないうちにそっとドアが開かれる。




「結衣ちゃーん!大丈夫??」




「ええ」




 本人としては控えめにしたつもりであろう、ノックの主は耕ちゃんだった。小さめの話し声は、いつも元気な彼にあまり似合わず少し面白ささえ感じる。彼の部屋は1階の階段横ーー坊ちゃんの部屋に行く前に心配して私の所に来てくれたのだろう。




「スッゲェ音だったね!オイラびっくりして起きちゃったよ!」




「そうね。いい迷惑だわ」






 2人で静かに廊下を進み、坊ちゃんの部屋をに入る。既に快星くん、泉くん、理玖くんが揃っていた。




「ウィルは?」




「お前一緒じゃなかったのか?」




 ウィルくんと耕ちゃんは、仲良く2人でいる事が多いから不思議に思ったであろう快星くんが問いかけた。




「ウィルの部屋の扉開いてたから、てっきり先に来てると思ったんだ!」




 もしかしたら、1階の様子を見に行ったのかもしれない。ウィルくんは、このお屋敷の中でも最も好奇心が旺盛だし、あれだけ派手な爆発音を聞けば坊ちゃんの部屋に行く前に自分で見に行ってしまうタイプかもしれないわ。


 チラッと坊ちゃんを見ると、眠そうな顔でその場の全員に告げた。




「とりあえず、ウィルの安全確認をして寝よう」




 ーー本当に睡眠を大切になさるお坊ちゃんだわ。



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